Monthly Archives: 7月 2019
2019.07.31:水曜日

 


 実に31年ぶりとなる、1988年に発表された安西水丸カレンダーシリーズのシルクスクリーン作品展でした。1月から12月迄のテーマ別で、それぞれの月の季節感が楽しく表現された個展だったと思います。中には、何故3月のテーマが「犬?」とか9月は「UFO」なのかしら?などという部分もありましたが、七夕やスイカの女の子、スキーやクリスマスツリー等も登場、12ヶ月の風物詩的な興趣をたっぷりとご堪能頂けたのでは、と思っております。

 そして何より31年経過した現在に於いても、全く古さを感じられないどころか、更にフレッシュな印象でギャラリーにいらした方々に受け止められた事に対しましても、大きな驚きと喜びを感じました。

 1987年か88年の或る日に、安西氏がいつもの様にぶらっとギャラリーにいらっしゃり、三ヶ月置きに四度の個展を開催なさりたいとお申し出下さいました。

 現在の画廊の1/4の広さしかなかった当時の画廊空間を想定なさった上で水丸さんの、楽しく自由に感性を遊ばせる展示の企画構想だったと思います。

 そしてこのシリーズ第一回目の展示は、今回一番人気のあった「8月」のスイカの女の子の原型とも成る子供をモチーフにしたテキスタイルや水丸さんのお習字を額装したりと、リラックスした中にも完成度のある展示、そしてシリーズ第二回目はグッズの為のオリジナルなモチーフを普段仕様の陶器やTシャツに用いたギャラリーとしても初の試みだった展覧会を開催しましたが、それら二回の展示の直後に画廊は急に現在の場所に移転する事になりました。

 既に、作品も人々も当時の小さな空間ではみ出してしまっていたのを見かね、大家さんの早川さん、不動産屋さん、このギャラリーの以前の画廊オーナーの方の三名が一緒に現在の場所への移転へと導いて下さいました。

 自分自身、突然広がってしまう空間のキャパシティーに対応するのがすごく難しかった事を、今でも思い出されます。

 そのような状況の中での、水丸さんのこのシリーズ3度目の個展が「MIZUMARU CALENDAR」でした。

 通常の作品としておなじみの、細い線で描かれる卓上のモチーフや水平ライン等とで構成される美しく格好良いスタイルの作品とは意を異にする、太いラインによるキュートなキャラクターたちの登場に、ご覧になる方々も新鮮な印象をお持ち下さいました。

 水丸さんも画廊空間が広がった事で、大きな画面に大らかなキャラクターたちを生み出して下さったのかも知れません。

 あらためて過去を振り返りますと、SPACE YUIは、本当にたくさんの水丸さんとの展覧会の思い出に溢れている事に気付かされます。

 毎年続けて来たシルクスクリーン作品の制作も、敢て意識的に続けて来た訳ではございませんが、30年以上続けて参りますと自然に種類は数多くなります。

 作品の種類は多いのですが、水丸氏が版画家ではない事からエディションはどの作品もたいへん数少なく、本当に貴重なものと感じております。それでも、生前の水丸さんは、常に若い方々へ向けて、できる限り低めの価格での提供を求めておられました。画廊でも勿論異存なく、常に水丸氏と同じ感覚で歩んで参りました。

 水丸さんとの歩みはまだまだ続いていて、新しく水丸さんの作品に触れられた若い方々、そして従来のファンの方々へと、お届けしきれていない才気に溢れた力をご紹介する機会が待たれます。

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/mizumaru_anzai2019.html

2019.07.23:火曜日

 



 
木村晴美さんの作品展、とても人気で、驚くほどたくさんの方々にご来廊いただきました。

 木村晴美さんの作品画面の、澄みわたる深い色合いの色調は、既視感のない素晴らしくオリジナリティのある「色彩の世界」でした。

 以前から感じていた事に、落ち着いた深く心に響く色彩は、どうしても明度や彩度が低くなりがちという自分の中のぼんやりとした見解の様なものがありましたが、木村さんの作品によって、見事に覆されました。

 作品の色彩の澄明さと共に届けられるモチーフの潔い形象も、たいへん視覚に心地よく感じられ、作品に囲まれてギャラリーに佇みますと、伝わって来る静かだけれど力強いパワーに魅きつけられます。

 深くて透明感のある色彩を一体どうして表現しているのかと、伺ってみました。すぐに教えて頂けましたが、そこに至るにはずいぶんと研究をされた事と想像いたします。

 素敵な感性と、研究されその感性をあまねく生かす技術を会得された作品のエネルギーは、作品を観る方々の心にストレートに届けられたと感じます。

 ご本人はとても穏やかな方ですが、そのパワーには秘められた力を感じます。今後の木村晴美さんの作品もたいへん楽しみです。

 フランスで出版された絵本には、ご自分で文章も書かれている木村晴美さんに今回の作品展についてのコメントをお願い致しました。画廊についてお寄せ頂いた文章の部分は恐縮なのですが、以下にご紹介させて頂きます。

 


 

スペースユイさんで個展をさせていただきたい!ドキドキしながら作品ファイルを持ち、ギャラリーを訪問したのが2016年。しかし人気のユイさんは、その時すでにスケジュールがいっぱいで念願叶わず。2018年、再チャレンジで今回の展覧会が実現しました!

これまで個展では、テーマや色合いを始めから決め、不思議な生き物たちが登場するものばかり描いていましたが、今回はそれらの作品とはちょっと違う雰囲気のものを描きたいと思い、日々思うこと、そこから膨らむイメージを、その日その時感じる色で描きました。いつもと違ったリズムで描いてみると、新鮮な気持ちで画面に向かうことができ、絵を描くことの楽しさが増え、自分にとって新しい一歩となった気がします。

ご来場くださいました方、興味を持ってくださいました方、そしてスペースユイさん、心より厚く感謝申し上げます。

この展覧会で皆さまからいただいたエネルギーを糧に、これからも制作に励んでまいりたいと思います。(木村晴美)

 

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/harumi_kimura2019.html

 

2019.07.12:金曜日

 

 

 

山崎若菜さんの個展「ZONE」、好奇心をかきたてられるイマジネーションの世界に圧倒されました!

画面に描かれる明るくポップな力に満ちた色彩は、画廊を訪れ作品を観る人々に元気エネルギーを注入していました!

若菜さんの作品は、一見、無意識の泉から無限に湧き上がって来るように見受けられます。まるで作家の手や腕から自然に生まれて来るイラストレーションのように感じられるのですが、大方の意に反して一枚一枚の作品はたいへん構築的なコンストラクションを持って表現されている様です。パワー全開の画面の奥に潜む設計図が何だかよけい楽しさのバイブレーションを大きくしているのでしょう。

男の子やロボット、キャラクター世界の生き物や動物たちが織り成す作品世界は、小さな虫や植物たちも参加して、大らかなひとつの宇宙を完成させている、と感じます。

一見ドライな表情の男の子たち、登場する者たちが、互いがクールに独立しながらも友愛の感覚を醸し出し、ポジティブオーラを振りまきながら若菜さんワールドを形成しているのだと思います。

山崎若菜さんの会期には、男性のお客様、そして海外からのファンの方がたいへん多くて驚かされました。売れっ子の若菜さん、会期中にもお仕事のオファーがずいぶんありましたが、若菜さんのイラストレーション作品がもっともっと街に溢れて、この国の人々、世界の人々を元気にしてほしいです!
 


 
 

http://old.spaceyui.com/schedule/wakana_yamazaki2019.html

2019.07.01:月曜日

 

 
 

天野智也さんの作陶展、今年で12年連続での12回目の開催でしたが、本当に大好評の展覧会でした。

岡山県備前市からいらして下さる天野さんですので、最初のうちは、アウェイ開催という事もあり画廊サイドも心配しておりましたが、回を重ねる毎にお客様が増えて行き、驚くほどの人気会期となって参りました。

最近は、天野さんの季節が近づきますとスタッフも体力づくりにいそしみます!登り窯を炊く日にちの都合、自然と毎年の会期が決って来るのです。

天野さんの作品は、グラフィックデザインされ、またプロダクトデザインのシャープさもあり、それでいて柔らかな人の体温を感じさせる、色々な方向性を兼ね揃えた作品です。毎年楽しみにして下さるファンの方々に加え、道行く人たちの眼も引いて、新たなお客様が絶えません。

毎年、開催される作品展での展示作品の中には定番としてのオーソドックスな陶器があり、また時代の風を感じさせる新しい顏の作品もあり、楽しさが満載です。

見る側にとりましては嬉しい限りですが、制作される天野さんは涼しい顔をされていますが、その努力を想像致しますと頭が下がる思いです。

画廊では、備前焼の天野知也さんの展覧会の開始とほぼ同時期に、天野さんよりも一回り年上の上田光春さんという方の信楽陶芸展を何度か続けて開催しました。

お二人は、当時岡山で活躍されていたギャラリストの薮多門さんにご紹介頂きました。焼き物が大好きで展覧会を開きたくても作家を誰も知らない私にとって、素晴らしい出来事でした。

天野さんはその後毎年開催される様になりましたが、一方の上田さんは伝統的な信楽の世界での6代目直方を襲名される事となり、異なる方向へと歩まれて行きました。

日々使う陶器や自由な作品作りといった、多様な世界へと広がりを見せる天野さんの作品の方がスペースユイの方向性とどうしてもリンク致しますが、伝統の世界の頂点でご活躍される上田さんの様な方がいらっしゃり、バランスがとれて行くのだと思います。

そんな上田さんから天野さんに(お二人はお会いした事がないのですが)fbで温かなエールを送って頂いた事が私にとっても天野さんにとりましても(多分!)、大きな励みになりました。

それから、備前の山里に住いとアトリエを構える天野さんが毎年持って来られる可憐な表情の野の花々や枝ぶりのステキな緑輝く葉っぱが土の作品をより美しく際立たせる興趣も皆が楽しみにしております。自然流の生け花、とても様になっています!

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/tomoya_amano2019.html

 

 

 

 

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