杉田比呂美さんの展覧会を久しぶりに開催させて頂きました。
わたしは杉田さんが夕焼けの景色を描いた作品や、空や空気が不思議な色をした作品がとても印象的で大好きです。景色の色の不思議感覚と共に、何かSF的な時空のずれ感を楽しませて頂いております。
杉田さんの作品は、そこに描かれる人々も風景も、本当にさり気ない日常のひとこまなのですが、どこか微妙に心が揺すぶられます。
人々の普段の営みが、それぞれの作品画面から生き々と伝わって参りますが、希望や楽しさといった感覚といっしょに、微少な諦観や哀しみといった感情が多分それと意識されない程に絶妙な隠し味的な塩梅で配分されているのではないかと思うのです。
抑制の利いた詩情が作品を見る方々の共感を呼ぶのでは、と感じます。
杉田さんは絵本作家でもあり、文章もたいへん素晴らしくて、今回の作品に添えられた物語にも見入ってしまいました。
この感覚、誰かに似ている?と考えたら、水丸さんでした!
そんな杉田さんから、素敵な文章が寄せられましたので、ご紹介させて頂きます。
↓
久しぶりに個展をさせていただきました。
今回は7年間続いた『小説すばる』の表紙の表紙の中から
選んだ53点の絵です。
どれも日々の暮らしの中で起こる、嬉しいこと、
はっとすること、など、『日常のキラリ』とした
瞬間を切り取った絵です。
連載時に書いた表紙の小さな物語も、
同時に展示しました。
見られる方の年齢を問わず、「懐かしい!」
という言葉をいただいて、
とても嬉しく思いました。
これからも、単調と思われる日々の暮らしの中、
はっとする瞬間を大切にしていきたいと思います。 (杉田比呂美)
星野哲朗さんの作品、今年も大人気でした。ヨーロッパ、特にフランスのプロヴァンス地方を折に触れ訪れていた星野さんは、ワインや作品のモチーフとなるフード類、また建築物や街並を好まれて描かれます。
重厚なペインティング作品ですが、どこかでシェープされた感覚、グラフィカルなテイストに還元された画面は親しみ深く、好感を持って見る方々に受け止めて頂いていると感じております。
星野さんにしか描けない作品の個性は、長年のペインティングのタッチから生まれたオリジナルな画風といえるでしょう。
フランスパンやオリーブの実、カクテルグラス等、人々が共感を持ちながらも、美しく遠くに在るといった風な感慨は、たいへん素晴らしい結実なのではないかと思います。
深谷良一さんの木の箱の作りの巧みさと美しさは、現在を生きるイラストレーターの技とは何方も想像ができないのではないでしょうか?
平面作品もとても素晴らしく、日本画と区別のつきがたい作風には定評があり、その技術は追随を許さぬものですが、最近では、3度目となる木の箱の展示が大好評です。
小さな木肌に描かれた日本画風のモチーフは、深谷さん独自のスタイルを持ち、思わず手にとってしまいます。まるで現代の巧みの技の様なしかもモダンな作品は、これからも愛されて行くことでしょう。
堂前守人さんの今年の個展、とても人気がありました。
堂前さんは、函館で、はこだて工芸舎という函館を代表するような歴史的な建物を所有されていて、ご自身を含む多くの工芸作家の作品展示や音楽や演劇のイベント等が開催される多目的スペースを運営されております。函館の良き時代を彷佛とさせる面影を残す建築物です。
作家として活動されながら、はこだて工芸舎のオーナーとしての運営をこなされるのは、本当にたいへんなことと想像致します。今回の展示に来られた、毎年はこだて工芸舎に遊びに行くという東京在住の堂前さんファンの女性から、このスペースがどんなに魅力的な場所かというお話を伺いました。わたしもいつか遊びに伺いたいものです!
また、転勤の多いお父様の仕事上、日本中を転々と引っ越され、九州から北海道までの幾つかの地方での生活を経験され、大人になってからはオーストラリア、ニュージーランドに長く滞在なさったりと、お話を伺っていると、堂前さんの作品の背景が透けて来るようです。
堂前さんの作陶のスタイルは、陶芸の構造体を作り、それに絵を描かれるというものです。器のかたちはシンプルで優しく、野の花や樹々も風にそよぐように自然体にさり気なく描かれています。使う度に愛着の湧く堂前さんの器たちは、展覧会の回を重ねる毎に人気が増して参ります。着彩の美しい存在感ある器と共に、優しい眼差しの堂前さんご本人の引力があるのだと思います。
堂前さんから、文章を寄せられましたのでご紹介させて頂きます。
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東京に1週間滞在したあと、弘前に行きました。新幹線に乗って青森まで3時間半。昔のようには遠くに感じられない移動時間ですね。今回は仕事なので続けて1週間滞在しました。東京ではガラス張りの新しい大きなビルを見上げながら歩きましたが、弘前では古い2階建の店舗や木造の日本家屋の世界です。町の中心ににある弘前城の入り口には大きな門があり、その木も扉の鉄の金具も朽ちずに400年も立ち続けています。目の前に広がる雄大な岩木山を眺めながら、60歳になろうとする自分が残りの時間をどう過ごすかと、その門に触れて考えました。
(堂前守人)
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