岸田ますみさんの作品画面からは、圧倒的な空気感が感じ取れます。大地を流れる風、雲。海と空も、草原と空も、同じ色を纏い合い、或る時には異なる表情も見せて、全てが一体になったり、分離したりしながら、私たちを取り巻く存在とその不思議さを呈示するかの様です。
一体にグレイッシュな色調や人気のない風景は、孤愁の感慨を呼び起こすと同時に、何か言葉にはならない刺激的な心地良い風が吹き抜けているかに思います。
1987年にスペースユイで初めての個展を開催された時には、明るいシンプルな色感と構図の静物画が多く、写真の今回発表された小品の油彩画からは岸田さんの当時の作品を想起させられます。これらの作品はまるで、夫君である安西水丸氏の作風にリンクしているかに見えますが、こののびやかな線は初期の頃の岸田さんそのものです。
2回目の1989年の個展以来、現在に繋がる、岸田さんの思索的な色感の作風は一貫しておりますが、沈静した感覚の色彩群の中に出現した鮮やかな油彩画が、とても意外であり、またフレッシュな印象を受けました。
今年の3月、突然水丸さんが逝去され想像に難くない思いをなさっておられるにも関わらず、ご苦労を微塵も感じさせない岸田ますみさんの作品展は、感動的な一週間でした。
http://old.spaceyui.com/schedule/kishitamasumi_14.html
田村愛さん、京都の大学や専門学校で教鞭を取りながら、毎年個展を開催するがんばり屋さん!もうまなちゃん、とは呼べない位に学生さんたちにも信頼の厚い田村愛さんです。今回は、体調があまり良くない中で、本当に良く頑張ったと思います。もうすっかりお元気な様子ですが、田村愛さんの小柄な身体から生み出される誰よりも大きな作品が、今年も展示されて感動致しました。シルクスクリーンをプリントする作業は、体力も精神力も要する事と容易に想像できますので、毎年の田村さんの大作への挑戦には頭が下がります。
紙にもファブリックにも自由に何でもシルクプリントができる田村愛さんの、制作への熱意には、並々ならぬものが感じられます。
また、今年の作品には、普段よりも濃い目の色感新たな側面も表現されておりましたが、持ち味である作品の透明感は少しも損なわれず、改めて田村さんの力量を感じました。
http://old.spaceyui.com/schedule/tamuramana_14.html
イギリスからのジョン・シェリーさんの展覧会は、2年ぶりの夏の開催でした。前回は「ジャックと豆の木」の原画を、今回はミケランジェロがダビデ像を制作する迄を描いた「巨人の影に」の原画を展示致しました。
シェリーさんは、ずっと以前は広告の仕事をメインでなさっておりましたが、徐々に絵本の制作へと移行して参りました。
彼の、オーソドックスな絵画的描写力を軽妙なタッチにギアチェンジして行く個性や現実的な物をアーティスティックにまた、カリカチュアなセンスを込めて描いたりといった、インターナショナルな意味での絵本作家としての資質を以前から感じ入っていたものですから、シェリーさんがコンスタントに日本やアメリカの出版社でクオリティーの高い絵本を出版する様になられた事をとても喜んでおります。
また同時に、常に時代の風を纏い、ファッショナブルな感性を併せ持つシェリーさんにとって、コマーシャル等の仕事も天性の才覚があると思います。
2012年に「ジャックと豆の木」の展示の時に、ミケランジェロのまだ彩色してない段階の作品を見せて頂いた事が今回の展覧会へと繋がった時の様に、今回はシェークスピアが主人公の絵本のラフスケッチを見せて頂き、とても大きな驚きと感動を覚えました。シェークスピアを核にして、当時の人々が演劇や実際に演劇が繰り広げられる劇場とどの様に関わり歴史を築いて来たのかという事がとてもわかる表現でした。特に当時のロンドンの建築物が日本の歌舞伎や神社の形態とも通じる感じが興味深かったです。
次回は、2016年の夏の開催になりそうですが、シェリーさんの来日に際しては、彼の優しい眼差しと共に在る深い人間洞察やインテリジェンスに触れる事のできる楽しさに満ちたものであり、日本の友人達も最早心待ちにしておられる事と思います。
お嬢さんのセレンちゃんとクロネコとのイギリスでの暮らしも、いつかシェリーさんの手によって絵本に描かれたら、どんなに楽しく親密感溢れるものになるでしょう。
http://old.spaceyui.com/schedule/johnshelley_14.html
SPACE YUI hp
http://shelleyjapan.blogspot.jp/
John Shelley: blog
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