2015.08.15:土曜日
シーノ タカヒデ SUMMER TIME ART PIECE TO SCRIBBLE

 

 

 

 

 

シーノ・タカヒデさんの個展前に、大きな仕事が舞い込んで来ました。シーノさんは丁度個展の絵の仕上げの時期でしたので、少したいへんな様でしたがそんな事を言っていられない魅力的な仕事でした。画廊でもめずらしいファッションブランドからのお話です。

いつもアフリカをテーマにした作品を、こぼれるように豊かなイマジネーションで描き続ける作品は、シーノさんにしか描けないオリジナリティ溢れるものです。

個性的なモチーフと自由な感覚で、誰に媚びる事なく制作を続けるシーノさんは、商業美術としての作品を上手く描き続けるという事は、少し苦手かもしれませんが、時々ぼーんと、大きなプロジェクトが動きます。

話は飛びますが、15才頃から画廊に来ていた或るユニークな少年が、いつか国会議員になる、と言い続けていて実際に衆議院議員になってしまった人がいます。そして夏休みの季節に、「ボクが売ってあげる!」と、半ズボンに画廊のプリント作品を入れたアタッシェケースという出で立ちのくりくり頭の少年、T君が画廊を飛び出して行き、「絵を売るのはむずかしいね」と、がっくりとどこかから戻って来た事や、やがて本当に議員になってしまった後もアートと自分の仕事と結びつけようとたいへん努力をして下さっていた時分のことを、懐かしく思い出されます。

何年か前のシーノさんの個展の時に、初当選をしたT君が、コンゴ共和国と近隣のサントメ・プリンシペという両国の大使を務める人を引き連れてやって参りました。コンゴ共和国の西側、海に浮かぶ小さな島国であるサントメ・プリンシペは、たいへんアートに親和性が高いと言われ、T君に見せて頂いたアフリカの未知の国の、洗練と野生の混合がフレッシュな海辺のギャラリーや街の風景の写真は、忘れ難いものでした。国と国とを繋ぐツールとしてのヴィジュアル作品は様々な角度から必要とされ、また、生み出す事も可能に思えました。私もシーノさんも詳しい事は忘れてしまったのですが、ギャラリーや、また場所を移して、何度も打ち合わせがなされました。

展覧会会期中の或る日、シーノさんがめずらしくちょっとだけフォーマルな感じの装いで現れました。議員や大使との打ち合わせを兼ねての会食があるとの事でしたが、シーノさんはものすごい拒絶反応を示しました。シーノさんは、私に一緒に行って下さい!等と子供の様に駄々を捏ねます。私は、こういう機会を仕事に生かさなくてはだめでしょ、と言い、画廊から送り出しましたが、翌日尋ねますと、シーノさんは途中で帰って来てしまったそうなのです。 ぐるっと企業家や政治家に(自民党)に囲まれてしまった様です。 とにかく政治の匂いが嫌いらしいです。

純真な少年だったT君も、自民党の政治家だったら清濁合わせ飲む事のできる複雑な回路をつくりあげてなかったら、やっていられませんから、ピュアなアーティストとは相容れないのだと思います。

でも、画廊主としては、アーティストではないのだから、この様な人々とも上手く付き合わなければいけないのかも知れませんが・・・。

そして今年の個展の直前に、シーノさんの作品をパリコレ用の服のテキスタイルに使いたい、というお話をコムデギャルソンから頂いた時には、画廊のスタッフも皆でいっしょに喜んだものです。もう時間がないので既にある作品の中から決定したいとの事、仕事は、既に迷う事はなくシーノさんに決っている、という事でしたので、担当の方にシーノさんの過去数年分の作品データをお渡ししました。不正アクセスの問題等で少し神経質になっているこちら側としては抵抗がありましたが、既に仕事として決定してるという事実の元に了承しました。

その後、シーノさんから、最初の約束とは違い、新たに絵を描かなくてはならなくなった事、そしてその後仕事が流れてしまったという事を聞きました。

画廊としましては、電話で、知らない内にシーノさんの作品が使用される事のない様、作家のオリジナリティ、著作権、名誉といったものをもっと大切に扱って下さい!と、こちらの気持を伝え、理解して頂く事ができました。この話の行き違いについては、この仕事の窓口になった方々の勘違いで、という帰結でしたが、画廊の義務としての作品のセキュリティーについても、考えさせられる事がらでありました。

シーノさんが、自分にとってはどんな仕事もいっしょなので、と、案外にこの事を気にしないで下さった事が、救われる思いでした。

そして、忘れた頃にひょこっと画廊に現れる、現在も何度目かの当選をしているT君の事も時々思い出されます。

 

 

 

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/shino_15.html

 

 

 

 

 

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