2019.11.04:月曜日

 

 

 

 
今年の沢野弓子さんの個展初日の朝は、いち早くお出かけ頂いた二組のお客様のお求めになりたい作品がバッティングし、複数の作品をご予約下さった方がもう一人の方にお譲りする、という一幕もありました。毎年開催の度に注目の高まる沢野弓子さんの個展オープン時から始まった賑わいは、会期の終わるまで続きました。
今回はタイトルも「動物の謝肉祭」、様々な動物たちに彩られた楽しい作品が並びました。テーマである動物たちがモチーフの作品がギャラリーを所狭しと展開され、元気なエネルギーに充ちた展示となりました。
世界を回ってご自身の足で求められた生地は、既視感のない珍しい模様や素材のものから既に日本には失われてしまった懐かしく素朴な素材など、クオリティーの高いものばかりです。
そのような素材を用いてコラージュされたバッグですが、ひとつひとつの持ち味も異なる見応えある素敵な作品として完成しております。
バッグの他、ボタンや布や身近な素材を使ってブローチも創られます。ラフな服装にも少しゴージャスな装いにも用いる事のできるアクセサリーとしての小さなオブジェは身につけるアート、生活に密着した作品として皆さんに受け入れられています。デザイン的にもバランスの取れた温かな思いのこもったエネルギーを人々は見逃しません。
次回は2021年の開催となりますが、今年作品を手に入れる事のできなかった方も含め、早くも再来年の個展を待つ人が多くおられます。
 

 

 

 
http://old.spaceyui.com/schedule/sawano-yumiko2019.html

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2019.10.28:月曜日

 
 

 
 
入谷桂子さんの個展「Keiko Iritani アリス」、楽しい展示でした。入谷桂子さん制作の縫いぐるみの登場人物や動物たちは、技術的なファウンデーションに裏打ちされた見応えのある作品です。
今回の個展では、入谷さんの作品に独特の個性が宿ったように思えます。入谷さんのアリス、入谷さんのチェシャ猫、三月うさぎ・・・、と言うように。
巨匠といった方を始め、本当に様々なアーティストがアリスを描かれておりますが、今回の個展で見事に入谷さんはご自身のアリスを創作されたと思います。
「不思議の国のアリス」という、皆が大好きなアイコンの胸を借りての表現は、多難な事もあったことと思います。そして、平面ヴィジュアルとしてのオリジナルを立体作品として実際に創り上げて行く工程は、たいへんなご苦労も多かったのでは、と想像致します。
金子國義さんや四谷シモンさんとの交流も深い元婦人公論編集長の吉田好男さんにもお出かけ頂き応援の言葉を頂いた事も嬉しい出来事でした。
そう言えば、宇野亜喜良さんに以前アリスの展覧会をリクエストした時に、資料集めに奔走、ご一緒したりしましたが、ネコ(金子さんの愛称です)のアリスは超えられないからと断念された事等を懐かしく思い出しております。
 
 

 
 
http://old.spaceyui.com/exhibition/keiko-iritani2019.html

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2019.10.20:日曜日

 
 

 
 

広告、装幀のイラストレーションから絵本、と各分野から多数のオファーが絶えない、今最も注目される作家河井いづみさんの個展作品は多忙な時間の中から生まれました。

河井さんの作品は、鉛筆画とリトグラフとの二通りの技法が主体です。この二つの表現技法に共通する特徴と魅力は、やはりマットな独特の柔らかいテクスチュアを持った作風と思います。

その独特な質感・・・、雰囲気のある紙とその紙に触れるタッチから生まれる柔らかさと怜悧さとの相俟ったエネルギーは、人を魅きつける力を持ち、作品を観た人を立ち止まらせます。

大注目を浴びる河井いづみさんの先取りされたヴィジュアルセンスも、誠実に鍛えたファウンデーション、表現力が土台にあってこそその実力が発揮されるのでしょう。

来年、多忙のため個展はお休み致しますが8月に開催の画廊企画展(三人展)にご参加頂きます。2021年秋には再び河井いづみさんの素敵な作品の個展を予定しておりますので、どうぞお楽しみになさって下さい。

また、今年はかつてない大型の台風19号の来襲と重なった最終日の土曜日を急遽日曜日に予定を変更する等の出来事もありました。

 
 

 
 

http://old.spaceyui.com/schedule/kawai_idumi2019.html

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2019.10.13:日曜日

 


 

アフリカへの旅が多く、ケニヤの人々の家の外壁にペインティングしたり!、現地の人々との交流が続くシーノ・タカヒデさんの毎年恒例の個展が今年も開催されました。いろいろな驚異的なエピソードがありますが、その中でも特に印象深いシーノさんのお話をご紹介させて頂きます。

☆『象』…を食べた日 ☆

リュツルの森からザイール川を渡り

セントラルアフリカの首都バンギを目指していた

途中 ジャングルを移動するため

カミオンをヒッチし移動

夜は 満天の星空

カミオンの下で眠りにつく

昼間は

ヒッチしたトラックのホロの上に振り落とされないように

しっかりと体をゴムでしばり ただ ただジャングルを走り続ける

旅の移動

途中名も知らぬ小さな村に止まった

日も暮れかかり急いで空腹を満たす為食べ物を探した

ヒッチハイクの旅は休憩時間も運転手次第

しかも フランス語なのでちっとも解らない?

ヘロヘロになりながら小さなマルシェにたどり着き

言葉がわからないまま身振り手振りで食べ物を探す

何とか食事ができそうな場所を探しあてた

とにかく知ってる単語を並べて食べ物を注文する

店主は 白い歯を見せながら何かの塊を持ってきた

出てきたのが何か解らないままかぶり付くが『肉?』

…と言う事はわかったんだが

まるで歯が立たない

腹が減っているせいかそのゴムのようなその肉を

何とか嚙み切り呑み込んだ

ろうそくの灯りの下でその食べ物と格闘しながら

少しずつ飲み込んでいった

夕日が沈みかけ蝋燭越しに人影がちらほら

少しずつ目が慣れお腹も落ち着いた頃

店主にこのほし肉の正体を恐る恐る尋ねてみた

店主は

満面の笑みを浮かべて「象❗️だ」….と笑って答えた

えっ!

正体は『象の干し肉』…だった

…と、ふと座っている椅子に目線をやると

その椅子には大きな爪が…

ぼくは…象の足で作ったイスに座っていた

   ☆

…帰国後ぼくは肉を食べるのを止めた
 
 

 
 
http://old.spaceyui.com/schedule/shino_takahide2019.html

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2019.10.09:水曜日

 
 

 
 
卯月俊光さんの作品、昨年から新たなチャレンジをされているように感じておりましたが、今年は更に、新鮮な息吹きを感じました。

「OVAL ーひとつの宇宙ー」というタイトルが示すように、比較的小さめな画面内に楕円形のモチーフが中心となり、円形や美しい細いラインの繰り返しと言ったリズミカルな表現も加わって、卯月さん独自の世界観が表現されました。

花々や月や雲、また朧な空気感や雨模様など、日本の伝統的な表現世界に通じるモチーフや作品の構図や染色等の技術的な側面から感じられる静謐な様式美には、積み重ねられた時間や人々の経験則や叡智から成る圧倒的な力があると思います。

卯月さんが表現されようとしている、そのような様式を湛えた作品を個性豊かに制作するということは、想像以上に難しく困難な場面も多々あるでしょう。

その上にポップな味わいも加味された卯月さんの作品は、今の時代を生きる人々にとって様々な角度から楽しめる共有感覚を呼び覚まされるように思います。
 
 


 
 
http://old.spaceyui.com/schedule/utuki_toshimitu2019.html

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2019.10.03:木曜日

 

 

スペースユイでは、二度目となる百瀬恒彦さんの写真展が開催されました。

今回は、ニューヨーク近郊に住むアーミッシュと呼ばれる人々の日々の情景がテーマでした。

電気も通らない、電話等の通信機器も持たず、自動車の変わりに馬車を使うという、現代の文明に頼らない生活を選んだアーミッシュの人々は、もち論写真に写される事も好みません。

百瀬さんは、撮影に要する短い期間に若い女性たちの初々しい笑顔や子供たちの楽しそうな笑顔を逃さず捉える事に成功しました。

そしてアーミッシュの人々と一般の人々の住居とは混在していて、夜になり電気のついている家とそうでない家とで区別がつくのだそうです。

また、今回の展示表現として、ニューヨークの街の光景とアーミッシュの集落や人物とを交互に並べ鑑賞できた事も、その対比を皆さんに楽しんで頂けたと思っております。

百瀬さんの作品に魅かれた若い方々も多くお出かけ頂いた事も印象的でした。

百瀬さんの提案では次回はキューバがテーマの展覧会で、その次にマザーテレサの肖像の展覧会を、という事です。そしてどの作品も魅力あるものばかりですが、マザーテレサの表情とその捉え方が強く印象に残りました。

マザーテレサは多くの写真家によって世に出ており、私も他の写真家の方々を存じ上げていますが、百瀬さんの写し取ったマザーテレサの顏が忘れられません。畏怖を感じるほど強烈な優しさといった風な感慨を初めて持ちました。

優れた作家のポジティブな力を持つ作品は、確実に人々の心に繋がって行くと思いますので、今の時代、特に百瀬さんによるマザーテレサの肖像写真の展示が待たれます。

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/momose_tunehiko2019.html

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2019.09.17:火曜日

 

 
 
谷口シロウさんの絵、加藤マフミさんの文章による絵本、「まぼろし花」の原画展が開催されました。ドローイング、イラストレーション、と垣根のない感覚的表現が魅力的な谷口シロウさんの絵と、谷口さんの旧知の間柄のアートディレクター、加藤マフミさんとの息の合ったお仕事ぶりです。

楽しい絵本から伺えるお二人の優しいお人柄が登場人物の天使たちに重なります。お二人に今回の展示と絵本について文章をお寄せ頂きました。
 


アート絵本「まぼろし花」 出版記念展 (谷口シロウ)

今回の展示は思いがけない再会から始まりました。

以前お世話になっていたアートディレクターの加藤マフミ氏と

数十年ぶりに素敵なタックを組むことに…。

彼が温めていたストーリーに共感し、

今 自分が描きたいスタイルに近い絵にもぴったりだったので、

その大人のアート絵本を目指し、すぐに取り掛かり

推敲を重ね1年ほどかかり完成しました。

子供の絵本でも難しいところ、奇跡の足長おじさんのおかげで

超短期間で出版の運びとなりました。

これは2人の遺作になる強力、普遍的なバイブルです!?

世の中にもっとアートを!

気持ちの良いソファーのように包まれ

エネルギーの素となる綺麗なスイーツやシャンパンのように

少しリッチでキラキラと輝ける糧に

もっともっと大人が楽しめるアートが広がるといいですね。

出会いと発表の場に感謝しつつ

これから次のステージへ向かいます。

 
 
「まぼろし花」は咲いているか (加藤マフミ)

誰の心にも、まぼろし花は咲いています。

心は常に揺れ動き、毎日を生きています。

悩んだり、限りのない欲望を追い続けたり、万象を比較したり、

愛や憎悪や優しい気持ちや勇気などの感情が目まぐるしく渦を巻く。

人間ですから。

良い意味でも、悪い意味でも、

人間として生きていくしか僕たちにはない。

この物語はもう20年以上前に子供向け

というか未来の大人たちに向けて書きました。

そしてこの度、今の大人たちに向けて書き直した作品です。

そもそもこの物語は絵本として

書いたのだから大人向けになっても絵本にするべきと考えました。

絵は誰にお願いしようか?

優しくて、可愛くて、どこかシニカルで、シンプルなのに複雑で、

不思議な魅力のアート感を放つ。

そうだ、旧知の谷口シロウ氏を十数年ぶりに探し出して頼んでみよう。

アート絵本を作ろう。

日本ではそんな領域はない。

アートものの出版なんかよほどの理由がないと無理。

でも今伝えたい、地球のあちらこちらにまぼろし花が咲いていることを。

僕の心の中に聞こえてきた声に後押しされて頑張ってみようと思いました。

「いいことってさ、ひとつくらいはあるかもしれないよ」
 
 


 
 
http://old.spaceyui.com/schedule/taniguchi_shirou2019.html

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2019.09.10:火曜日

 


 
 
岸田ますみ「9月の展覧会」が終了しました。

ずっと一貫して、開けた視界の海や平原等、同テーマを描き続けている岸田ますみさんの作品展には、ファンの方々も多く、定評があります。

青みがかったグレーの雲の覆う空模様、深く暗い海の色、ぽつんと建つ一軒の家や灯台等、モチーフもシンプルです。

全体的に画面から漂う気配は寂寥感に溢れています。その寂寥感のもうひとつ向こう側には一体どの様な風景が存在するのか、明るいご本人の印象からは結びつかない感覚に、イマジネーションが尽きません。

 
 

 
 

http://old.spaceyui.com/schedule/kishida_masumi2019.html

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2019.09.10:火曜日

 

 

 

表現力の確かさや技術の面でも、追随を許さない深谷良一さんの作品展でした。

本年は飼っている猫の大作が主役に、DMにも登場して評判を呼びました。昨年展示した同じシリーズの大作の猫も一緒に迫力ある展示になりました。

また渾身の、花々や植物を描いた新たな作品も素晴らしい完成度で大好評でした。

一方で、ご自分で作られた木の箱に深谷さん独特の作品が描かれ、完成度の高さに皆さんが驚かされました。

来年の夏は、また違った新しい企画で、皆様に素敵な作品をお届けできる予定です。どうぞお楽しみに!

 

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/hukaya_ryouichi2019.html

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2019.09.05:木曜日

 


今回の個展は、これ迄の水沢そらさん独特の表現形態であった紙を切り抜き着彩するというたいへん手間のかかる技法から、ダイレクトに筆のタッチで描くというシンプルな技法を初めて試みられた作品展でした。

水彩紙に顏彩絵の具が柔らかく滲む作品画面からは、水沢さんのメッセージが皆さんにきちんと届けられたと感じました。

水沢さんの文章をご紹介させて頂きます。

こんにちは。先日までYUIで個展を開催させて頂いた水沢そらと申します。早いもので、個展が終了してから2週間が経とうとしています。

今回の展示はYUIでは3回目、自分にとっては7回目(地方での巡回展や海外も含めると10回目)となる個展でした。

また今年はちょうど自分がイラストレーションを志してから10年目の年でもあります。

今だから言えるのですが、実はここ数年、僕は自分のイラストレーションに悩むことが多くなってきていました。

もしかしたらご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、今まで僕は「切って、貼る」という切り絵の様な、貼り絵の様な技法をメインとして作品を制作してきました。

これは元々、イラストレーションを志した当初、まだお仕事もした事がない時に、絵の具を上手く使いこなせない時期があり、その時に半ばやけくそで紙を切って有りものの色紙の上に乗せてみたのがそもそもの始まりでした。

その技法を見つけた時はとても自由に感じ、その時に感じていた制作に対する閉塞感が一度に吹き飛んだのを今でも覚えています。

実際、そこからコンペなどにもひっかけて頂き、お仕事も少しずつですがだんだんとご依頼頂けるようになってきました。

ところが、そうしているうちにふと気がつくと、いつからかまたどことなく違和感を感じている自分がいることに気がつきました。

ここ数年の展示はその違和感を払拭するために、個展のテーマやコンセプトを考えてみたり、モチーフを意識してみたり、または画材を変えてみたりもしたのですが、残念ながらその違和感は一向に解消しません。

もちろんその展示、展示でベストを尽くしましたし、今でも後悔は全くないのですが、今から思うと「自分はこういう絵を描く作家なんだ、こういうスタイルでキャリアをスタートさせたのだからそれを守らなくてはいけない」

という自分ルールを勝手に決めて、勝手に縛られて勝手に苦しんでいたんだと思います。

今回、その全てをいったんフラットに戻し、全てのルールを捨て、自分なりに「自分のイラストレーション」を見つめ直したら、とっても気持ちの良い展示ができました。今までで一番気負わず、素直に準備ができた展示だったかもしれません。

もし、ご高覧頂いた皆様に楽しんで頂けたとしたら、僕も嬉しいです。

どうもありがとうございました。

水沢そら

 

―――

 

http://old.spaceyui.com/schedule/mizusawa_sora2019.html

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