今回当ギャラリーに於いて初めて展示頂いた長谷川洋子さんの作品展では、確かな描写力を礎にこの上なく誠実な制作姿勢に裏打ちされた優美な作品の数々を見せて頂く事ができました。
オリジナリティー溢れ、キラキラと美しさがこぼれるかに感じられる素晴らしい作品が発表され、大勢の方を楽しませて下さいました。
長谷川さんは絹などの布やレース、様々な形のヴィンテージのビーズなど、光る素材を含む多様な画材を絵の具の様に用いて作品を創られます。
細いピンセットの先で、デリケイトな質感の布と小さな宝石たちを貼り付け埋め込んで、大きさも画題も様々に創り上げて行く長谷川洋子さんの作品は、たいへんな集中力と技術を必要とするのではないかと思います。
長谷川さんの作品制作過程に於いて、時間は絵の具でストレートに描く様には流れず、かなりご苦労されている事もあるのではないかと想像されます。細かな作業の積み重ねからでき上がるロマンティックな雄大な風景画を拝見すると、長谷川さんのイマジネーションの豊かさに感嘆致します。
工芸とも言えない、イラストレーションとも言い切れない、カテゴリーを突き抜けた表現形態、独自の様式を創り上げた長谷川さんの自由な感性を多くの方々が愛情を持って待ちうけておられます。
麗しく小さな宝石が散りばめられたかのマチエールの作品を創られる長谷川洋子さんのこれからのご活躍が楽しみですし、この様な女性らしい優し気な作品の内側には、きちんと企画され、みなさまの手に渡って行く迄へと続く細やかな配慮が含まれ、男性的とも言える構築力が伴っているように思います。
その様な個性がトータルに長谷川作品の魅力へと醸成されて行くのでしょう。 作家さんご自身の楚々とした美しい風情も画風とリンクして作品の瑞々しさを際立たせておりました。
今回は、長谷川さんにも文章をお寄せ頂きました。まだ学生の頃のお話等、憧れのギャラリー等と、恐縮ですが、長谷川さんのすっきりとした清明なコメントをぜひご覧下さい。
↓
18歳の頃の話です。
イラストレーターになりたかった私は表参道の何軒かのギャラリーを美術大学の教授より教えていただき、初めてスペースユイを訪れました。
その時若さ故のパワーで「私イラストレーターになりたいので絵を見てください」とオーナーの木村さんに声をお掛けしました。
本当に酷い絵だったと思うのですが、「イラストレーターになりたいのね。大丈夫なれるわよ」とにっこりと微笑んでくださった事を今でも鮮明に覚えております。
以後ずっと憧れのギャラリーだったのですが、20年経ち(数えてみてびっくりでした。)今回縁があり個展を開催させて頂くこととなりました。
2014年に半年ほど休業をしてリフレッシュの為渡仏をしたのですが、結局帰国後も仕事に追われ出産、育児とバタバタとしてしまいこの時の美しい風景を描けていない事がとても心にひっかかっており、今回は風景画にチャレンジしようと決意しました。
「5月ですし爽やかな色を、水色がいい」スイスのレマン湖のベンチに腰掛けながらぼーっと遊覧船を眺めていた静寂なひと時をまず描きたいと頭に浮かびました。
こちらは今回のDMにも使いとても好評でした。
そして、顧客さまからオーダーを頂いていたフランス・ジヴェルニーのモネの庭園、コペンハーゲンの薔薇のアーチのある小径、イメージは次から次へと湧いてきて結局描ききれませんでした。
近年の仕事の作品では「2017年Afternoon Tea Mother’s Day」「ならファミリー2周年記念ビジュアル」「スター☆トュインクルプリキュア/BANDAI」などを展示しました。
プリキュアの虹の天の川を描いた作品は小さなお子様たち(そしてママたちが)が目をキラキラとさせながらご覧頂き思い思いに感想を述べ、新鮮な気持ちを頂きました。
「遠い水平線」今回の展示を行うにあたりこちらのタイトルがすっと思い浮かびました。
日本は島国ですので地平線ではなく水の向こうに思いを馳せるようなロマンを、ショートトリップ感をご来場者様に体験して頂きたいと願いましたが、いかがでしたでしょうか。
少しでも安らぎのひと時をお過ごしいただけたなら幸いです。
最後に常に頭にある個展におけるコンセプトなのですが、非日常的であったり明快に綺麗である事、アートに興味がない方でもお花をご覧いただくように暮らしを彩る作品をこれからも制作して行きたいと考えております。
また次回のスペースユイでの個展を夢見て…
2019年5月25日 長谷川洋子
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