2020年4月1日:記
日曜日午後のTV番組で、ある医師が新型コロナウィルスについて見解を述べているのを聞いていて、ふと思い出した事がありました。その医師が発言された言葉の中に、現在の行政からの市民の自粛要請に対し、もし人々に首相や都知事の意見が届かないのであればアスリートやアーティスト等の人々の発言による共有感覚で皆でこの局面を守り合って行こう、といった主旨の内容が含まれていました。
そしてふと思い出した事とは、さかのぼる事ウン十年前のお話です。引越す前の小さなギャラリーに、隣りの家に住む不思議な少年が頻繁に遊びに訪れていました。何事にも好奇心いっぱいな驚く程行動的な少年は、何とギャラリーの作家作品をカバンに入れセールスさせて欲しいと申し出ると同時に返事も待たずギャラリーを飛び出してしまう様な人でした!何度か営業活動?にチャレンジした後、結果的に「絵を売るのはむずかしい!」と挫折してしまいましたが、半ズボンにアタッシェケースを抱え走り回っていた、超個性的な当時15才の少年の姿が目に焼き付き忘れられません。
その少年はまた、将来この国の総理大臣になる等と話し、その言葉は軽〜く私の耳を通り過ぎて行きましたが、政治家になるという初志は貫かれました。
衆議院議員になる前のその少年は、政治家の秘書以前の小僧?のような事をしていて、素人目にもこの政界の中で保守系としては正義感が強いと思われる数人の政治家の鞄持ち的な役割を担い、渡り歩いているように見えました。それらの時代にその元少年が口癖のように言っていて、その都度あまりピンと来なくて「?」と思いながらも強く印象に残っている言葉があります。
彼は、正義派に見える政治家たちに就きながら、「本当にこの分野の人はダメ、本当に政治家は汚い、これからはギャラリー周辺に居る人々のような存在が政治に加担しなければこの国は滅びるよ!」と真剣な顔で何度も話していました。その都度、真面目に聞いてはいたもののそれほど実感が湧かず、そしてクリエイティブな事に関する人々とは少し離れた問題なのでは?と感じていました。その後、政治家になってからも彼は時々画廊を訪れますが、忙しそうにさっと来てさっと帰って行きます。今は昔、長い年月が経ち自民党の政治家になった「少年」とは、政治の事等じっくりお話しする事もありませんが、きっと別人になってしまったのだろう、と呆れたり諦めたりする事なく、次回会う機会があれば正面から話さなければ、と思います。
そして今、前述の医師や元少年の言葉が鋭く胸に迫ります。人々はアーティストの発言、行動を待っているのかも知れません。
作家にとって何かを表現するという事が、表面上の形や雰囲気を美しく描くだけではなく、目に見えないけれど確かに存在するつかみ難い真実のような何かにリンクする志が込められ、その作家自身の中に存在するとしたら、こういった人々の創造的エネルギーは本当にたいせつなものと思います。
そのような精神的なエネルギーを形として表すことが至難の技であることは、想像に難くありません。このfbをご覧になる方々の中にはクリエイティブな職種に携わる方が大勢いらっしゃる事と思います。また、何かを創り出す職業の方が全て本当の意味でクリエイティビティーを持つ訳ではなく、一般の美術や音楽、また表現全般の愛好家の方々の中にこそ、或いは表現の世界とは全く関係ない人々の中に、時に本質的な創造の魂を感じる事があります。
少し話題がそれてしまいましたが、やはり無から形あるものを生み出す力のある職種の方々へのリスペクトは以前から変わりません。
そして、皆が手を携えなければならない時に、論理の世界だけでは解決できない目に見えない事がらについて、可能性ある力を生かした創造的なエネルギーの伝播が、社会のシステムに大きな突破口を開ける事ができると信じたいです。
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