沢野弓子さんが個展を開催して下さるようになってから既に20年ほどの歳月が経とうとしています。
沢野さんは、墨による絵画表現の巨匠とも言える楠田喜代子さんの個展を開催していた時に、当画廊を訪れたのでした。
当時、沢野さんは抽象絵画を描かれていて、楠田さんに私淑しておられるとの事でした。楠田さんもぶっ飛んでいる方でしたが、沢野さんのファッションもカテゴリーに収まらない素晴らしいモード感を発散されていて目立っていました。
楠田喜代子さんは、2016年に100才を目前に亡くなられましたが、当時は80代の元気一杯の超チャーミングな作家さんでした。
既に色々なものから達観されていて、一つ一つの発言や発想も誰よりも自由で、性格も明るかった楠田さんでしたが、画壇に属されなかった為か、海外からの評価の方が高く、個展開催後には、ヨーロッパやカナダからの個展開催のオファーが必ずあるという不思議な独特な広がり方には本当に驚くばかりでした。
小さな男の子のような無邪気さと好奇心が一杯、何方にも公平な態度で、周囲の人々から大人気の方でした。
そんな楠田喜代子さんが、沢野さんのファッションも含む佇まいを、生きたアートですよ!とおっしゃっていた事がずっと心に残っています。
今年の個展で、ふっと楠田喜代子さんを思い出してしまいましたが、楠田さんの存在が沢野さんとの繋がりを作って下さったと思いますと、人との繋がりのご縁を感じてしまいます。
沢野さんの卓越したセンスは、私たちの身につけるオブジェとなって、生活に楽しくアッパーな彩りを添えて下さいます。
アクセサリー、バッグ、ブローチや服飾全般と、どこにも無い、けれども最高にキュートな身につける人を幸せにする力のある作品を提示し続けます。
そして沢野さんの作品とともに、楠田さん譲りの明るさでもって、訪れる方々をハッピーにし続けて下さっています!
http://old.spaceyui.com/schedule/sawanoyumiko_2021.html
河井いづみさんの興味深い展覧会が終わりました。
河井さんは、実際の生活の中のもの達をスーパーなテクニックで表現し、見るとワクワクするような素敵な絵本が出来上がりました。
また彼女の想像力は3次元に止まる事なく、目に見えない世界観をまるで実世界を描くように楽しげに美しく表現します。
どこかから採集して来たかに思える鉱物や宝石、また羽や昆虫や植物など・・・、同じ平面に並べて独特な色彩が加えられます。
宇宙の視線から見たら、それらのもの達の生成される年月の違いなど大した差異はないのかも知れない、いう感覚を想起させられます。
空間の面白さを含むグラフィック的な感性、そしてファンタジックな発想も混じえ、クールなのだけれど、どこかスイートな味わいのある河井いづみさんのイマジネーション豊な作品は人々を魅了し続けます。
河井さんよりお寄せ頂いた文章を以下にご紹介させて頂きます。
↓
スペースユイでの2年ぶりの個展が終わりました。
お忙しい中お越しくださいました皆様、気にかけてくださった皆様、ありがとうございました。
今回は、鳥かごの中と外を描いた夜のシリーズを中心としたリトグラフと、近年取り組んだ図鑑絵本や迷路絵本の原画を中心に展示しました。
私は鉛筆を使って描き、パソコンの中で色に変換する手法をとっているので、原画はモノクロームです。
着地点はカラーですが、モノクロの時点で色や空気を描いているつもりなので、そこを楽しんでいただければと展示しました。
イラストレーターとして要望に応えながら描く日々の中で、絵本の仕事に向き合ったことで、子供のころの私に再会でき、何が描きたかったのかを思い出すことができました。節目の作品になったように思います。
またこのような時期に足を運んでいただいたお客様のお顔を見ながら、これまで変わらずに描き続けられていることの幸福と感謝を感じました。作品を見続け応援してくださっている皆様、スペースユイの木村さんやスタッフの皆さん、心から感謝申し上げます。
河井いづみ
http://old.spaceyui.com/schedule/izumi_kawai2021.html
日本の四季を巡り美しい風物を描く風雅な世界観は、古来から脈々と創り上げられ構築され続けた様式があり、人々に共通のイメージを持って愛られ大切に受け継がれてきた感覚を覚えます。
卯月俊光さんは、伝統的な世界観をベースに独自のグラフィカルなセンスを加味し、また金箔や染色などの技術を駆使しながらご自身の作品に新しいエッセンスを加えます。
空を見上げ、息をすると苦しくなるような日もある都会に生きている現実の中、それでも人々は美しい雪月花の風情を求めて止みません。
「 〜 近年は自然の摂理などに意識が向いている 〜 」という、下記の卯月さんの文章のように、厳しさも優しさそして恐ろしさも、全てを含む自然の摂理に思いを馳せずにはいられない日々。
今を生きる人類に共通の、不条理な感情を内包しながらも思いっきり美しく描かれた卯月さんの作品に触れて見たい、と思わずにいられません。
↓
コロナ禍、あいにくの台風の中、展示にお出かけ頂いた皆さまにはとても感謝しております。
今回は、新作と、以前の作品に手直しを入れ新たな見え方にした物を観ていただきました。作品は染めた水彩紙に金箔、岩絵具などで仕上げる独自の技法です。
金箔は光の加減によって表情が変化し奥行きがありとても魅力を感じています。個展のテーマである『GOLD』も金の持つ力、可能性を伝えられればという思いで決めました。会場でいただいたお言葉に、自分でも半信半疑だった作品などが好感を持たれていて新たな発見がありました。これからの方向性に気付きをいただきました。
気持ちの赴くままに自分がワクワク出来るよう創作をして来ました。そして、いつも何を描こうとしているのか、、どこへ向かっているのか、、自問します。
近年、とくに自覚的に思うのは自然がつくりだす様相、また自然の摂理などに意識が向いていると言うことです。
四季のある小さな島国の日本は様々な多様性、情緒をもたらしてくれていると思います。そして、それはとても豊かな、恵まれた環境だとも思います。
四季が作り出す日本的な奥ゆかしさ、細やかさ、煌びやかさ、侘び寂びなどを少しでも表現できたらと思います。 (卯月俊光)
http://old.spaceyui.com/schedule/utsuki_toshimitu.html
目まぐるしいスピードで動いている世界の分野と、そうではなく変わりなく存在している様々な分野の人々や国々がモザイクのように詰め込まれた感覚。変わるべき感覚と変わってしまっては悲しい気持が入り混じり、人々はどう生きたら良いのか、指針を失っているのでしょうか。
表に出ているニュースの裏側に隠されている瑞々しい何かを見落とさないように、シナプスはいつでも尖らせていたいけれど方向を誤らないようにしなければならない事も大切。
現代社会において人間の出発点としての足跡が溢れているケニアに住まわれた日々は、シーノ・タカヒデさんにとり、本当に素晴らしい経験だったと思います。
シーノ・タカヒデさんの第二の故郷であるアフリカには、多様な世界が一巡した後の、新しい未来を感じます。
純真なアフリカ、原初の大地、混沌の大陸・・・。それでも人々は、裸足のままでスマホを持っている!
純粋なままではいられない、プリミティブな感覚を客観的な感性と共に持ち続けるのは至難のわざかも知れませんが、何かを創り出すためにはとても必要なことと思います。
日本だけでなく、いわゆる経済大国といわれていた国々が次々と精彩を失って行くのを見るにつけ、アフリカだけではなく、南米圏、南アジア圏、東欧など、それらの国々から光を灯してくれる感覚を予想してしまいます。
懐かしいアフリカの思い出を通して、シーノさんの作品の中に新しい輝きが灯される期待が膨らみます。
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