木村かほる
ずいぶん久しぶりのブログ更新となります。妹、木村かほるの個展・・・far away・・・、その前週には守屋文典個展、と、奇しくも水丸さんの後輩にあたる作家の発表が続き、日芸に縁のある日々が続きました。
二人とも日大芸術学部の油絵学科卒業で、デザイン科で大先輩の水丸さんと知り合ったのは社会に出てからの事ですが、水丸さんにはずいぶんお世話になりました。
また、油絵学科の主任教授で、美術学部長であった中谷貞彦先生と妹とは年令の離れた仲良しで、デザイン科卒の劣等生代表の私も含め不思議な三人組での東京のレストラン食べ歩きツアーはずいぶん長い間続いておりました。そんな三人組の中に水丸さんが加わられた事もありました。
水丸さんにも教鞭を取られた事のある中谷先生は、ダンディでインテリジェンスに溢れていて、ジャンルを超え水丸さんに影響を与える程、自由な精神の方でした。当時の美術学科の受験では、デッサンの上手さよりも線の勢いを見る、と伺った記憶があります。デッサン偏重の受験体制に疑問を呈していらした水丸さんと中谷先生が重なります。
日大芸術学部は、楽しい学校でした。高校三年の一月に無理矢理進路を方向転換し、無謀な受験をしてようやく補欠合格した史上最低な美大生だった私は、悲惨な実力のまま新入生として授業を受ける事となりましたが、そんな私よりもデフォルメの激しい面白いデッサンをする人もいたりしてびっくりしたのを思い出します。一方で相当に力量のある学生達もいて、そんなデコボコな感じも自由な雰囲気を盛り上げていました。
自分の出身校について、あまり考えた事がありませんでしたが、同級生の建築家の横河健さんとYUI GARDENを通して一緒に仕事をするようになったり、水丸さんの愛校精神が何だかとても嬉しい感じがしたり、と最近不思議と日芸との縁を感じる日々です。
とは言え、どこに行くのか何を勉強するのかもまるで解っていなかった私をむかえてくれるのは、この学校しかない!という感覚はかなり以前から持っていて、本当は大好きだったのかも知れません。
守屋文典
守屋文典さんは、妹より一学年上でその学年トップの成績だったそうです。思慮深く、端正な作品は本人の姿勢そのものの様に感じます。スペースユイが歩き始めた時からずっとお付き合いさせて頂いておりますが、文学青年風な佇まいとその作品からは清潔な怜悧なそれでも優しい風が吹いて来るかのようです。
一見ロットリングで描いた様に見える線も、実は面相筆で息を止めるようにして描いており、見る人は驚かされます。柔らかな水彩の画面に筆で描いた墨のラインが緊張感を持って、時には可愛らしくもあって、平面表現の快さを感じさせられるのです。
守屋文典
http://old.spaceyui.com/schedule/moriya_14.html
また、妹、木村かほるの作品展では、解りづらい抽象作品であるにも関わらず、多くの方々に理解を得た事もありがたい事でした。喘息の為に油絵の具が使用できなくなった事で、画材変更を余儀なくされ随分悩んだ時期もありましたが、最近では自由に表現ができるようになった様です。空間が重なって表現されている事をたくさんの方々から面白く感じて頂けましたが、二つの真逆な興味深い批評を頂きました。
空間だけでなく、時間の層も閉じ込めようとする人間の業の深さを感じる・・という批評と
人としての、悲しみや暗さ等が感じられない・・・、という指摘の両方が面白かったです。
また、YUI GARDENの若き建築家の義山さんが書いて下さった妹の作品への批評が素敵でしたので、こちらに掲載させて頂きます。彼の視線と文章がいつもとてもフレッシュで楽しく読ませていただいております。
「TOKYO BABEL」「TKYO 赤ずきん」「TOKYO」
「SNOW MOUNTAIN」「廃墟と蝶」「CYCLE」
「ICHTYS Ⅰ 」「ICHTYS Ⅱ 」「FAR AWAY」等の
タイトルの作品を約20点展示しております。
抽象表現を追求した絵画・・という風にも見えるし、
構成の「図と地」で見てみると、必ずしもそうではなくて
形(具象)が色・彩色表現を引き立て一つのトリガーに
なっている印象もまた受けました。
形は円や矩形、時には家型。それらは全体の持つ淡い色彩の
流れの中で描かれ、関係が逆転するモノではなく、
作品の持つ空気感を纏ったオブジェが見え隠れ、
目に写り込んできます。
タイトルに着目してみても興味深く、単に作品の印象を
言葉で表す事以上に、木村さんの想い・世界観が文字に
現れているようで、
図・地・言 3つの関係で作品を見てみても良いかもしれません。
木村かほる “TOKYO BABEL”
http://old.spaceyui.com/exhibition/kimurakahoru_14.html
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