Monthly Archives: 4月 2021
2021.04.27:火曜日

 
 

 
 
アベヨシコさんの作品は「quatre chambres Ⅱ -4つの部屋-」というタイトルのように4つの描き方に分かれています。シルクスクリーン、油絵、立体、ミクストメディア、と見応えがたっぷりです。
アベさんは、感じ取った景色や気配を、素早く色彩に、そして形へと画面に乗せて、ひとつの作品を創り上げます。アベさんの感覚によって瞬間的に捉えられた、生活空間の中でのモチーフたちが可愛らしく軽やかに作品として誕生し続けます。
技法は違っても、矛盾する事なくどれもアベさんの世界観であり、言葉では現しきれない美術的なエネルギーがほとばしるように伝わって参ります。
小さな油彩画たちは、ポップな軽やかな楽しさがいっぱいです。
平面作品のコラージュ、またマットなタッチに着彩された紙の立体オブジェを混えたコラージュ作品も、今回の展覧会では、白いボックス型の額の中でエネルギーを放っておりました。
具象、抽象、折り混ぜながら自由な表現形態で描き続けるアベヨシコさんの、湧き出でるクリエイティビティーは、驚くべきパワーで息づき続けております。
アベヨシコさんの作品制作にはスピード感があり、そのため作品の分量もたいへんな数がありましたが、今回の個展会場では先述の4つのカテゴリーに分けられて、見易くメリハリのあるレイアウトで展示されました。
瞬間的な勢いを必要とする作品を描く作家さんの場合、その方自身の調子の波があって、タイミング的にその感覚を掴んで創作に臨む、という事を良く聞きますが、アベさんは何時どんな時でも安定していて、調子の波はないそうなのです!
豊かなエネルギーいっぱいのアベヨシコさん、未来を感じさせる、これから生れる作品たちを見るのが本当に楽しみです。
 
 

 
 
http://old.spaceyui.com/schedule/yoshiko-abe-2.html

2021.04.16:金曜日

 
 

 
 
あだちのりふみさんの「にこまんが2」、一見ゆるやかなキャラクターが登場してニンマリとした笑いを誘いますが、悩めるキャラクター君たちは自分自身へと淡い哲学的命題を投げかけます。                                 
二コマに分けられ物語が紡がれた規則正しいスペースからは、長年培われた揺るぎのない作者のアートディレクターとしての力量が生きていることが感じられますが、全編にわたり、二つの抽象的なものたちに引き裂かれているキャラクターの悲喜劇が展開されているようです!                                   主人公は、実際に身体がふたつに裂けてその後身体が戻って来たり、投げかけた命題に対して、納得したり答えは先送りしたりと忙しい。                                    まんが画面の中で主人公が呟く疑問符は、二律背反として矛盾状態のまま提示されているのか、パラドックスとして帰結されるものなのか渾然としており、観る者を困惑させます。まるで悩めるあだちさんの個性そのもののように・・・。                       
そして、あだちさんは、そんなご自分の在り方を実は楽しまれているのではないかと思っています。
 
 
■2回目の「にこまんが展」について■
 
初日に来ていただいたお客様に、かつてデザインの仕事でイラストをお願いした方に、 35年ぶりにお会いしました。
 
その方曰く、「これってパントマイムですね・・・」
 
その方は昔パントマイマー経験があり、にこまんがは同じ(似てる)考え方だという。 パントマイムは動き(テーマ)の始まりと終わりがあって、 その間をつなぎの(面白い)動作で埋めていく過程が、同じ(似てる)といった事らしい。
 
確かに「にこまんが」は動きの間でもある・・・
 
または、映像の作りにも当てはまる、例えば、パン (Pan) は、映像の撮影技法の一つ で、
カメラを固定したまま、フレーミングを水平方向や垂直方向に移動させる技術。
 
にこまんがで描いてきた「間」は、気分や感覚だと思ってたが、動きや、瞬間でもあっ
た事に今回改めて気づかされました。
 
言葉の「間」、絵の「間」、時間の「間」、瞬間という「間」、永遠という「間」・・・
 
またしばらくは、この「間」というものを、追求していこうかな・・・とも思ってます。
 
2021年4月10日 足立紀史
 
 

 
 
http://old.spaceyui.com/schedule/adachi2021.html

2021.04.09:金曜日

 
 

 
 
白の器は、どんな家にもレストランにも、普通に何気なく、また様々な佇まいで存在しております。ツルツルした表面のシンプルな物、工夫を凝らした工芸的なお皿、私の家にも色々な表情をした白い器があります!
そんな中で、高橋春夫さんの器の出番はほとんど毎日のように忙しく働いて下さいます。まず、形が自然で美しくて、表面の風合いに独特の味わい深さがあり、何と言っても使い勝手が素晴らしいのです。自分の作る大したことない料理でもおしゃれなご馳走に見えて嬉しくなります。
今年は、黒い色の器も沢山登場し、新しいセンスが加わりました。
今回、何故か黒のマグカップでお味噌汁が頂きたくなりました。この無意識の好奇心は自分でも使うまで分からなかったのですが、形のバランスがお椀的だったこと、そして黒のエナメル質の感じが漆っぽかったからだった様です。使っていて、何だかとても楽しいのです!
こんな風に日常的に何気なく登場する高橋さんの食器を使う楽しい時間を、皆さんにも味わって頂きたいな、と心から思います!
 
 
高橋春夫さんの器は白くて台に置いてディスプレーする作品ばかりです。それにいつも比較的作品の分量が少なくて、視力の弱い方(自分もです)が外からギャラリーを見ますと、時々空っぽの空間に見えることがあります。
そこで、以前から素敵な銅版画を制作していらっしゃる山田ミヤさんに高橋さんとの二人展をお願い致しました。
高橋さんと山田さんは、全くお互いを知らない同士ですが、作品の相性は本当に良くて、おかげ様でとても素敵な展覧会を開催することができました。
山田さんの銅版画は二色刷りの方法で創られていて、その二つの色の掛け合わせた部分とそれぞれの色の部分のバランスがとても美しく感じられます。
繊細な線描を、二色に分けた”刷り”で全体の色彩表現をされていて、制作にはたいへんな集中力が必要と思われます。同じ版の版画でも、二度と同じ作品はできないそうです!
そして、花々や小鳥たちをグラフィカルな構成で表現された作品は、思わずお部屋に飾りたくなります。
来年も同じ時期に二人展を開催させて頂く予定ですので、是非皆様にご覧頂きたいです!
 
 

 
 

 
 

 
 
http://old.spaceyui.com/schedule/takahashi_yamada.html

2021.04.05:月曜日

 
 

 
 
DMのための画像が送られて来た時に、そのアマリリスの花の絵を見て、民野さんの心境の素敵な変化を感じました。
札幌から民野さんがいらして、搬入が終えた後、その疑問をストレートに伺ってみました。民野さんのお話によると、湖の見える道東にある民野さんの知人の小さな家にアトリエ替わりに数日滞在した時の事、窓から見える緑の木々を描いていて、急に絵の描き方が自由なものになった感覚を掴まれたとのことです。作品画面と筆の触れ合う中で、絵の具の用い方が今までの方法に捕われなくなったのだそうです。
約30年の間、ほとんど毎年個展を開催して下さる民野さんですが、時々新たな貌を見せて下さいます。
私がギャラリーを始めた理由は、「自由」というキーワードに尽きるような気が致します。背景に節度を持った自由である事は述べるまでもありませんが、表現する事においてのカテゴライズやスタイルから解き放たれたギャラリーにしたかったのです。
そして時代は、どんどん変わっていきますから、ギャラリーの在り方、絵画やイラストレーションもクオリティーは揺るがないものでありながらも、メディアと共に歩んで行く方向にしよう、と考えていました。絵画も彫塑も純粋な美術ですが、システムをイラストレーションのようにメディアに乗せ、広げていくべきと思っていました。
時節や流行や、また逆にマンネリズム的方向からの影響から離れて、言葉や他のどんな方法でも表せない表現としてのヴィジュアライズされた作品が素敵だな、と感じます。
民野さんを始めとしてそんな風に思っているクリエーターは案外大勢いて、彼らはとても自由です。
でも、そういった作家たちと一緒に仕事をし、広げて行く事に携わるメディアやお仕事の関係の方々の中には、本質的なものとは関係のない様々なファクターから離れられず、目には見えづらいけれど一番大切な感性を見逃している感覚を時に感じます。
魅力的な大きな力を持った作家さんの作品よりも、気軽に使い易い作品をメディアに掲載する傾向が続いていたら、美術というものの力の持つエネルギーの無駄使いになると思います。
私は、自分のギャラリーを支えている志が間違ったものなのかも知れないと悩んだ時期もありましたが、民野さんのような作家さんの作品、そして温かな気持にさせられる作家さん自身とギャラリーとの絆を考えますと、決して間違っていなかったと今では思えるのです。
そして、現在では作家がSNSを駆使し、自身もメディアを持つ時代となりましたが、彼らはその分野ではプロフェッショナルではありません。素晴らしい雑誌や書籍や広告関連のお仕事に携わる方々には、素人メディアの方々に負けない、充実のお仕事、期待しております。
親しさに甘え、民野さんの展示についてのページを借りて私事を述べてしまいましたが、民野さんご自身はずっと理想的な形でのお仕事を続けられ、カミユやサルトルの著書の翻訳物の装幀、トルーマンカポーティや現代作家の表紙も飾ります。何と言っても一番印象的なお仕事は、「わたしを離さないで」=カズオ・イシグロの表紙のイラストレーションです。昨年惜しくも亡くなられたアートディレクターの坂川栄治さんが来られて、打ち合わせをされていた情景が今も目に浮かびます。
毎年、民野さんの個展が近くなるにつれ、多くの民野さんファンの方が感じていらっしゃるに違いない、懐かしく温かなものが心に宿ります。
 
 

 
 
http://old.spaceyui.com/schedule/tamino-hiroyuki-2.html

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