2017年の小池アミイゴさんの展覧会では、ペインティングのタッチもなめらかに、花々も、遠く臨む海や浜辺の状景も、より優し気に心情のこもった作品の数々が展示されました。
やんちゃな少年がそのまま大人になったようなアミイゴさんのことを知らずに作品を見られた方は、小さな花や風景作品のたおやかとも言える優しさと作者のイメージとが重ならず、少なからず当惑なさる様子でした。
2011年3月の震災直後からの作品創作やブログ、フィールドワーク等、小池アミイゴさんの活動の全体像を見て、彼の作品を紹介し人々に広めて行くのは、その時の自分の義務のように切実に感じた記憶が、昨日のことの様に思い出されます。
被災地への思いを作品の制作だけでなく実際の行動でも表すアミイゴさんの作品からは、被害に合われた方々への共感や亡くなられた方々への追悼の思いが、同じ国に住む者として自然と湧き上がるように思います。
2012、2014、2015年と東日本をテーマにした展覧会を開催させて頂きましたが、4度目となる2017年は、絵本「とうだい」(福音館書店より出版)という新たな視点も加わった展開の展覧会となりました。
人々との関わりや活動の中で培われて来たアミイゴさんの技術と感性には目を見張るものがあります。
そして作品を提示することにより、人々から更なるエネルギーを受け、より普遍性を帯びた作品へと進化を続けて行くことを確信しております。
アミイゴさんご本人の素敵なコメントを以下にご紹介致します。
↓
yuiで4度目の開催となった展覧会「東日本」が終わりました。
展覧会明けの今朝、絡まった言葉をほぐすつもりで、代々木公園をユックリ走ってみると、冷たい空気の上に乗っかった東京の空は、朝日をやわらかくまとった灰色の雲に覆われ、そこに冬枯れの木々の枝が黒い筆致で複雑な模様を描いていました。光の変化で刻一刻と変わってゆく風景を愛しいと思い、センチメンタルな気分にも浸り、結局10kmほど走り続けた2017年1月19日の朝です。
そんな風景に心をを奪われるのは、yuiで出合ったお1人おひとりの言葉に触れたからです。
4度同じタイトルの展覧会を開催し、足を運んでくださる方からいただく言葉を、より確かなものと感じた今回。
昨晩家に帰ると「作品は観衆がそれを見に来て、自身の解釈を付与して初めて完成する。そして、その芸術作品は、そこに至るまでのグレーの領域を表現しているんだ」なんて言葉に出会いました。昨年亡くなったデビッド・ボウイが遺した言葉は、ボクが作ったyuiの空間を明快に言い表してくれたはずです。
yuiへの搬入から設営の後、作品の並んだ生まれたばかりの空間の中に立ち気がついたのは、「ボクは絵に向き合ってくれる人のことを思いっきり信頼して描いたんだ」ということ。
ボクはなにか描いたけれど、それを絵に育ててくれたのは、寒い中yuiまで足を運んで下さったお1人おひとり。そこからまた力をいただいたボクは、次の場所を目指し灰色の荒野を歩けるのだと思っています。
毎回展覧会の最終日には寂しさを感じたものですが、今回は「次」という気持ちが大きく勝ると共に、「ボクはまだなにも描けていない」という気持ちでもいます。
2011年3月11日の夜に「これは10年、20年とかかる事態だ」と直感したことは、今も明快にボクの中にあり、ただこれまでとは違い、心に多くの並走者を得たはずの4度目のyuiの時間。
あらためて、みなさん、寒い中足を運んでくださってありがとう。LOVEです。
毎回「アミイゴくん、お願いね」と呪文をかけてくる木村さん、ありがとう。
今回の展覧会に至る最初の部分で、画家のやまぐちめぐみさんの早逝に出会い、彼女の遺した作品を整理しタンバリンギャラリーで展覧会を開催するまでの仕事をしました。
彼女の生きた証は、ボクの制作のハードルを思いっきり上げるもので、なんつーか「負けてられねえ」って気持ちで今回に臨んだこと、最後に記しておきます。
ひとりで見ることの出来るものには限りがあります。
しかし、です。
小池アミイゴ
http://old.spaceyui.com/schedule/koike-amiigo_17.html スペースユイhp
http://www.yakuin-records.com/amigos/?p=12832 小池アミイゴhp
田村セツコ
矢吹申彦
竹井千佳
Winter Magic「冬の魔法」は、田村セツコさん、矢吹申彦さん、竹井千佳さんという、不思議な組み合わせの三名のアーティストによる魅力的な展覧会として、2015年より開催させて頂いている企画展です。
昨年2016年のクリスマスシーズンにも、 「Winter Magic 冬の魔法vol.2」 というタイトルで楽しい展覧会が開催されました。
飽くまでも端正な矢吹申彦さんの作品の、諧調の美しさともいうべき佇まいには感銘を受けずに居られません。その画風は、ペインティング作品としての思慮とグラフィック感覚のクールな軽やかさが拮抗して独特な静謐な世界観を創りあげていると思います。
しんしんと白い雪が降る情景が描かれた作品は、見る人々の心を静かに温かく包み、想像力を刺激します。
また、田村セツコさんと竹井千佳さんは、魅力的な少女たちを描く方で、ご本人達も偶然の出会いではありますが、ベテランと若手を代表する永遠の少女である様に感じます。
そんな田村セツコさんには、お会いする度に癒されておりますが、まるで出会う人々を笑顔にしてしまうDNAが組み込まれているかの様です。
竹井千佳さんも、そこに居るだけで周囲がぱっと華やぐ陽性なパワーに溢れた方で、作品といっしょに本人もたいへん見応えある方です。
新旧を代表する、少女を描かせたら当代のお二人と、端正なダンディズム溢れる矢吹申彦さんの三人の組み合わせは、偶然とは言い難いものがあるのかも知れません。
http://old.spaceyui.com/schedule/tamura-setsuko%E3%83%BByabuki-nobuhiko%E3%83%BBtakei-chika_16.html
オカダミカさんの久しぶりの個展が好評のうちに終了しました。タイトルを「東京」に決めたと聞いた時に、皆に共通な「東京」をどんな切り口で表現するのかと、たいへん楽しみでした。
オカダミカさん、元来、温かさを周囲に振りまき、明晰で、ファッショナブルな存在感溢れる素敵な方ですが、作品は、ご本人の印象とひと味異なります。
様々な表現方法をひとつの画面に巧みに使い分けながら、バランスの取れた光の溢れる一枚の平面作品として仕上げている中で、登場する人物(主に女性)の視線が強く記憶に残ります。ノスタルジー、都会的なクールさ、無表情、そこはかとない諦観や哀感、といった感情を喚起する言葉が浮かびますが、そのどれでもない感じ、或はそれらを全て包含した感覚。
淡々と状景を描き分けている中で、目の部分だけは有機的に生きている命を持つけれど、マスクから覗いている視線の様にその心情は見えず、謎めいています。
名状し難いその感覚への答えは、ミカさんから送られた下記の文章にある様に思えます。それこそ皆に共通な存在の内奥へと繋がって行く、創造のバックボーンを感じました。
↓
いろんなタイトルを思い浮かべる中
ふっと、残ってきたものが「東京」という言葉だった。
その時浮かんだものの中で一番大変そうで、一番どうなるか想像がつかなかったけれど
今の自分だから思いついた事な気がして、やってみたいなと思った。
今までは空間に人物をポンと置くことでその周りの空気感や温度や色
そんなものが画面に滲み出ればいいと思ってきたのだけれども
今回は背景に街を描く事で、同じ事を表現できたらいいなと思った。
背景を描いてはいるけど、私が描きたいのは風景でも街でもなく
自画像でもなく誰でもない
デジャヴのようなものなのかもしれない。
ただそこに立っている、そしてその場所は実在している
それが自分にとってはとても大事な今回のルールのようなものだった。
一枚の絵にこんなにしっかりと背景を描く事は初めての事で
自分でもどこで筆を置くのかさっぱりわからず
不安ばかりの作業になってしまったけども
だからこそ、今までにはないものが見えてきたり感じられたりして
今思えば楽しい貴重な制作時間だったと思う。
そして何を描いても自分が描きたいものってなんか変わらないのだな…と再認識できた気がした。
スペースユイという空間や来て頂いた方々に
自分の今踏み出せる一歩に立ち会ってもらったような気持ちになっています。
感謝をこめて
オカダミカ/micca
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