Monthly Archives: 7月 2014
2014.07.17:木曜日

 

 

 

 

 

今年も人気者のあずみ虫さんの展覧会が、「物語のための絵」をテーマに開催されました。宮沢賢治やアンデルセンの物語の中の情景から創造した完成度の高い作品が展示され、好評を博しました。

あずみ虫さんは、安西水丸さんのイラストレーション塾に通う生徒さんの一人でしたが、水丸さんが生徒の資質を上手に引き出す名人だったことは、水丸さんのアドバイスから生まれたブリキを切って絵の具を塗る、というあずみ虫さん独特の作品スタイルを見ても理解できます。

素材と作家の感覚とがぴったりとフィットし、物語の中の様々な場面を描いた作品から、見る人を豊かなここちよい心情へと誘うエネルギーを感じ取ることができます。

 

 

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/azumimushi_14.html

 

 

 

 

 

 

 

 

堂前さんの陶器に描かれた絵は、自然に溶け込むかの様な色彩の優しい華やぎがあります。見つめていると、じわっと良さがにじみ出て来るいぶし銀の様な魅力がある陶器と思います。

土から器の形をつくり上げ、絵を描く、という作業は、時間と労力のかかる仕事です。柔らかな花柄が人気ですが、幾何学的なシャープな模様も組み込まれていて、しかも会場全体がひとつの流れに統一された世界観があり、作品の持つ力量を感じさせられます。

堂前さんの器は使い込んで行くと更に味わいが深く感じられ、そして困った事に食欲を増進させる性格を持っている様なのです。

 

 

 

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/domae_14.html

 

 

 

 

2014.07.07:月曜日

 

 

 

 

あっという間に月日は過ぎて行きます。YUI GARDENでの木村かほる個展も始まったばかりと思いましたらもう明日で終了です。相変わらず緑の中の建物は風情がありました。鳥を追いかける子供たち、ゆっくり散歩を楽しむ人々の間を縫って、澄んだきれいな小川が流れます。時々小さな生き物がせせらぎを跳ねている様子が見えます。

そして、遥かに高い天井から注ぐ光線が空間全体に広がり、ギャラリーはさながら光の箱の様でした。

今日は、横河設計工房の国枝さんにアトリエで建築模型を見せて頂きました。国枝さんはじめ若いスタッフの方々がそれぞれに担当された現実の建物を想像しながら楽しい時間を過ごさせて頂きました。

 

 

 

 

YUI GARDEN来週は、備前焼の天野智也さんの展示です。光に反射して淡く空間に溶け込む様な絵画から、土のどっしりとした個体の作品へと変わる空間の変化も楽しんで頂けると感じます。

天野さんは今年で7回目となりますが、私の様な陶芸の世界の素人にもその力量が解る様になって来たのでは、と僭越ながら思います。

建築の世界にも繋がるシンプルな構成的な作品も含まれており、ご本人のお人柄と相俟って、年月を追う毎にどんどんファンを増やしております。

シンプルな事と味わいのある事とが結びつくのは、逆説的ですが、多くの素敵な作品に当てはまるのではないかと思われます。

七年前に岡山市でご活躍のギャラリスト薮多門さんから、備前の若手で素晴らしい作家がいるのでぜひご紹介をしたい、と伺った時には、いつか大好きな備前焼の展覧会を開催したいけれど、何の情報もなく雲を掴むかの話だった私には本当にありがたく、即答でお返事させて頂きました。今となりましては藪さんには本当に感謝です。

 

 

 

 

 

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/amano_14.html

 

 

2014.07.04:金曜日

 

 

木村かほる 

 

ずいぶん久しぶりのブログ更新となります。妹、木村かほるの個展・・・far away・・・、その前週には守屋文典個展、と、奇しくも水丸さんの後輩にあたる作家の発表が続き、日芸に縁のある日々が続きました。

二人とも日大芸術学部の油絵学科卒業で、デザイン科で大先輩の水丸さんと知り合ったのは社会に出てからの事ですが、水丸さんにはずいぶんお世話になりました。

また、油絵学科の主任教授で、美術学部長であった中谷貞彦先生と妹とは年令の離れた仲良しで、デザイン科卒の劣等生代表の私も含め不思議な三人組での東京のレストラン食べ歩きツアーはずいぶん長い間続いておりました。そんな三人組の中に水丸さんが加わられた事もありました。

水丸さんにも教鞭を取られた事のある中谷先生は、ダンディでインテリジェンスに溢れていて、ジャンルを超え水丸さんに影響を与える程、自由な精神の方でした。当時の美術学科の受験では、デッサンの上手さよりも線の勢いを見る、と伺った記憶があります。デッサン偏重の受験体制に疑問を呈していらした水丸さんと中谷先生が重なります。

日大芸術学部は、楽しい学校でした。高校三年の一月に無理矢理進路を方向転換し、無謀な受験をしてようやく補欠合格した史上最低な美大生だった私は、悲惨な実力のまま新入生として授業を受ける事となりましたが、そんな私よりもデフォルメの激しい面白いデッサンをする人もいたりしてびっくりしたのを思い出します。一方で相当に力量のある学生達もいて、そんなデコボコな感じも自由な雰囲気を盛り上げていました。

自分の出身校について、あまり考えた事がありませんでしたが、同級生の建築家の横河健さんとYUI GARDENを通して一緒に仕事をするようになったり、水丸さんの愛校精神が何だかとても嬉しい感じがしたり、と最近不思議と日芸との縁を感じる日々です。

とは言え、どこに行くのか何を勉強するのかもまるで解っていなかった私をむかえてくれるのは、この学校しかない!という感覚はかなり以前から持っていて、本当は大好きだったのかも知れません。

 

 

守屋文典 

 

守屋文典さんは、妹より一学年上でその学年トップの成績だったそうです。思慮深く、端正な作品は本人の姿勢そのものの様に感じます。スペースユイが歩き始めた時からずっとお付き合いさせて頂いておりますが、文学青年風な佇まいとその作品からは清潔な怜悧なそれでも優しい風が吹いて来るかのようです。

一見ロットリングで描いた様に見える線も、実は面相筆で息を止めるようにして描いており、見る人は驚かされます。柔らかな水彩の画面に筆で描いた墨のラインが緊張感を持って、時には可愛らしくもあって、平面表現の快さを感じさせられるのです。

 

 

守屋文典 

 

 http://old.spaceyui.com/schedule/moriya_14.html

 

 

また、妹、木村かほるの作品展では、解りづらい抽象作品であるにも関わらず、多くの方々に理解を得た事もありがたい事でした。喘息の為に油絵の具が使用できなくなった事で、画材変更を余儀なくされ随分悩んだ時期もありましたが、最近では自由に表現ができるようになった様です。空間が重なって表現されている事をたくさんの方々から面白く感じて頂けましたが、二つの真逆な興味深い批評を頂きました。

空間だけでなく、時間の層も閉じ込めようとする人間の業の深さを感じる・・という批評と

人としての、悲しみや暗さ等が感じられない・・・、という指摘の両方が面白かったです。

また、YUI GARDENの若き建築家の義山さんが書いて下さった妹の作品への批評が素敵でしたので、こちらに掲載させて頂きます。彼の視線と文章がいつもとてもフレッシュで楽しく読ませていただいております。

 

「TOKYO BABEL」「TKYO 赤ずきん」「TOKYO」

「SNOW MOUNTAIN」「廃墟と蝶」「CYCLE」

「ICHTYS Ⅰ 」「ICHTYS Ⅱ 」「FAR AWAY」等の

タイトルの作品を約20点展示しております。

 

抽象表現を追求した絵画・・という風にも見えるし、

構成の「図と地」で見てみると、必ずしもそうではなくて

形(具象)が色・彩色表現を引き立て一つのトリガーに

なっている印象もまた受けました。

形は円や矩形、時には家型。それらは全体の持つ淡い色彩の

流れの中で描かれ、関係が逆転するモノではなく、

作品の持つ空気感を纏ったオブジェが見え隠れ、

目に写り込んできます。

 

タイトルに着目してみても興味深く、単に作品の印象を

言葉で表す事以上に、木村さんの想い・世界観が文字に

現れているようで、

図・地・言 3つの関係で作品を見てみても良いかもしれません。

 

 

 木村かほる  “TOKYO BABEL”

 

 

http://old.spaceyui.com/exhibition/kimurakahoru_14.html

 

 

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