舟橋全二氏の作品をいつも眺めています。仕事場でふと目を上げると小さな壁に掛けた爽やかなグリーンの果実のメタル作品が、緩んだ脳みそに涼風を運んでくれるのです。
今年も舟橋全二展が好評のうちに終りましたが、終えてしまう事が残念で名残惜しい、そんな感情を呼ぶ作品展でした。
何方かが、舟橋作品の輪郭のラインは、宇宙のリズムに沿って創られているもので、地上の筋道で作られているのではないのでは?と申しておりましたが、何となく納得のいく言葉でした。
たった一本の線がたいへん美しく見えたり、見ただけで気分が晴れたりする美術作品というのはそんなにはないかも知れませんが、そういった力が作品の可能性として持ち得るのだ、という事の証左の様に感じた展覧会であり、若い作家の方々の励みになったのではないかと思っております。
気配や色彩、音や香りといった身の回りにある何でもない感覚的なものを人は常に感じ取り、意識せずに無意識の世界へと運び込んでいるのかも知れません。恐れずに良き感性だけをたくさん吸収して行くと、知らない内に無意識の領域に蓄積されて、 ふとした時に何ものかが生まれるのかも知れませんね。
今年もシーノ・タカヒデさんの夏がやって来ました。いろいろなタイプのソウルフルな音楽が聴こえて来そうなイラストレーションやペインティングは、独特な感性が漲っております。描く事が大好きなシーノさんの作品の色彩は鮮やかに澄んでいて、筆後も人間味を感じさせます。
作風は、現実的なようでどこか現実とは遠く、シーノさんの楽園を描き続けている様に思います。
田村愛さんには一昨年まで、毎年夏の終わりから秋にかけてのこの時期に、毎年個展を開催して頂いておりました。
遠く京都から、小さな身体の愛(mana)さんといっしょに画廊いっぱいに広がる大作のシルクスクリーンが運ばれました。
具象、抽象表現が自然に混じり合い、飛び抜けてオリジナリティー溢れる愛さんの作品には鑑賞者の心を安らかにする力量があり、潔く、色感豊かな作品が展示される空間には、爽やかな薫風が流れるようでした。
空を見上げるのが大好きだった愛さんの視線の先には、自然と一体化された作品の空の色が重なっていたのでしょうか。
今年は、これ迄に発表したシルクスクリーンの作品の中から、ご家族の方々に選んで頂いた作品を展示させて頂きましたが、会期中には大勢の方々がお出かけ下さり、愛さんの人柄とその才能とを偲び、夭折された愛さんへの残念な想いをご家族の方へと告げられました。
これからも愛さんの作品を皆様の心にお届けできる機会を持てます事を、画廊の人間と致しましては心から望んでおります。
また愛さんの恩師で愛さんをご紹介下さった京都造形芸術大学元教授の梅田美代子さんに、今回のDMのデザインをして頂き、温かな文章をお寄せ頂きました。
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愛ちゃんと一緒にユイを訪れたのは20年程前の夏だった。オーナーの木村さんは、まだこれからという若い愛ちゃんの背中を押してくださって、次の年にユイでは最年少作家としてデビューした。以降毎年夏の終わりの展覧会を目標に制作し続けてきた。制作することが彼女の生活であり、会を重ねるごとに独自の世界観と表現方法は昇華してきたように感じられた。
自分の目で見て身体で感じた景色を、柔らかな色彩と線で構成された画面からは、心地よい風が吹き、透き通った光の中を歩いているような空気感が漂っている。 18回目の展覧会。今ごろ空に憧れていた彼女は、頰に心地よい風を感じながら大空の光の中を自由に舞っているにちがいない。(梅田美代子)
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