Yoshiko Abeさんの久しぶりの展覧会が開催されました。パステルや水彩絵の具の優しいタッチとくっきりとしたペンのラインで構成される作品は、おしゃれな街角や人々の暮らしが写しとられた雰囲気のあるものでした。
ふわっとした透明な絵の具の足跡・・・、優しい色彩の中に思いがけず強い意志をもつ色が現れ、コラージュされ、画面の調子を懐かしい記憶を呼び起こすような心象風景へと変調させて行きます。そして抽象と具象とのバランスの良い構成によって、魅力ある空間の奥行きが感じられます。
Yoshiko Abeさんはギャラリーの最初のスタッフでした。 初個展開催後、広告や雑誌の表紙等といったイラストレーションの依頼が急激に増えて行ったため、おっとりとした、優しく明るい性格のYoshikoさんとはずっと楽しくお仕事を一緒にさせて頂きたかったけれど、二年間弱で独立して行かれました。
結婚後、魔法の様な速度で(個人的な見解ですが・・・。)子供たちも大きく創造の魂を持って育ち、Yoshiko Abeさんは、再び絵の世界の新しい地平へと向っておられる様に思います。
http://old.spaceyui.com/schedule/abeyoshiko_14.html
沖縄諸島の最南部に位置する、すでに日本より台湾が近くに見える小浜島に住み、海と空、そして太陽や月の光のエネルギーを、太古の人々の様に浴びる環境に生きるはんまけいこさん。夜は月明かりで道を歩くのだそうです!
展覧会では毎年、作品と共にはんまけいこさんの、おおらかなエネルギーが都会に住む人々の胸に染み込む様です。
そんな健康的なはんまけいこさんが、心理学にたいへん興味を持たれていて、昨年に引き続いて人々の心の盲点「スコトーマ」をテーマとするのも、興味深いお話、と思います。
はんまさんの創りあげた物語の世界の中で、からっと陽気なキャラクター達の演ずるちょっとずれた?ユーモラスな行動がくすっと笑えます。
ナンセンスな様でいて意味有り気な、大人の成熟した感性からしか誕生し得ない彼らのユニークな個性は、入谷桂子さんの手によって、三次元の生命を吹き込まれる事となりました。
美しい仕事ぶりの入谷さんの指先から魔法の様にチクチクと縫われ、キャラクター達の服にボタンが付き帽子が被せられ、完成して行くと、平面と立体の世界が交感しながらスコトーマの国の住人たちのイメージが膨らんで行きます。
そして、はんまさんの平面作品の個性を見事に再現される入谷さんの描写力、デッサン力は相当確かな力量と思います。
沖縄と東京のお二人のKEIKOさんの作品展は、 温かさやゆったりとした感覚が伝わって来るエンターテイメント感いっぱいの展覧会でした。
http://old.spaceyui.com/schedule/kxkthewonderland_14.html
オブチジン
ヴィジュアル情報の洪水を浴び、氾濫する情報の全てを吸収しながら、何れのヴィジュアルにも与しない、犯されない。オブチジンさんの作品を見渡し、そんな感想が頭に浮かびました。
この画廊が出発した当時、初めて個展を開催したいとのオファーを下さったのがイラストレーターとして大きな足跡を残され、現在も感動的なフレッシュな作品を創り続ける小渕ももさん、オブチジンさんのお母さんでした。ジンさんが5才の時からの知り合い、という事になります。
そんなジンさんの画廊での初個展を実のところ、始まる前迄少しハラハラしておりましたが、展示しながら、そんな心配は吹き飛んで行きました。
キャンバスにメディウムとジェッソの質感を生かした下塗りをし、反転させたデータを、タトゥーのシールを貼る様にキャンバスにこすりつけて付着させるという、独特の方法で表現された作品は、現代の雑誌や映像、街中の看板等、グラフィックやヴィジュアル情報全般を集約したかの様に感じられます。
ひとつの作品を見ただけではジンさんの向う先はわからないけれど、小さなキャンバスが壮観に多数並べられると、作品群は自ずから言葉や音楽を奏でます。小さな画面の中に時間をスライスして定着、そっと差し出されるグラフィティーが人々と思いを共有するイコンへと深化されて行くのでしょうか。
誰にも真似の出来ない、今迄見た事があるのに、初めて示されたかの様に感じられる世界観は、新鮮な感覚を呼び起こし記憶に留められるものとなりました。
オブチジン
http://old.spaceyui.com/schedule/obuchijin.html
オブチジン hp
玉岡隆志
ご夫妻のコラボレーション展、楽しい一週間でした。
玉岡隆志さんは、以前日本デザインセンターでアートディレクターをなさっていらっしゃいました。画廊で個展を開催して頂いている羽山恵さんや吉泉功一さんの先輩にあたる方です。
典子さんは、下北沢のグレイというニットのお店を30年以上にわたり経営されているプロフェッショナルなニットデザイナーの方です。私も一枚購入させて頂きましたが、こんなにさり気なく素敵に身体にフィットする、そして着心地の良いニットは初めての様に感じております。
玉岡隆志さんのパンジー、アネモネ等が描かれた作品を拝見しておりますと、何故か懐かしい気持になり、絵を全く描けない自分でも、描いてみたいと思わされて、真っすぐなプリミティブな視線の絵画の持つ力に感じ入ります。
また、典子さんの編むニット作品の糸を染色をなさるのも、隆志さんです。ポップな発色の糸がとても印象的で、その糸を用いて典子さんが編むセーターやカーディガンのモチーフが隆志氏の描かれる作品なのです!
お二人の自然体のコラボレーション作品は、 ファンの方々が大勢おられ、快い風の様に、ご覧になる方々の心に届いておりました。
玉岡典子・玉岡隆志
http://old.spaceyui.com/schedule/tamaoka_14.html
玉岡隆志・典子 hp
阪本純代さんの作品に初めて触れたのは数年前、ななめ上方から描写した小学校のお教室内部のイラストレーションの下絵をツイッター上で拝見した時のことでした。その時に、阪本さんの実力と相当ながんばり屋さんなのだなという事を実感した事などが、懐かしく思い出されます。
建築の図面から起こされたようなそのスケッチ画は、鉛筆でラフに描かれたものでしたが、人の心に響くエネルギーを孕む印象的な一枚であったと思います。
今回の展覧会では、これまで阪本さんが培って来られたテクノロジーが見事に花開いた様に感じました。多くの建築家の方々が憧れ、遊び心に満ちたシステム家具デザイン等で知られるジョエ・コロンボを彷彿とさせる作品も魅力的です。
イラストレーション、パノラマとして展開される楽しいファニチュア設計やアニメーション映像的なファンキーな都市計画も、2次元世界で自由自在に表現される阪本さんの作品には、ダイナミックな可能性が溢れておりました。
また、想像力溢れるロボットたちのキャラクターのアイデアや感性も女性の発想とは思えないところも含めひじょうに興味深く、DMになった作品は、意義深い素敵な仕事を獲得する契機ともなりました。
作品の画面構成能力の中に阪本さんの感覚的進化が加味された美意識には、右脳と左脳のバランスの良さを感じ、感銘を覚えました。
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