2015.09.11:金曜日
小池アミイゴ「東日本」そして西日本漂泊、   「7 Artists Walking Point of View」、そしてエンブレム問題から感じた事

 

 

 

 

 

 

2011年3月の震災直後の小池アミイゴさんの活動を見ていて、ぜひ彼の作品と活動をギャラリーを通して皆様にご紹介させて頂きたい、今の私たちにはアミイゴさんのエネルギーが必要なのだから、と直感的に感じました。

ペインティングやドローイング等の作品、文章、何かに突き動かされるかに思える行動・・・と、名前の付けられないトータルなアミイゴさんの活動には、理屈を超えて胸打たれるものがあります。

アミイゴさんは、震災後に宮古、塩釜、気仙沼、いわき等と、被災した地を回を重ね訪れて、日々を営む人々の日常や海辺の風景を、素早いタッチのスケッチやペインティング作品として制作致しました。

記者や学者等の職業の名前が付いた人としてや、任務としてでもなく、誰に言われるでもなく、ただのひとりの人として東日本という未曾有の災害に遭った場所を訪れました。また、気仙沼の大漁旗のイベント等でイラストレーターとして訪れた事もありました。

その土地に住む災害を被った人々と等身大の気持、というには語弊があるかも知れませんが、時には積み立て預金を崩しながら、真摯な姿勢で臨まれるアミイゴさんの、力を出し切ったフィールドワークは、決していい加減な気持で出来るものではありません。

当画廊では、2012年、2014年、2015年、と三回にわたり東日本をテーマにした展覧会を開催させて頂きましたが、二度の展覧会の案内状は福島県いわき市の豊間ビーチのものです。定点観測の様に毎年訪れ、少しずつ気配の変わる風景を描き、2014年は宮崎県塩釜のカモメを描きました。光りに包まれた海と空・・・。いずれも静かさが胸に響く作品です。

僭越な言い方ですがアミイゴさんの作品は、個展を重ねる毎に心打つ力を持たれていった様に感じております。

アミイゴさんが励んで来られた道のりの一瞬一瞬のプロセスが結実し、 作品の中に、名状しがたい何かが芽生えて来ていると感じます。活動の中で進化をしながら培われて来た技術と感性に、テーマを超えて普遍の色彩が舞い降りたかの様に・・・。

住まわれている方々への共感の思い、亡くなられた方々への追悼の意を、描く側と共に見る側の人間も、同じ国土に住む者として湧き上がる自然な感情をアミイゴさんが表現して下さっている様に思えるのです。

 

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/koike-amiigo.html

 

 

 

エンブレム問題から浮かび上がって感じた事について: 

 

仕事柄、アートディレクターやグラフィックデザイナーの方々を多く存じ上げておりますが、今、オリンピックのエンブレムのデザインで問題になっている佐野研二郎さんは知り合いではなく、その事に少し胸をなでおろしている自分がおります。

この問題につきましては、実に様々な意見を実際に耳にしておりますが、やはりあれだけの実例が明らかになってしまっては、庇いようがなく感じられ、これからの人生がたいへんだろうな・・・等と思ってしまいます。

でもこれは、彼一人の問題ではなく、デザインや広告の世界のシステムの問題も含めて皆が何となく感じていたけれども、激しく疑問を認識する事となってしまったのではないでしょうか。

多くの優れたイラストレーターと接している自分としては、何故ADがイラストレーションをイラストレーターに発注しないのだろう?という素朴な疑問をまず感じます。企業から依頼された多くの仕事をフリーランスに発注する事なく、全て自分のところで処理してしまう、というのは随分無理があるのではないでしょうか?

何人かのスターデザイナーが企業から集中的に仕事の依頼を受け、大勢のスタッフと共に流れ作業的にこなしていたら、クリエイティブな気風からはどんどん遠ざかって行く場合が多いのではないかと案じられます。イラストレーターに仕事がなくなるだけではなく、フリーランスの個人の優れたデザイナーにも仕事が来なくなります。一般の世界で起きている悪い意味でのグローバル化が、こちらの業界でも起きていて、それが構造的な問題である事にあらためて感じ入っております。

この画廊を始める時に、個人が個人の作品を見たり購入したり、というだけではなく、メディアを通して大勢の方に見て欲しいと思いました。それには、イラストレーションという作品表現のシステムがとても魅力的に思えたのです。批評家や一部の専門家の意見や賞等で作品の価値が決って行くのはおかしい、もっと開かれた場所=メディアで見てほしい、そしてフェアな人々の目線で作品の価値を感知し理解してもらう事のできる環境を望んでおりました。それには、デザイナーや編集者、代理店、etc、作品に関わる方々の目線が本当に大切なのです。

その流れが何か滞っている、と感じたのはいつの頃からでしょうか?元来優れた感性は理解されずらい側面もありますが、だからこそ自分等の仕事もやりがいがありました。

感性を磨く、ということは、単に流行感覚のアンテナを張り巡らせるのみでなく、もう少し違った角度からのアプローチや地道な姿勢を併せ持って得られるものと思います。私たちを取り巻く環境全体が崩壊に向かっているようにさえ見える今、客観性を保ち続けるのはたいへんな事と思いますが、作家の方々、彼等の作品を扱われる方々にもセンシブルなフェアな目線を持ち続けて頂けたら・・・、と思います。

佐野さんの今回の事件では、エンブレムやその他の彼の仕事の模倣の問題についてよりも、浮かび上がったデザイン業界の仕組や利益の偏在性について考えさせられる事が多かったです。

イラストレーターは勿論ですが、フリーランスでオリジナリティーを大切に誠実に仕事をしているデザイナーの方々に注目して行きたい、と思っています。

 

 

 

「7 Artists Walking Point of View」

 

 

 

今年の夏の暑さには、振り返れば多少の懐かしさも感じますが、それはたいへんな季節でしたね。時々熱気に目眩がして、意識が正常に動かなくなりました。

高橋キンタローさんが企画して下さった「point of view」もそんな中開催されましたが、酷暑にも負けず多くの方々にご覧頂く事ができました。

以前からお付き合いのある高橋キンタローさん、谷口広樹さんをはじめ、水沢そらさん、河井いづみさん、足立もえかさん、門川洋子さん、ミヤギユカリさんという7名のイラストレーターによるたいへん見応えのある作品ばかりが展示されて好評を博しました。作風も年令もばらばらのメンバーでしたが、皆さんの作品から外の気温とは対照的に心地よいクールな風が感じられました。

またいつか、変化や深化を遂げながら、この企画展を開催できる事を期待してしまいます。

 

写真は、前列左より高橋キンタローさん、ミヤギユカリさん、谷口広樹さん、後列は左より河井いづみさん、足立もえかさん、水沢そらさん、門川洋子さん、お友だちの方?の8名です。 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/7-artists-walking-point-of-view_15.html

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