Monthly Archives: 5月 2014
2014.05.31:土曜日

 

 

 

 

 

 

今年のAD-LIB展⑦を開催できた事を奇跡の様な事と思っております。

安西水丸さんが3月19日に急逝された為、当初はこのコラボレーション展は開催不可能と思われ、和田誠さんとの話し合いにより中止することを決めました。水丸さんの作品はまだ出来ておりませんでした。

会期的にも、心情的にもぽっかりと空いてしまったスペースを、どのように埋めて行ってよいかわかりませんでした。

5月の美しい季節のはじまりの日々を、12年間、当たり前にめぐり来る季節の様に受け止め開催させて頂いていたお二人のコラボレーション展でした。 

この季節の風物詩の様になった展覧会は、回を追う毎に人気を増して、オープニングの日の夕方に自然に行われていたお二人のトーク(お二人は漫談とおっしゃっておりました)は、聞いている方々もつい引き込まれる楽し気な親しみに満ちたものでした。

作品は常に22点の展示と決っていて、和田さんと水丸さんがその半数の11枚の画面の左側に最初のインスピレーションから得たものを自由に描きました。そして、次にはお二人の描いたそれぞれの11点をチェンジし今度は画面右側に、左側に描かれたイラストレーションにインスパイアされ喚起したイラストレーションを描き、完成させるという手筈です。

毎年、お二人が仕上げた11点は、搬入の日に初めて見る事となりますが、その日に初めて互いの手によって完成された作品を見る時のお二人のやり取りは、お兄さんと弟の様な親密感に溢れ、おそらく心から楽しくそして真剣なものであったと思います。 大きな才能と名声に恵まれていても、失われないいっとう大切なものを交換し、磨き合われていたのでしょうか。

和田さん、水丸さん共に、希有な才能の方々ですが、お二人のお互いの作品に対して抱かれる敬意の感覚は、常に変わらぬものがありました。

違った形で照れ屋のお二人の間で交わされる友情を、失ってみて、しみじみと、何かとても大きな何かを失ってしまったと感じます。現代に於ける双璧を成す絵師さながらの偉大な相棒を失われた和田さんのお気持を思いますと心が痛みます。

毎年の、搬入の後のビールタイムに交わされる博識なお二人の、洒脱な会話の中に垣間見える小さな兄と弟の様な感じを忘れる事ができません。 

今年の展覧会を中止する事に決め、しょんぼりしている時に、和田さんからお電話を頂き、水丸さんの分もがんばる、と伺った時には、和田さんの心意気に対して感謝の気持で胸がいっぱいになりました。

展覧会は、約半分が左側も右側も和田さんが描かれた作品、そして後の半分は、過去12年間の作品のアーカイブの中から選んだ作品で構成していこう、という事になりました。

そのようにして実現した展覧会は、和田さんの力のこもった作品の放つエネルギーに助けられて、半数は新作ではなかったにも関わらず、沢山の方々に見て頂き、好評を博しました。

折しも水丸さんの「お別れの会」では、多くの方々が水丸さんへの追悼の意とお別れを惜しむ時間を共有されました。和田さんの司会も心情のこもった温かなものでした。TISやJAGDAの方々、山陽堂主催のイラストレーションスクールの生徒さん等大勢の方々がこの会をサポートして下さり、発起人の方々のご挨拶も水丸さんとの急なお別れを惜しむお気持ちが伝わって参るものでした。

画廊では、水丸さんと長期にわたって制作して来たシルクスクリーン作品を会場へと続く通路の壁面に展示させて頂きました。

タンポポやフキの葉等の植物の作品の前で、もんしろ蝶が一羽だけ、優雅に飛んでいるのを見つけました。

まだまだ、水丸さんとはお別れしている気持にはなれませんが、また新たなスタート地点から、水丸さんが喜ばれる様な仕事が出来る様、がんばらなければと思っております。

 

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/adlib7_14.html

 

2014.05.10:土曜日

 

  

 

穏やかな温かな羽山惠さんの創る作品ですが、確立されたオーソドックスな美しさの中に激しい感情或は怒りの感覚さえも含まれていて、こころ打たれるものがありました。

アートディレクターであり、イラストレーターでもある羽山さんは、商業美術のフィールドを熟知しておりますが、日常生活を覆う確かに存在する人々の祈りの気配を、掬いとる様に表現しておられました。

長らく平面作品の表現に携われていた羽山さんが陶芸の世界に入られて以来、創作がどんどん純粋な表現に向かわれている様子です。

凛々しい女神像や天使、神話の中のサテュロス達は、ロマネスクな様式を垣間見せながらも、羽山さんが創りあげた独自の個性溢れる世界観が感じられます。

また、永遠に手の触れる立体作品の様式美が、日常の人々の生活の中での器たちにも奏でられ、 こちらの側での、更なる可能性も期待されるのです。

永遠性や美意識などに根ざした世界と、私たちの現実の世界とを往復しながら、その振れ幅が大きな新しい力に育まれることと思います。

 

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/hayama_14.html

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