島袋千栄
I want to be a PRINCESS プリンセスになりたくて…
島袋千栄さんの今回の作品展を、全てを抽象画にしようかと悩んでいる、との相談を受けました。島袋さんの最初の展覧会から素晴らしいペインティング作品をずっと拝見し続けておりましたので、驚いてしまいました。油彩画感覚のテイストも感じられる軽やかな表現の作品は心魅かれるものがありましたので・・・。
動物を擬人化した完成度の高い作品等、たいへん人気があり、ファンの方々の気持も掴んでいたので、何てもったいない、島袋さんの中に一体何が起ったのだろうかと思ったのでした。
二人でお話をして、今迄の画風の作品も抽象画の作品といっしょに展示する、という事に決まりほっと胸をなでおろしました。
会場ではまるで二人展の様にふたつのカテゴリーの作品が展示され、来廊下さる方々を驚かせましたが、何故悩んだのだろう?と思うくらいに普段からの具象の作品は、考え抜かれた完成度の高いもので訪れた人を楽しませて下さいました。
写真の女の子はコピーライターですが、医師や書店店員、数学教師、看護師等、様々な職業の女性たちの肖像画と共に彼女達の心の声であるエスプリの利いた文章が展示され、そちらにも才能を感じさせられました。
SPACE YUIのスタッフの頃の島袋さんも、常に前向きに生き生きとしていて、自分が作家であるにも関わらず、溢れる様なアイデアで画廊の企画をたくさん考え、(彼女のイラストレーション入りの楽しい企画書は永久保存です!)いつか実現したい!と思わされるものが満載でした。
抽象作品に関しましては、正直なところ、まだ良くわからないのですが、写真の魅力的な花の絵の様に具象との中間地点にあるものから全くの抽象的形態へと連なるものへと、だんだんに変化して行く様が、次回はどのようになるのだろうと、興味深く、期待を持たされずにはおりません。
http://old.spaceyui.com/schedule/shimabukuro_15.html
田村愛
散歩。
田村愛さんの作品を初めて見てたいへんな才能を感じたのは、まだ愛さんが学生時代のことでした。もち論、愛さんの今のスタイルはまだ出来上がっておりませんでしたが、単色の印象的なパターンの組み合わせの点々や線やいろいろな形の面の部分の構成から成る作品は、見た事のない新しい感性の息吹を感じさせるものでした。
学生の頃から完成度の高い個性的な作品を制作していた田村愛さんは、自分のつくりあげた作品のスタイルをその様式の中で何度も乗りこえて行く、というたいへんな課題を背負っている様に思えましたが、大らかに楽し気な制作活動で、毎年の展覧会を開催して下さっております。
田村さんは、シルクスクリーン版画の作家であり、ダイナミックな大作から小さな布のグッズ迄、全てを自分の手で自由にのびのびと制作をされています。
京都育ちの田村愛さんが京都のホテルで皿洗いのアルバイトをしながら個展を開催しておられた頃の事が既に夢の中の事の様に感じられます。
まだ幼さの残る学生の様だった彼女が、シルクスクリーン作品を教える専門学校や大学の教師になり、美しい自然環境の中、ナチュラルマインドな姿勢で制作活動を続け、個展も開催し続けます。
自宅から仕事場へと運転する車で向う道々の、樹々の姿や山々や大きく広がる空のすがた等の自然、普段の生活環境のそのものが、彼女の魅力的な作品にそのまま組み込まれ描かれているのです!
田村さんの立ち位置はイラストレーターではありませんが、キラリと光るものを内包した田村さんの作品をもっと々、装丁などの仕事にして頂きたいと願っております。
最近は京都にお友だちとnipoという小さなお店も実験的に出し大活躍です。京都にお出かけの時には、ぜひお訪ね下さいませ!
http://old.spaceyui.com/schedule/tamura_15.html
https://www.facebook.com/niporoom37/info?tab=page_info (nipo)
2011年3月の震災直後の小池アミイゴさんの活動を見ていて、ぜひ彼の作品と活動をギャラリーを通して皆様にご紹介させて頂きたい、今の私たちにはアミイゴさんのエネルギーが必要なのだから、と直感的に感じました。
ペインティングやドローイング等の作品、文章、何かに突き動かされるかに思える行動・・・と、名前の付けられないトータルなアミイゴさんの活動には、理屈を超えて胸打たれるものがあります。
アミイゴさんは、震災後に宮古、塩釜、気仙沼、いわき等と、被災した地を回を重ね訪れて、日々を営む人々の日常や海辺の風景を、素早いタッチのスケッチやペインティング作品として制作致しました。
記者や学者等の職業の名前が付いた人としてや、任務としてでもなく、誰に言われるでもなく、ただのひとりの人として東日本という未曾有の災害に遭った場所を訪れました。また、気仙沼の大漁旗のイベント等でイラストレーターとして訪れた事もありました。
その土地に住む災害を被った人々と等身大の気持、というには語弊があるかも知れませんが、時には積み立て預金を崩しながら、真摯な姿勢で臨まれるアミイゴさんの、力を出し切ったフィールドワークは、決していい加減な気持で出来るものではありません。
当画廊では、2012年、2014年、2015年、と三回にわたり東日本をテーマにした展覧会を開催させて頂きましたが、二度の展覧会の案内状は福島県いわき市の豊間ビーチのものです。定点観測の様に毎年訪れ、少しずつ気配の変わる風景を描き、2014年は宮崎県塩釜のカモメを描きました。光りに包まれた海と空・・・。いずれも静かさが胸に響く作品です。
僭越な言い方ですがアミイゴさんの作品は、個展を重ねる毎に心打つ力を持たれていった様に感じております。
アミイゴさんが励んで来られた道のりの一瞬一瞬のプロセスが結実し、 作品の中に、名状しがたい何かが芽生えて来ていると感じます。活動の中で進化をしながら培われて来た技術と感性に、テーマを超えて普遍の色彩が舞い降りたかの様に・・・。
住まわれている方々への共感の思い、亡くなられた方々への追悼の意を、描く側と共に見る側の人間も、同じ国土に住む者として湧き上がる自然な感情をアミイゴさんが表現して下さっている様に思えるのです。
http://old.spaceyui.com/schedule/koike-amiigo.html
エンブレム問題から浮かび上がって感じた事について:
仕事柄、アートディレクターやグラフィックデザイナーの方々を多く存じ上げておりますが、今、オリンピックのエンブレムのデザインで問題になっている佐野研二郎さんは知り合いではなく、その事に少し胸をなでおろしている自分がおります。
この問題につきましては、実に様々な意見を実際に耳にしておりますが、やはりあれだけの実例が明らかになってしまっては、庇いようがなく感じられ、これからの人生がたいへんだろうな・・・等と思ってしまいます。
でもこれは、彼一人の問題ではなく、デザインや広告の世界のシステムの問題も含めて皆が何となく感じていたけれども、激しく疑問を認識する事となってしまったのではないでしょうか。
多くの優れたイラストレーターと接している自分としては、何故ADがイラストレーションをイラストレーターに発注しないのだろう?という素朴な疑問をまず感じます。企業から依頼された多くの仕事をフリーランスに発注する事なく、全て自分のところで処理してしまう、というのは随分無理があるのではないでしょうか?
何人かのスターデザイナーが企業から集中的に仕事の依頼を受け、大勢のスタッフと共に流れ作業的にこなしていたら、クリエイティブな気風からはどんどん遠ざかって行く場合が多いのではないかと案じられます。イラストレーターに仕事がなくなるだけではなく、フリーランスの個人の優れたデザイナーにも仕事が来なくなります。一般の世界で起きている悪い意味でのグローバル化が、こちらの業界でも起きていて、それが構造的な問題である事にあらためて感じ入っております。
この画廊を始める時に、個人が個人の作品を見たり購入したり、というだけではなく、メディアを通して大勢の方に見て欲しいと思いました。それには、イラストレーションという作品表現のシステムがとても魅力的に思えたのです。批評家や一部の専門家の意見や賞等で作品の価値が決って行くのはおかしい、もっと開かれた場所=メディアで見てほしい、そしてフェアな人々の目線で作品の価値を感知し理解してもらう事のできる環境を望んでおりました。それには、デザイナーや編集者、代理店、etc、作品に関わる方々の目線が本当に大切なのです。
その流れが何か滞っている、と感じたのはいつの頃からでしょうか?元来優れた感性は理解されずらい側面もありますが、だからこそ自分等の仕事もやりがいがありました。
感性を磨く、ということは、単に流行感覚のアンテナを張り巡らせるのみでなく、もう少し違った角度からのアプローチや地道な姿勢を併せ持って得られるものと思います。私たちを取り巻く環境全体が崩壊に向かっているようにさえ見える今、客観性を保ち続けるのはたいへんな事と思いますが、作家の方々、彼等の作品を扱われる方々にもセンシブルなフェアな目線を持ち続けて頂けたら・・・、と思います。
佐野さんの今回の事件では、エンブレムやその他の彼の仕事の模倣の問題についてよりも、浮かび上がったデザイン業界の仕組や利益の偏在性について考えさせられる事が多かったです。
イラストレーターは勿論ですが、フリーランスでオリジナリティーを大切に誠実に仕事をしているデザイナーの方々に注目して行きたい、と思っています。
「7 Artists Walking Point of View」
今年の夏の暑さには、振り返れば多少の懐かしさも感じますが、それはたいへんな季節でしたね。時々熱気に目眩がして、意識が正常に動かなくなりました。
高橋キンタローさんが企画して下さった「point of view」もそんな中開催されましたが、酷暑にも負けず多くの方々にご覧頂く事ができました。
以前からお付き合いのある高橋キンタローさん、谷口広樹さんをはじめ、水沢そらさん、河井いづみさん、足立もえかさん、門川洋子さん、ミヤギユカリさんという7名のイラストレーターによるたいへん見応えのある作品ばかりが展示されて好評を博しました。作風も年令もばらばらのメンバーでしたが、皆さんの作品から外の気温とは対照的に心地よいクールな風が感じられました。
またいつか、変化や深化を遂げながら、この企画展を開催できる事を期待してしまいます。
写真は、前列左より高橋キンタローさん、ミヤギユカリさん、谷口広樹さん、後列は左より河井いづみさん、足立もえかさん、水沢そらさん、門川洋子さん、お友だちの方?の8名です。
http://old.spaceyui.com/schedule/7-artists-walking-point-of-view_15.html
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