自然光がいっぱい入るYUIでの展示では、いつも作品が重くならない様に注意しています。また老人界に本格デビューした自分の体力も考えて、今回は軽快な感じの版画展を計画したのですが、性格上集中すると、ついつい作り込んでしまい、重ったるい作品になってしまいます。そんなバランスをあっちこっちとりながら生まれたのが、今回の作品たちです。
また会場に不在がちで、お会い出来なかった方々が大勢いらっしゃることが悔やまれます。これも「老人じゃあ仕方が無いな」とお許し下さい。深く感謝申し上げます。(北見隆氏より)
科学の研究室の様だったり、立派な書籍に囲まれた重厚な学者の書斎風?はたまた錬金術師の一室か・・・。北見隆さんのアトリエは、きっとそんな不思議な空気感に溢れているのでは、と想像致します。
そして部屋には、銅版画の腐食液や、古文書の懐かしい黴臭い匂いも・・・・。
と、書いて参りましたが、今回の北見隆さんの作品は銅版画の様に思える作品が多いのですが、実は塩化ビニール等の樹脂板を使ったドライポイント版画で、銅版画に比べ制作に費やす労力を節約できるそうなのです。
そのように説明されますと、その独特の風合いからは従来のエッチング等と異なり独特な新たな表情を感じ取る事ができ、そういう事だったのか!と、しばし納得いたしました。
「銅版画の腐食液の匂い」は、ただの想像に過ぎませんでした!
北見さんの作品には、絵の具以外に画面を構成する古紙や金属や石ころや植物、時には流木等、数々のマテリアルが必要です。整理に必要な抽出しも不思議なアトリエにきっと素敵に存在する事でしょう。
北見さんがずっと培われて来た作品様式の画面に、それらの素材たちがそっと参加して個々の作品を完成させるかの様です。
北見隆さんの作品は完成度高く、全てに渡りサービス精神に満ちていて感動的でした。人々を楽しませたりする事って本当に大事な事に思います。
また、楽しさや面白さといった世界観と共にシリアスな美しさをも包含した視野へと繋がる作品も多く、その尊さに頭の下がる思いが致しました。
制約のない表現の中でも、そういった領域まで共有の感覚をもたらしてくれる作品は、そうはないのでは、と思うのです。
ずっと第一線を走り続けておられる北見隆さんの個展を振り返って見て、あらためて感謝を申し上げたいと思います。(スペースユイ 木村)
http://old.spaceyui.com/schedule/kitami_takashi2022.html
昨年の三月に初個展を開催した藤本巧さんが、二度目の個展「Roots」を開催致しましたが、若いエネルギーの成長の大きさに驚いております。
強いインパクトが特徴という作品ではないと感じますが、展示を見られる人々の心をじわじわと捉える力が伝わって参ります。
藤本さんの今回の絵のモチーフとしては、和のアンティーク風な美しく絵付けされた器や壺などの陶器が多く描かれました。
古伊万里など日本の伝統美溢れる工芸文化を、藤本さんカラーにフレッシュに、オリジナルな感覚のイラストレーションとして仕上げました。
それらの作品画面の微妙な色使いのハーモニーは、柔らかな印象でありながらメリハリも感じられる、積み重ねられた研究の成果がうかがわれるものでした。
作品を創造するという行為は、自分自身が感じる空気感や社会、ひいては宇宙、そして多くの人々へとアンテナを張り巡らせ、キャッチするものを咀嚼し、解釈し、そして表現への行程へと繋がっていくのではと想像致します。
藤本さんの場合、日常を生きていて得る創造的な感覚の全てをイラストレーション制作へと投影させているのではないかとさえ感じられます。何かを説明したり考えを主張したりする以前に、ヴィジュアライズさせる事へと集約されている様な・・・。
扱いがたいへん難しい画材、顔彩の筆使いも自由にのびのびと描かれていて、作品を見られた多くの方々が楽しんでくださいました。
そして今回の作品創作の技術的側面の向上も目覚ましく、不思議な方法で、自然に下地の色が浮かび上がって見えるという技を修得された様に感じられました。
http://old.spaceyui.com/schedule/takumifujimoto_2022.html
待望の、南伸坊さんのイラストレーション展が開催されました。
思わず心が緩む作品ばかりが展示され、さらっとした描きぶりの奥から感じられる見事なエンターテイメント性に、私たちは心から楽しませて頂きました。
ご本人かと見紛う様な本人術(顔芸?)、軽妙なエッセイや編集etc.・・・と、イラストレーターの枠を飛び越えてご活躍の南伸坊さんの大きな才能は、私たちをほんわかと、そして時にはスパイシーに笑顔へと導いて下さいます。
本当に久しぶりな南さんの個展は、終了してしまうのが惜しまれるものでした。
今回は、南さんからお寄せ頂いた原稿をそのまま掲載させて頂きましたので、ぜひご覧下さい。
http://old.spaceyui.com/schedule/minamisinbo_2022.html
2022年夏も、宮本崇輝さんのガラス作品の季節がやって来る!というくらいに宮本さんの作品が皆様に浸透してまいりました。
今年の宮本さんは、ガラスの表面の彫刻と申したら良いのでしょうか、個性的な創作の秘密を発明、オリジナリティあふれる素敵なサーフェスの作品を見せて下さいました。
宮本さん、ご自身のブログをアップされましたので下記に転載させて頂きましたが、実際の宮本さんのサイトには英文訳もご用意され、デザインされておりますので、下のリンクからダイレクトにお読みいただいた方が楽しいかもしれません。
https://takakimiyamoto.blogspot.com/
↓
こんにちは。一年に一回のペースでのブログの更新となっていますね。
今回は、今年のスペースユイでの展示を終えて、感じたことを日頃の事と絡めて書いていきます。
私事ながら、この一年の間に大きく人生が動きました。大切な新しい命が宮本家に加わり、9ヶ月がすぎました。色々と自分の視点が変わってくことに驚き、面白さを感じつつ過ごしています。
数年前にガラスの武者修行でデンマークやオーストラリアなど様々な国を渡り歩いた記事もありますので、もし興味がありましたら過去のブログも見てみてください。
更新頻度は大分下がってしまいましたが、ブログというものは手軽なSNSと違って、色々と文章にするために頭の中を冷静に、時に熱く回転させ整理しないと書けないですね。それがとてもmeditationのようで、なんだか心地よく、そしてこの時間も大切なんだなと思います。
数年前にも書いたかもしれませんが、富山ガラス造形研究所で助手をしていた頃、吹きガラスの筋骨隆々なブライアン先生の授業を受け持っていました。彼は見た目とは裏腹に、授業の最初に毎日必ず5分間生徒に文章を書かせます。人に見せるものではなく、ただただ今の自分のことをノートに書くのです。みんな思い思いの場所で姿勢で書いていました。そうすると、ココロがスーッとするのです。整うという感じ。
今文章を書いていてブライアンのことをふと思い出しました。
さてさて、先日東京の南青山にあるスペースユイにて個展を行いました。スペースユイでは、有難い事に9年前に初個展をしてから、ほぼ毎年声をかけて頂いており、本当に感謝致します。今年は、久しぶりにコロナもなく皆様が来場しやすい年になるかと思った矢先、コロナの第7波がきてしまいました。さらに酷い猛暑も重なり厳しい状況でした。その様な中でも、個展の開催をさせて頂いたスペースユイ、個展の会場にお越しいただいた皆様には感謝しかありません。
「感謝」と申しましたが、このワードは非常に大切であると最近常々思うのです。
日常どうしても忘れてしまいがちなこの言葉。
今回の個展のタイトルは「Communication」でした。
人と人。
人とモノ。
モノと場所。
対話。
素材と自分とのコミュニケーション。
ガラスという素材に触れ制作を続けていると、強引に自分に引き寄せる事では作品は出来上がらないと気がつく。しかし、ガラスの現象に任せすぎても作品は出来上がらない。そこで対話が必要となる。自分に引き寄せるための技術力、素材に任せる偶然性。このバランス感が重要となる。
住む土地。
働く場所。
家族。
自分。
それを取り巻く光や空気。
歩むにつれて変化していく。
そして、それらを素直に受け入れたい。
それらと気持ちよく繋がりたい。
あれ?なんだか繋がっているような気がする。
コミュニケーション。
これからもずっと大切なキーワード。
「コミュニケーション」の内側にある大切な言葉。
感謝。
ついつい慣れてきたり、自信が変につき過ぎたり、その一方で急に失敗したり、物事が上手く行かなかったり、不満を言ったり、焦ったり。
調子が良い時も調子が悪い時も忘れてしまいがちな大切な言葉。
ガラスを触って、向き合って、コミュニケーションを見つけ、さらに感謝に行き着く。
なんだか不思議で繋がっていないようで、繋がっている。
そしてまた、ガラスを触る。
今回の展示をきっかけに2、3年ほど前から考えてきたガラスとの対話の仕方がはっきりとしてきました。
「必然性と偶然性のバランスを探る」
そのために技術力が大切となり、観察力が大切となる。
長くなってしまうので、この話はこの辺で今回は終わり。
ついつい仕事として毎日のようにガラスを吹いていると、様々な雑念や失敗から感謝を忘れてしまいがちです。当たり前は当たり前ではなく、今ここでガラスを吹くことが出来ている事に感謝したいです。さもないと、「モノづくりは楽しい!」と純粋に思うことを忘れてしまいます。
感謝を忘れず、人やモノやコトや環境や自然と対話をし、作る楽しみを感じながら生み出された作品は、自分そのもので、きっと豊かな表情を見せてくれるのだと思います。
次は10月に金沢で北陸では初めての個展があります。
無駄に焦る事なく、日々一歩一歩成長できたらと思います。
ここまで読んでいただき有難うございました。
さてやりまっせ!
http://old.spaceyui.com/schedule/miyamoto_2022.html
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