松川けんしさんの作品からは、一種の苦みを含んだ哄笑が聞こえて来そうです。悪意さえも剽きんにかわしたり、ない交ぜにしたりして上手に料理し、もうひとつ味わいのあるものに昇華してしまいながら・・・。
今回の展覧会のタイトルも最初に見た時には、一体何の事だろう、と思いましたが作品を前に、松川さんが何を表現したかったのか朧げに理解する事ができました。
「脳天は壊了か」という一瞬目が覚めそうなタイトルです。壊了という言葉も初めて知りました。表現豊かと言ったら良いのか、意地悪なのか、何とも松川さんらしいタイトルと思います。あらゆる事象への諦念からのエネルギッシュな出発なのでしょうか。壊了よりも建設の力をむしろ感じます。
往年の芥川賞作家、吉田知子さんの作品タイトルから引用されたそうですが、今回の展示のコンセプチュアルなタイトルとして、たいへん秀逸なものに感じました。そして松川さんご自身の脳天はまだまだ壊了していない様子、安心致しました。
松川さんは酒飲み仲間が大勢いらして、皆さんとの愉快な会話が飛び交いますが、偽悪的で実はシャイな松川さんを皆が愛情を込めて見守っておられる感じが伝わって参ります。
http://old.spaceyui.com/schedule/matsukawa_15.html
松川けんしhp
甲斐荘暁子さんの作品には、いろいろな多くの思いが込められていると感じられます。
ご自身は、作品についてを語らない作家さんですが、光や水の色を取り込んだ色彩の作品は、マチエール豊かに生命のリズムを唄い上げているかの様、とても饒舌に魅力的です。作品から人々の声や歌声、鳥のさえずりや樹々のざわめきが聴こえて来そうです。レイヤーのかかった様に感じる重層的な作品の構成からも、様々な楽器の奏でる音楽を感じてしまいます。
視覚表現の中に、音楽的なものや画材から覚える触覚的なテクスチュア感覚、言葉には表せない感性をこれほど豊かに情感を込められる力量に感嘆しております。
甲斐荘さんの全ての作品が、ポップで、明るく楽しさに満ちておりますが、この世界を飛び越えて、次元の狭間を見つめ表現をされている様に感じます。
平面作品の他に鉄素材を用いて制作したオブジェも多数展示致しました。重量のある、労を要する熱い鉄と取り組みながら、軽やかな見応えのある作品を創りました。
甲斐荘暁子さんは、感性の織りなす言葉には表す事のできない詩情あふれる世界観を見事にビジュアライズされていると思います。
http://old.spaceyui.com/schedule/kainosyo-15.html
甲斐荘暁子 hp
佳作の揃った「少女小説」展、終了致しました。(SPACE YUI)
現代地球上で興ている不思議ワールドは、私たちが現実に生きる日常のスペースにも相似形で表れます。
自明の理で正しくない事が、白昼堂々と決定されて行き、TVや雑誌では、私たちがもっと美しくできる舞台装置をわざと醜い物で充たしている・・。
人々の承認もなく流れていく、私たちにとってそんな筈ではなかった不合理の数々を、未来を生きるこども達は、どんなこころで受け止めるのでしょうか?
シフトを変える事ができるのは、ジャーナリストでも政治家でもないのかも知れません。
文化はもっと成熟している予定だったし、すでに到達していた世界すら破壊されてしまったかもしれない。
そんな世界を少女達は知っていて、そのような少女達だけが解読可能な未知の暗号を解く鍵を持っているのではないか?という希望を込めた企画展でした。
YUI GARDENの美しい環境の中でご覧になっていただけたらとても嬉しいです。(7/13~)
http://old.spaceyui.com/schedule/shoujoshousetsu_15.html
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