2011.06.05:日曜日
震災、日本の悲劇、そして画廊の仕事や義援金等について

3月にあの大地震と津波に襲われてから、早3ヶ月が経とうとしています。被災地の方々のご苦労は想像にあまりあります。大きな被害を受けた方々、そのご家族、また周囲の方々には心よりお見舞いを申し上げます。

今、日本の困難な季節を、この国の全ての人々が皆、それぞれの立場で乗り越えようと、生きておられる事と存じております。

アーティストを含む画廊周辺の人々から、311以来様々な思いの領域で、意識が変わってしまった、というお話をよく聞きます。地震から津波、そして原発の問題、と不穏な空気が私たちをとりまき、意識から離れません。

思いもかけなかった災害の大きさや、今迄盲目的に従って生活して来た事がらへの絶望的な不信感に、私自身もかなり落ち込んでしまいました。また、情報のシステム、責任ある立場の人々への信頼等が音をたてて崩れ去ってしまい、無力感に襲われてしまいました。まるでオーウェルの「1984」の世界をわたしたちは生きているのではないか、という様な現実を思い知らされました。もう相当以前に読んだ本なので、ストーリーを全部覚えている訳ではありませんが、精神の荒廃、退廃の極致と思わされる読後感は、強烈な印象をもたらし、忘れがたいものになりました。情報を操作され、日々を監視され、市民は脳みそを完璧にコントロールされ、行動の自由など奪われた灰色の密告社会を、当時は、気の毒な社会、と、遠い世界に感じていましたが、今限りなく私たちの社会にリンクしている様に思えてなりません。

災害を被り、放射能に脅かされ、それでも普段の生活を送って行く中で、少なくとも311以前の時よりも、真実というものに直面せざるを得なくなりました。まやかしや旧態の改善すべきシステムの事も、真っすぐに受け止め、そして未知の人々には既に知っている人々が筋を指し示して差し上げる時なのだと思います。私たちは微力かも知れませんが、情報を持たない人々に、諦めずに真実を伝えて行く、という小さな積み重ねが今とても大切な事に思われます。

そして原発については、私たちの命に関わる問題であり、皆が正確に知識を持ちはじめ、人類が扱うことのできる様な代物ではない、という認識は共通分母としてあると思います。日常の生活も利益が基盤の人間関係も「命」あってこそ、という自明の理が通りません。全ての事がらのプライオリティーは「命」ということの当たり前の認識を理解しない人が存在する事をとても不思議に思います。ギリシア神話の中でプロメテウスが人間に火を与えた罪で、ゼウスに罰せられる話を思い出します。

このような社会の中で、人々のため、たゆまず、ご自分の成すべきお仕事を毎日重ねておられる方も沢山いらっしゃいます。そのような方々に励まされながら、元気を取り戻していく事ができるのだと思いました。

行動の依拠としていた場所をゆるやかにほどいて、もう一度静かに組み立て直す、という営みを、自分自身のどこかから課せられている様にも感じています。

皆様に温かな気持ちになって頂きたい思いや、作品のパワーをお伝えしていく、という画廊の仕事が、これからも少しずつ形を変えながら成長して行く事ができます様、願ってやみません。

 

そして、画廊からの義援金や支援につきましては、機会がある都度ささやかながらずっと継続させて頂こう、と存じております。

地震の直後の「早春の透明」という展覧会でのキッタヨーコさんの呼びかけで、最初の義援金を送らせて頂きました。

また、4月の田代卓事務所の展覧会「Chairs」では、田代さんが売上の利益208,947円を日本赤十字社に寄付致しましたが、少しの割合ですが画廊からの利益も含まれます。これから開催される企画展でも、可能な限り義援金を送らせていただく予定でおります。最初の支援物資につきましては、熊本県のイラストレーターの大野郁子さんから東京の画廊に寄せられた物資がきっかけとなりました。個人で支援物資を送る事が難しく、ルートが見つかりませんでしたが、ツイッターの中で俳優の永島敏行さんがいわきに届ける物資を受け付ける、という一文を見つけました。大野さんは東京の水不足等を心配してくださり、水の他にも様々な物をかなり大量にお送り下さいました。幸い、東京ではまだ物資は大丈夫な状態でしたので、九州から頂いたものに、東京からのカップラーメンやトイレットペーパー等を加え、いわき市に送らせて頂きました。丁度その時に個展を開催していらした札幌の民野宏之さんにもご協力を頂きました。

また、雑誌MOCで、宮城県亘理町へ物資を直接届けて頂ける、という事を伺い、届けさせて頂きました。震災から少し時が経っておりましたので、栄養価の高い食品、美味しい飲み物や、ワインも少し加えました。

という感じで、ささやかに支援させていただいております。あえてお伝えする事もないのでは、と思っておりましたが、画廊は開かれたスペースであり、様々な方々からのご協力がある事を合わせてお伝えするべきなのかな、と考え、ご報告させていただきました。

 

先日、このブログに復興住宅について書かせていただきました。唐突に思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。この画廊では、時々オークヴィレッジの稲本正さんや、写真家の本橋成一さんとお仕事をご一緒させていただいております。スペースユイはフィールドフリーな感覚で仕事をして行きたいので、突然社会派になることもあるのです。w

私は、若い頃建築の仕事をかじっていたことがあり、リユーズ可能な美しい復興住宅など見ると血が騒ぎ興奮してしまいます。

6月23日からは、フェミニンな女性たちの可愛らしい展覧会を開催致します。「Frower Drops exhibition」というタイトルは、花の様な香りと美しい作品で、疲弊した関東圏の人々も慰撫したい、という気持ちを込めたました。美味しいお茶のサービスも考慮中です。それに続き、映画「アレクセイの泉」等、映画監督でもある写真家の本橋成一氏とスズキコージ氏による、パワフルなコラボレーション展を開催します。実は本橋成一さんはスズキコージさんの大家さんでもあるという、公私共に親しい間柄です。折に触れお二人の楽しい生活ぶりを伺っており、作品の精神、モチーフにも通底するものを感じて、昨年この企画を立てました。半ば諦めておりましたので大賛成で受け入れて頂いた時にはびっくりしてしまいました。今、お二人の展覧会へ向けての情熱はひじょうに真剣で強く、大きな力を感じられるのはもち論ですが、優しく澄んだ画面から醸し出されるコラボレーションの意外とも言える局面にも出会えます。皆様に二つの展覧会のエネルギーと対比をお楽しみ頂けましたら嬉しいです。

 

 

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