著しく、しかもじわじわと、意識しなければ気がつかないうちに、蝕まれて行く私たちの中の美意識については、きっと皆さんが感じている事と思います。
目にしっかりと見える、計測できるようなものと異なり、何か確かなものを感じ取る感受性や感性といったものは、わかる人にしかわからない、といったまどろっこしさがあり、ある種のやり切れなさがつきまといます。ひじょうに言葉にするのがむずかしい問題なのですが、だからこそ今、私の様な仕事の立場の人間が語らなければならない、と感じました。
例えば、絵画やイラストレーション作品を見て、力を発しているものと、残念ながらそれほどでもないものとがあります。残酷なことですが、それは事実として存在してしまうのです。私自身、絵画畑からの出身ではなく、絵の持つエネルギーについては、本当に傑出した誰にも理解できる名作でない限り感じる事が出来ませんでしたが、年の功というのでしょうか?こんな仕事をしているのに明かしてしまうのが恥ずかしいくらいの見識眼だった自分が、何かを感じることができるようになりました。近くで見てもわからない時には、少し離れてみると作品の放っているエネルギーのようなものを感じるのです。作者が描く時に注いだ感情の分量や思いの感覚が理解できるようになりました。
何を言いたいのかといいますと、感覚的な物事は、単に感覚的と言って終る様なものではない、という事です。人が自分を清潔に保ち好みの衣服を選んで好きな音楽や色彩に囲まれて生活をする、という当たり前の事さえも、皆さんが思っているよりも大きな事がらなのではないか、という問いかけなのです。
この仕事をしながら、3.11以降の自身の感覚の変化を振り返ってみて、自分の核の様な部分は変わっていませんが、生活の情況は一変してしまった事を気付かずにはいられません。
素敵な作品を紹介し、作家と観客の皆様とを繋げて行くという仕事の大筋が変わった訳ではありません。美しさや新しい驚きを紡ぐ作家とクリエイティブな作品をご紹介する喜びは格別なものがありますが、同時に、真実とか、社会の整合性を保つ為のシステムとかといった、今迄気付かずにいた、わたしたちの周辺を取り巻く著しく阻害され、ないがしろにされている状況そのものといったものに対する強い関心と、それら諸々が人々の一つ一つの仕事とリンクせずに存在する事は最早できないのではないか、という感慨が生まれました。
今迄、私たちを取り囲むこの世界は、少なくとも余計な詮索をする必要のない極々普通に暮らせて行ける社会であると思っていましたし、まだまだそう思っている人、またそう思いたい人もおられることでしょう。
優しく温かな普通の人々が、今迄と同じ意識で生きていくことが困難な世の中になってしまっている、という過酷な現実は、表現の仕事に関わっている人々の意識を今、どんなにか混乱に陥らせていることでしょう。
今私たちを取り囲む世界は、作り物のSFの様に迫り来る異様な気配を感じます。オーウェルの1984の世界が以前どんな感想をもたらしたかがまるで冗談の様です。1984の国家は、作られた架空のものでありましたが、30年ほど遅れて日本にやって来たかのようです。
世界の中で、ひとつの国同士の交換が基本的なモデュールであった筈の関係が、乱暴な言い方をすればグローバリゼーションに名前を借りた、利益第一追求企業型のカテゴリーの集団と利益追求が一番ではない価値体系のカテゴリーの人々との関係に、自動的に或いは意図を持ちながら導かれてしまっている様な状況といえる気がします。
私たちの社会を代表する人々が堂々と不正をするばかりでなく、それを裁く立場の機関でさえも疑惑にまみえている事実。そしてそれを報じる機関はそれらと結びつき、正しさも交えながらわかりずらく誤った報道をするという事実。言論の自由を奪うまかり通る姑息な手段を平然とやりのける法人。
わたしたちは、そのような環境の中で今生きていて、会社に行き、学校に通い、何かを表現したり、美しさを提示し、子供たちを育て、何事も無かったかのように今を生きて行かなければなりません。
ずっと以前から不思議に思っていたことがあります。こんなにあらゆるテクノロジーが進歩し、人々の感覚が洗練されても、社会に浸透しきれない還元されない、という思いです。
これは自分の事も含め、自戒をこめて申し上げるのですが、判断を新聞や雑誌、TV等に委ねてしまい、その通りに鵜呑みにしてしまった為に損失した多くの事柄に今ぶつかっているのではないかと思います。
そして自分を省みて反省することも大切ですが、それよりも、この社会のシステムの崩壊といったものに、眼を向けなければならないとも思うのです。
先ほど述べた計測できないものだけれども確かに存在する美しさや存在の力、また前方へと向かうエネルギーに満ちたものや利他的な倫理を感じさせる人や作品等々、人を感動させ生きる糧となる様なものを私たちは作り上げ、分かち合って来ているのだと思います。そしてそれらのことは、目にみえにくく、わからない人には全くわからない場合もある感覚的なものかも知れませんが、人間として最もたいせつなものであり、誰にも譲り渡してはいけないものと思うのです。
ささやかでも、日々の中で何気なく無意識にたいせつにしていたそのような事がらさえも、利益追求型の企業やそれに連なる人々は壊す事を厭わないように感じられます。美術や音楽、演劇、様々な領域から若い才能が羽ばたこうとしていて、それらの芽を健やかに見守り伸ばして行こうとする事が、周辺の人々の自然の感情であると思うのですが、それと逆行している事がらに唖然とさせられます。大人の社会の在り方で、偉大な才能が世に出されず、つぶされて行くことを嘆きます。
自明の公平さを疑いもしなかったこの国の選挙さえも、具体的な不正の証拠が次々と明示されておりますね。この国がまさか言論弾圧等・・、と笑われる方がほとんどと思いますが、大阪で実際にガレキを燃やす事に反対した人の拘束は、まだ今月末迄続く模様なのです。オーウェルの1984を遠い話と感じていた様に、北朝鮮や中国を不自由な国、と気の毒に思う自分がおりましたが、それらの国々の人々は自分達が抑圧されている事を知っていて、日本の場合は全く気付いていない人の方が多いかもしれない、という悲しい事実があります。
こんな状況の中でなすべきことがわからず、立ち止まり嘆くしかない様な気持にさせられてしまいます。そうしてたいへんな時代を私たちは今、生きておりますが、たいせつなものを決して譲り渡す事のないように生きて行く事を考えなければならないのだと思います。当たり前のことの様で、とてもむずかしいことかも知れませんが、そうやって、ひとつひとつ乗り越えて行けたら良いな、と思うのです。
今回、草間彌生さんの作品をご紹介申し上げます。水玉のモチーフや合わせ鏡を用いてオブジェを無限に見せる作品制作やインスタレーション等の活動を続けられ、インターナショナルな名声を得た今も、なお、最前線を走り続け、若者層にもすっかり人気者の草間彌生さん。今回ご縁があり、素晴らしい作品をご紹介できることとなりました。オンラインショップでもぜひご覧下さい。
MIRROR BOX 2001 140×140×140mm
花 PX 1993 840×708mm
レモンスカッシュ (S) 1999 700×588
朝の太陽 1999 830×630
こちらのサイトからご購入頂けます。
http://shop.spaceyui.com/?mode=cate&cbid=1175381&csid=17
ライフワークのテーマである「ハート」をモチーフにずっと作品制作を続ける政岡勢津子さんの作品は、優しさに溢れています。
今回の展覧会「LOVE SINCERELYー心から愛をー」というタイトルにも込められた温かなメッセージが、 画面の鮮やかな色彩、素材感と共に 作品を展示した空間全体から伝わって参りました。
今回のハートは、テーブルウェア、バッグ、ポストカード、Tシャツ等にも展開され、政岡さんの作品を愛好する多くの人々の元へ届けられました。
抽象的な作品と、少女達を熱狂させるキャラクター作家としての側面を持つ政岡さんの次回の展開が早くも期待されます!
http://old.spaceyui.com/schedule/masaoka_12.html
昨年の個展がきっかけとなり、小渕ももさんの白と紺のシンプルな陶器のシリーズができました。和食にも洋食にもティータイムにもお使いになれます!
一点ものではないので、お値段もお手頃でお求めやすくなっております!
ヴィクトリー陶器のCoVブランドで作成され、来年CoVのオンラインショップで発売されますが一足お先に画廊で販売させて頂きます。遠くの方には配送も出来ますので、どうぞメールかお電話でお尋ね下さい。
パンフレットの上から
四角皿 S12cm¥1,200 M15cm¥2,000 L18cm¥2,500
切立ボールセット ¥3,250 (S7.5×6.6, M7.9×7.0, L8.8×7.7)
箸置き ¥620
受皿 ¥1,000 (14.3cm)
フルーツ皿 ¥1,200 (○13.8cm×h 3.8cm)
浅口ボール ¥1,450 (○12.5cm×h 6.0cm)
コーヒー碗 ¥1,250 (○9.5cm×h 6.6cm)
- Archives
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年7月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年3月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月
- 2013年3月
- 2013年2月
- 2013年1月
- 2012年12月
- 2012年11月
- 2012年10月
- 2012年9月
- 2012年7月
- 2012年6月
- 2012年5月
- 2012年4月
- 2012年3月
- 2012年2月
- 2011年12月
- 2011年11月
- 2011年10月
- 2011年9月
- 2011年8月
- 2011年7月
- 2011年6月
- 2011年5月
- 2011年4月