沢野弓子 – wonderland –
作品だけではなく、ご本人の存在自体が晴れやかな青空の様に、多く人を励ます沢野弓子さんの個展には、大勢の方々がお出かけ下さいました。
偉大な抽象画家、楠田喜代子さんのお弟子さんの沢野さんが画廊に初めていらっしゃった時の全身のコーディネイトが本当に素敵でした。おしゃれってとても難しく、あまりオリジナルだと特異な感じばかりが目立ちますが、沢野さんの格好良さはオリジナリティも先端のモード感も( 自分には欠けているので分かっているかどうかは別として)含みながら、 楠田喜代子さんが「沢野さんは生きるアートです。」とおっしゃっていたように、突き抜けた純粋なステキさの印象が残りました。20数年以前の事です。2013年に100才を目前に亡くなられた楠田さんは、数回当画廊でも個展を開催させて頂きました。どこにも所属しなかったけれど小さな個展でも必ず海外からのオファー等があり、不思議な流れの中で人々に支持され続けました。中でも忘れられない作品があります。幼児がよく描くチューリップのお花の部分が丸く正円になり、長く延びた茎と二対の葉っぱがある、墨の濃淡から成る「華のサムライ」という作品です。楠田さんは陽性な性格の方で、「長く生きているものですね!男性が威張っている社会で生きて来たけれど、今は女の人がえばっていて、面白いね~」といつも楽し気におっしゃっていました。そして「華のサムライ」は、自分自身であり、沢野弓子さんでもあるのだ・・・と。楠田さんに関しての引用が多くなってしまいました。
沢野弓子さんの最初の個展は、抽象画の平面作品でした。様々な素材を用いたコラージュ作品でしたが、その後の個展では平面作品と同じ素材、手法でつくりあげたバッグや小さなアクセサリー等の展示へと繋がって継続して参りましたが、驚く程の勢いで売却され続けているのです。
隔年毎に開催される展覧会では、毎回ほぼ完売という状況であって、楠田喜代子さんがおっしゃっていたように、沢野さんが実際に身に纏う、感性を紡ぐようにしてつくり上げるバッグや小さな物等の「生きるアート」は、求める側もまたストレートに受け止めて、創る側と隔たりのない感覚をとても得難いものに思います。
http://old.spaceyui.com/schedule/sawanoyumiko_15.html
下川路博美 銅版画展「手のひらの記憶」
下川路博美さんの二年ぶりの銅版画展は、チャレンジングな素晴らしい新たな表情を見せて下さいました。
今回初めてのモノクロームの作品は、特に印象的に感じました。黒色の強い色調が紙の質感に柔らかく受け止められて、銅版画の持つ微妙に水分を感じさせる輪郭がとても魅力的でした。
お母様の若い時代のエレガントなバッグやハイヒール、手袋等の小物も端正に美しく表現されていて、私たちの心の中のノスタルジーな気分を刺激されました。そんな数々の作品から、日々の暮らしの中の優雅なエレメントの印象と共に郷愁に満ちた文学的な感情が伝わって参ります。
版画作品の中に刺繍糸を登場させたり、グラフィックデザイン的な構成の作品等の新しい手法も加わって、下川路さんの作品世界の様々な可能性の広がりが期待されます。
また、ダイレクトに描く表現形態とは違い、銅版画の、技術的な緊張感を要する制作過程のたいへんな様子を微塵も感じさせない下川路さんの佇まいに、ステキなダンディズムを感じてしまいます。
http://old.spaceyui.com/schedule/shimokawajji_15.html
中島洋子 個展「模様と装飾」
中島さんから、「模様」の全般に興味があると伺い、「模様」の数々をテーマとした作品を見せて頂いた時に、とてもフレッシュな印象を受けました。
私たち人類にとって、普遍的古典的な側面を持ちつつ、身近な存在でもある魅力的な「模様」はいつも私たちの身近で、共に息づいている様に感じます。
今回の展覧会では、装飾的なエキゾチックな模様を、中島さんの内部を通過し、翻訳され、シンプルに軽やかに新たな表現で示されているように感じました。
中島さんは、水丸さんの生徒さんでもあるのです。
今回の個展では、陶器やガラス瓶、木の箱や平面作品と、沢山の様々な物にと模様を描きました。
トラディショナルな「模様」をオリジナリティのある形に創るべく試みられている中島さんの作品様式が完成されたら、見た事のない面白い世界観が私たちを楽しませてくれるのでは、と、楽しい期待が膨らみます。
http://old.spaceyui.com/schedule/nakajhima_15.html
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