中村幸子+中村桃子
うつくしいひと・・・。
何ともこころ魅かれるタイトルです。
久しく温めていたギャラリーの企画展、中村幸子さんと長女の桃子さんによる2人展を開催いたしました。
母・中村幸子とのはじめての2人展です。ひみつですが、
タイトルは母からイメージしてすぐに決まりました。
これは、そんな家族の戯れです。 中村桃子 ・・・(展覧会DMより)
スペースユイでは中村幸子さんと、数十年に及ぶお付き合いがあり、幸子さんの個展開催は元より、シルクスクリーン版画や多くのTシャツやファブリック等のグッズ類も、楽しく遊びながら作って来た歴史があります。
幸子さんは、デビュー当時からユニークな個性を持つ評判のイラストレーターでした。ミステリアスな多少の毒っ気の含まれたイラストレーションから、ファッショナブルなテイストの作品まで、多くの分野で多才ぶりを発揮いたしました。
中でも一番に魅かれた幸子さんの作風は、作品全体が醸成する、画面空間の背景から匂い立つように流れ出る美しい気配を持った女性像だったような気がいたします。
そして桃子さんの描く女性像も、フレッシュな清々しい空気感が真っ直ぐに心の奥にまで伝達され、作品を見る人の心が打たれるのです。
現在の桃子さんの活躍ぶりには、幸子さんのイラストレーターとして同世代時の感覚を彷彿とさせる、感慨深いものがあります。
桃子さんがまだ本当にBABYの頃、拙宅にて幸子さんや友人と時々時間を共にした記憶がありますが、あっという間に桃子さんは大きくなって立派なアーティストとして成長しました。
母、幸子さんの生来の個性である不思議な、次元を超えた世界観の表現は、人々と共感できる部分と不思議な謎の部分とがあると思われます。
ある意味現実感覚を相当逸脱した不思議な感覚を持ったアーティストとしての姿勢の幸子さんと共に生きて来られた桃子さんは、その魅力やテイストを充分に吸収され、消化&昇華しながらご自身の作風を作り上げて来られたのではないかと感じます。
そして展覧会場では、お二人の作品が画廊空間の中で呼応しあいながら、言葉には表現しがたい空気感を作り上げていると感じております。
幸子さんの画面からは4.5次元の振動が伝わって来て、理解は難しいけれど誰でもこの新たな感覚を美しいと感じられる。
桃子さんの瑞々しい作品は、幸子さんの作品よりコミュニケーションが容易な分、切なさの含まれた晴明なパワーを受け取ることに説明が要らない。そんな感じが伝わって参ります。
アーティストにとって、エゴイズムが勝っていてもそれはアーティストの特権なのではないかといった意見が多々ありますが、最近それは違うのではないかと思っております。
自由な心の中に花が開くように、絵画、音楽、演劇etc.、多分野において溢れ出た表現の時代を通過、60年代から現代へと今から振り返ると激動とも言える時代を通り抜けて、時が成熟した今、人々は気がついていると感じます。
クリエイティブな創造的な精神は、「思いやり」というごく当たり前の心をすでに肉体化していて、一番に捉え、そんなこと言葉にする必要のないほど自然体なのかも知れません。
目に見えない次元を示唆する不思議な世界観を描く幸子さんの、思いがけない強くきっぱりとした思いやりの心に何度も遭遇し、感動した記憶があります。
様々なことがらを乗り超えて、多様な個性を内包し年齢の力も借りながら紡ぎ出される幸子さんの作品からは、辺りを祓うかのような引力が感じられます。
また、桃子さんがしっかりとそんな美質を受け継がれ、新たな力へと育み、驚く程多くの方々の共感を得ておられることが頼もしく、素晴らしいことと思います。
桃子さんのイメージする「うつくしいひと」が、幸子さんである感慨に、他人が実に僭越なことですが、胸が熱くなる思いです。
中村桃子
中村幸子
http://old.spaceyui.com/schedule/nakamurasachiko-nakamuramomoko.html
堂前さんの最初の個展から、知らぬ間に11年目を迎えました!
そして、函館からいらっしゃる堂前さんの作品を心待ちにして下さる方々が年々増えて参りました。今年は、新たな表現方法の作品と、更にパワーアップした以前からの描法の作品とで、素晴らしい展示ができました。
静かな佇まいの堂前さんですがご自身の中に結実した豊かな経験から、実はお話しするととても楽しい方です!
会期中に偶然お出かけ頂いた、函館出身のイラストレーターの水沢そらさんのご実家のお店だった木造のレトロな建物と、堂前さんの現在のお店である、はこだて工藝舎へ引っ越される以前のお店が同じ建物だったという偶然も発覚!お二人が不思議なご縁で繋がっていたことがわかりました!
現在のはこだて工藝舎も歴史的な立派な建造物、そしてそれ以前は港町特有のエキゾチックな木造建築の建物を店舗に選ばれている堂前さんの感性に、あらためて感じ入っております。
堂前さんの作品の中には函館の街の風景が描かれたものも時々あって、見ほれてしまいます!
今回は、堂前さんに想像力を刺激される素敵な文章をお寄せ頂きましたのでご紹介させて頂きます。
↓
今住んでいる函館には高校入学の時に初めて来て、それはもう47年前にもなります。あれからいろいろな所に住みました。その結果たった3年間の下宿生活の中で過ごした記憶が、今の函館生活に繋がっています。当然当時は若く何も分かっていませんでしたが、まだ町も少し元気があったのでしょう、よくいろいろな所を歩き廻りました。
陶器を作る場所として仕事場を探しに戻って来たのが30年前になります。バブルも終わって町もだいぶ傷みが出始めた頃だったのか、古い建物も次々と壊され、それ以来今も空き地が増えています。住む人がいなくなって窓ガラスが破れ、雪で屋根が壊れそうになっている家を散歩途中に見ても、普通の景色になりました。窓からは昨日まで人が住んでいたように台所道具がぶら下がったままで、通り過ぎるたびに目が行きます。ここでどんな生活があり、玄関を開けてどんな人が出入りしていたのだろうと、つい思ってしまいます。
特に立派な家ではなくても、物語が感じられたり浮かんだりする街並みが残る町が、函館旧市街地です。そういう事を感じる年頃になったと言うことかもしれませんが、高校時代も同じように感じていたので、今ここにいるのでしょう。
いつか作品を見て何か函館生活が感じられるような物が作れればと思っています。
今年が普通の年で過ごせますように。
堂前守人
http://old.spaceyui.com/schedule/doumae_morito2021.html
コロナ禍の影響が1年以上経っても尾を引いている今、世界が止まってしまったかの様に感じられる日々を私たちは過ごしていると感じております。
法的なストップも補償もないまま、昼間の時間も外出を控えることを推奨する政治家たちの声を聞きながら、私たちは矛盾の中で仕事を進め生きて行かなければなりません。
素晴らしい作品を通常の状況の中で皆様に提供でき、共に楽しむ時間を共有できたら、と思わずにはいられません。
創造に携わる人々は、そんな状態でもエネルギーを全開にして創作を続けて行くことを余儀なくされます。
そして、星野哲朗さんの作品展では、昨年も本年もコロナ禍の中でのリスクある時期の開催にも関わらず作品の圧倒的なパワーを皆様に届けることができたのではないかと思っております。
元々、ペインティングの作家の方はエネルギッシュですが、星野さんも、例に違わず大きなパワーを抱いている方です。
いつもキャンバス上に思いの丈を全て表すかの様に、丁寧な様式美溢れる星野さん独特のテクスチュアを以って画面を完成に導きます。
星野さんの作品は、ひとつ々の画面の中に沢山の思いが込められていて、見応えたっぷりです。
しかし時には、画面のヴィジュアルの情報量やメッセージが多くて、時間をかけて観賞しないと人々が受け止めきれない場合があると感じました。
その為ギャラリーでは、星野さんの持つ内在的なホスピタリティーを表すには、引き算的な思考スタイルが良いのではないかと思うに至りました。時代を生きる人々は、忙しくリスキーな問題を抱えています。
そうして、星野さんの作品としては小さなシンプルな作品に、人々は共感を持ち所有したいと思って下さいました。
本年の個展では、星野さんに画廊サイドからの勝手な申し出を引き受けて頂き、本当に感謝しております。
来年の作品も、自信作をすでに手がけていると伺いました。星野哲朗さんの創作意欲に脱帽です!皆様どうぞ来年の星野さんの個展もお楽しみになさって下さい!
http://old.spaceyui.com/schedule/hoshino_teturo2021.html
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