Monthly Archives: 8月 2017
2017.08.24:木曜日

 

 

 

 

2017年の安西水丸さんの作品展、無事開催する事ができました。

1993年、今から24年前に水丸さんにはめずらしい色鉛筆で描かれた作品を発表致しました。「LOVE STORY」というタイトルで、映画の印象深いシーンの大きめな風景画や比較的小さな室内を描いた作品が多く展示されました。

当時、シルクスクリーン版画の技法は現在と違い、作家が自由に描いた色数の多い通常の作品は全ての色の版を起こす事が困難なため、版画制作はほとんど不可能でした。

そのため、この年の水丸さんの作品は、原画のまま展示致しました。

2006年より、シルクスクリーンの技法もデジタル化されて、全国的に技術の革新が興りました。今迄の様に一色一色を手で刷る方法から、一旦デジタルに入力した作品をジークレイプリントとして刷り、その上からカバーする様に透明インクのシルクスクリーンを掛けるという方法が取り入れられる様になって行ったのです。

その様な理由から、僥倖の様に1993年の作品を発表させて頂く事ができました。

水丸さんが亡くなられてからの展示では、常に水丸さんだったらどんな風に感じられるだろう?と問いかけながらの作業です。1984年からの30年間、毎年の展示で水丸さんの作品とお付き合いして参りましたが、水丸さんの名誉を汚さぬ様、重責を果たして行きたいと思っています。

http://old.spaceyui.com/schedule/anzai-mizumaru_17.html

2017.08.12:土曜日

 

 

 

真っすぐに、志ある若手作家の作品をご紹介できる事は、とても嬉しい事です。

作品を手に触れ実際に使ってみて、楽しく心洗われる感が生まれる、と人々に思われるのは作家にとっては最大の喜びでしょう。

ガラス器だけでなく、陶芸などの一般的には工芸と呼ばれる分野の作品は、視覚だけではなく触覚や時には聴覚、また食器としての実用性を通し味覚にさえも影響を与えて人を幸福感で包む力を持ちます。正に宮本さんの作品は間違いなく使う人を快い感覚へと導く力があります。

宮本崇輝さんの作品は、プロダクト製品の持つすっきり感と手作りのガラス器の持つ温かさが程よいところで出会い、そのバランスが彼の持ち味でもあり、現在考えられる全てのクオリティーある作品としての立ち位置を、他分野さえ代表し提示している様にも感じます。

優れたガラス作品は涼し気な美しい風情で我々の視覚を魅了致しますが、作品が醸す印象とは反し、夏場の制作過程等は2000度に昇る溶解炉との格闘という過酷な環境から生まれて来るのです。

宮本崇輝さんのガラス作品の個展は、26才の時から出発して今年で3回目を迎えましたが、技術的にも感覚的にもぐんぐんと進化していらっしゃる事が感じられます。清潔感溢れ、北欧文化に学んだエレガントな色感と技法を取り入れた作品は、他の分野のデザイナーや物を創るプロフェッショナルな方々からも理解され賞賛をもって受け入れられました。

デンマークをはじめスウェーデン、ノルウェー、オーストラリア、アメリカ、と世界を旅して美術、工芸のみならず、感性を全方位へと向けて吸収しよう、となさっている宮本さんに、世界が微笑んで返信をしてくれることを望んで止みません。

彼がこれ迄に、歩み取り入れて来た知識や技術、また海外で受けた影響等から生まれた創作への姿勢についてたいへん良く纏まった文章を書いております。

宮本さんの、会場に展示されていた挨拶文を下記にご紹介させて頂きます。

ご挨拶

この度はご来場下さり誠にありがとうございます。 今回の展示のテーマは色の雰囲気です。昨年9 ヶ月間ほど滞在したデンマーク。特にこの国の風土がもつ色み、そして色が作り出す空気感に着目しました。

この所の2年間は海外の文化やガラスに直に触れる期間と決め、初めの1年間でオーストラリア、アメリカ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの国々を周りました。その旅の中で、デンマーク人ガラスアーティストのトビアス・モゥール氏に出会いました。彼の作品は吹きガラスの原点となるヴェネチアの技術を駆使しデンマークならではのシンプルかつエレガントなデザインで作られています。 二年目の昨年は主にトビアス氏とトリーナ氏夫妻の吹きガラスアシスタントとして、また夏の2 ヶ月間は、アンドリュー・ブラウン氏とナンナ氏夫妻の工房でスタッフとして滞在をし ました。この経験は、吹きガラスの技術向上だけでなくデンマークの文化に触れる事ができ 自然と私の制作に影響を与えております。

北欧デンマークでは、ガラスも含めインテリアや遊具にたくさんの色が使われています。しかし強烈な色はありません。強い色をスッと抜いたような色み。 デンマークの滞在中に感じたのですが、街や丘、海や海岸線、畑を照らす日の光は柔らかく人の目に入ってくる光景を優しく包んでいるような感覚があります。これは例えばオーストラリアの日の光は全く反対で、強烈に物や人を照らし、コントラストのはっきりとした光景 を私たちに見せます。つまり、デンマークの色味は中間色がたくさんあるのです。 この中間色はダイレクトに主張するのではなくワンクッション置いて人の目に入ってくる、言い換えれば誰にもわかりやすく強烈なインパクトを与えるのではなく、もっと自然に染み 込んでいくような感覚を与えます。

日本の光は少しデンマークで感じた光に似ている気がします。しかし、より中間色が多いような気がします。湿気を含んだ空気がその様に見せているのかもしれません。 デンマークの色みとは、日本人の綺麗だと感じる色味を抽出してあらわしたかの様な色みで はないかと考えます。

形としてシンプル and エレガントなデンマークのデザインだけでなく、色みに着目する事は 今後さらに研究を深めて行く上で大切な要素であると考えます。

情報が混在し、綺麗な物、必要な物、不必要な物、害になるだろう物も存在している今日の日本。デンマークの繊細で温かみがあり透明感のある色の雰囲気やシンプルでエレガントなデザインは、日常的に欧米の文化が浸透している日本に潤いを与え、元来日本人が持っている美意識を刺激し、呼び戻し、訴える力を持っているのではないでしょうか。 ヴェネチアの技術をベースにデンマークから影響を受けた日本人のモノ作りをご覧ください。

この度は、スペースユイを始め、あづみ野ガラス工房、調布グラススタジオ等様々な方々の協力のもと個展を開催する事ができ大変感謝いたします。そしてご来場して頂いた皆様に大変感謝いたします。

宮本 崇輝

http://old.spaceyui.com/schedule/miyamoto_17.html

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