毎年、この季節になると、天野智也さんの個展が待たれます。
早いもので、ずっと備前の陶器展を望んでいて、やっと巡り会えた備前の作家さん、天野さんの個展を楽しみながら開催していく内に今年で9回目、来年は10周年を迎えます。
岡山のギャラリーの方から優秀な若い作家さんをぜひ東京でもご紹介して下さい、とお話があって、開催を始めた頃にはまだ青年の面影の天野さんでしたが、とても立派な風格ある作家さんになられました。
独自の個性を保ちながら、毎年新しい作風のかたちを創りだされていく天野さんの作品を毎年心待ちになさっている方がたくさんいらっしゃいます。
使う方の立場を完璧に追求し技術を極めながらも、じわりと心に響く美しい器は、それらを使う人々の心を捕まえてしまうようです。シンプルで温かな味わいがあります。
その作品は天野さんのお人柄と同様に、自己主張を抑えた控えめな作風でありながら、知らずと人々を魅了してしまうパワーに溢れています。
下記に天野さんご自身に書いて頂いたコメントをご紹介させて頂きます。
自然土になにも加えることなく、ただただ焼締めるヤキモノ備前。
この単純でありながらも、炎で変化したモノの奥深さに魅了され作り始めた器たち。
土掘りから原土精製、制作工程を通じてその土の特性を分析研究し、
より美しい天然色の色合い、自然の大地を想わせる質感など、
瑞々しい表情が作品に映し表わせるよう制作しています。
器は脇役。そこに盛る料理や草花などがより生きるためのものでなくてはならない。
それらを包みこみ、器もより生き、作品となってゆく。
私の器を使う方が、ごはんを食べるとき、お茶を飲むとき、花を愛でるとき、静かな幸せを感じられる‥そんな作品を作りたいと願っております。
備前 天野智也
焼物を始めた若かりし頃より、備前に魅かれ岡山に移り住んでから
幾人もの方がご縁を繋いで下さり、スペース・ユイでの展覧会も回を重ねさせて頂いております。誠にありがとうございます。
私を推薦ご紹介頂きました、Galeria Puntoの籔さん 快くお引受け下さった、ユイの木村さん
本当に感謝しております。また作品でお応えするべく作り続けたいと思います。
http://old.spaceyui.com/schedule/amano_16.html
竹井千佳 きらきらブルー
元気に現代を生きる当代女子を描いたら、右に出る者はいないのでは、と思わせる竹井千佳さんの作品展でした。ご本人がすでに絵の中から出て来た様な佇まいです。
しかし描き出す世界は視野が360度。可愛らしい女の子の表情の中にも、苦かったり、醒めた眼差しがあり、イタズラッ子のキュートさが、あったりと・・・。
描かれる作品の個性が個々の人物の中に凝縮されていたり、ひとりの中に併存していたりと、鮮やかな色彩のポップなカワイイ作品の中に、何とも味わい深い包容力が感じられます。
今、伸び盛りのご自身の仕事では、その舞台は通常のイラストレーション媒体を超え、自由に軽やかに羽ばたきます。
最近のお仕事、NHKの番組「ガッテン」では、番組全般に散りばめられた千佳さんのイラストレーションと軽やかななヴィジュアルデザインが楽しめます。
その他の仕事でも哀愁漂うおじさん、そして少女達から、カワイクもしたたかな女の子の表し方まで、守備範囲の広さと感性の懐の広さには、本当に驚かされます。
また、作品画面からは、鮮やかな色彩を抑え気味に表現された日本画的な繊細な風情も感じられる等、多面的な魅力をたたえた竹井千佳さんの作品展でした。
以下は、竹井千佳さんの文章です。
今回の個展は時期が梅雨の時期で紫陽花も綺麗なのでブルーで会場を埋めたくなったのが始まりでした。
正直、制作時間があまり無かったので考える時間が無かったのですが、それがかえって今まで積み重ねてきたものを素直に表現できたと思います。
お越しいただいた方にも喜んでいただけて、改めて自分がこれから何を描いていくべきか気付かされました。
今後もワクワクする作品を作っていきたいと思います。
http://old.spaceyui.com/schedule/takei_16.html
あずみ虫 「恋愛小説」
今年のあずみ虫さんの個展「恋愛小説」では、軽妙な鮮やかな色彩は常ながら、あずみ虫さんの新しい側面を見せた作品がギャラリースペースを充たしました。
薄いアルミ板をカットし着彩する作風は、その技法の結果として抽象化や省略化されたシンプルな顏が表れるように感じます。その様な技法にエロスの世界を載せての表現は、存外に適っているかも知れません。作家のエッジの効いた挑戦が軽やかにポップに切り取られ差し出されます。
あずみ虫さんの師であった水丸氏がそうであった様に、一人の人の中に秘められた様々な側面である、エロティシズムも可愛らしさや爽やかさもそれぞれに表現、まるで何人かの人格が一人の中に矛盾せず存在するかに思える個性は、お二人に共通するかも知れません。
生前、エロスの作家と自らを称した金子國義氏を尊敬する、というあずみ虫さんは、今回の展示で大きくひとつの方向性を見せて下さいましたが、今後の展開が増々楽しみです。
金子さん、本気か冗談なのか、いつでも巻頭句の様にプレスリリースのお名前の前に「エロスの作家」と、書かされた事等思い出します。
http://old.spaceyui.com/schedule/azumimushi_16.html
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