2018.06.05:火曜日

 

 

 

「OLD SAILOR TOLD ME」

陸に上がって随分経つが私は大西洋定期航路の船員だった。今もあの夜のことは昨夜のことのように思い出す。気が付くと海図にない海を船はさまよっていた。すべての客室は寝静まっており20ノットで走っているのに波の音すら聞こえない。海の中から私の名前を囁く声が聞こえる、空と海の区別がつかない漆黒の中に私の名前だけがうっすらと光って漂っている。ブリッジから手を出すと誰かが優しく握ってくれる。触れている場所から徐々に溶けていく。いつしか私も客船も海と空に溶け出していた。暗黒の空、漆黒の海、純黒の私・・・光を求めて深く深く潜っていく。空と海と私が混じり合いそれぞれがそれぞれを忘れては再構成される。私の頬をつたった雨水が甲板に落ちるまでの永遠。(北沢夕芸)

北沢夕芸さんの今回の展覧会イメージ、雰囲気を書いて頂きました。

北沢さんの作品世界そのものを物語っていると思います。

イマジネーション豊かなファンタジーと文学の波間を漂いながら北沢さんのイラストレーションの世界へと連れて行かれます。

北沢さんの手腕で、ロマンティックでひりひりとした捕えても捕え難い世界を、これからもずっと指し示して頂きたいです!

http://old.spaceyui.com/schedule/yuki_kitazawa_18.html

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2018.06.05:火曜日

 

 

 

 

今年も、甲斐荘暁子さんは鉄で創るオブジェと平面のペインティング作品の両方の作品を制作し、発表致しました。

鉄の作品は、オブジェだけではなく、重量感のある大きな鉄の平面へのペインティングに挑戦、新しい色彩の世界とプレゼンテーションの形態を表しました。他の、明るい色彩鮮やかなペインティングの作品とは対照的に、深いブルーの生地に光沢あるコーティングがなされた作品がダイナミックに展示されました。

甲斐荘さんの作品の特徴である、夢のような楽園のような色彩と鳥や植物や妖精等のモチーフに彩られた画面からは、瑞々しく楽しい、肯定的な気分が音楽の様に流れます。具象と抽象が絶妙に混ざり合い、二次元と三次元が連なり織り成す作品世界は、独特な味わいを醸成する甲斐荘さん独自のものと思います。

また、鉄のキャンドルスタンドには、クラシックな世界とモダンな今の感覚が融合したとても魅力ある造形のパワーを感じました。

今年はアートディレクターの沢田節子さんのご協力で、Tシャツや紙製のグッズ類もたいへん充実して、楽しい賑わいを添えて下さいました。

http://old.spaceyui.com/schedule/akiko-kainosho_18.html

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2018.05.15:火曜日

 

 

 

 

越智香住 個展「ひそやかな女神たち」、今年は五度目の開催でした。

越智さんの作品には、様々なファクターがちりばめらていて、それがひとつ々に表され、またぎゅっと凝縮されたりと、見応えがたっぷりです。

小さな子供の像などの目線は、人間の悪意や雑念を追い払うかの強さがあり、引き付けられます。また、猫や犬、鳥などの塑像は、生き物への敬意と共に優しい眼差しが人々の共感を呼び、グッズの小さな猫のチャームやペンダントは親密感溢れる感覚です。

周辺の騒がしさや通俗を払いのけるような威厳ある気配と両存するキュートな感性が越智さんの作品の魅力なのだな、とつくづく感じました。

そんな越智さんの作品の力に触れて、多くの方々が画廊を訪れ、そして作品をご購入されました。都会を離れ、山あいに生活の拠点を置かれている越智さんですが、ご主人のSNSで拝見しますととてもおしゃれな感覚で生活なさっておられ、美味しそうなレイアウトも美しいお料理にいつも驚かされております。

大活躍中の女優さん、石田ゆり子さんにも、たいへん丁寧に越智さんの作品をご覧頂きました。石田さんのインスタグラム(大人気!)に、越智さんの作品が登場されることもあるのではないでしょうか?今から楽しみにしております!

http://old.spaceyui.com/schedule/kasumi_ochi_18.html

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2018.05.02:水曜日

 

 

今年の民野さんの作品を見た時すぐに、風景の広がりを感じました。夕暮れ時のハイウェイに灯る光が懐かしさを呼び起こします。

大自然の中、2020年に竣工の公の建物内に展示する大きな作品の計画を依頼されていて、何枚かを民野さんにお願いしておりますが、今回の小さな作品にもそんなイメージが彷佛とする広がりを感じたのでした。

恵まれた自然環境に住む民野さん、最近、自動車免許を取得なさったそうです。次回の個展では、北海道の雄大な自然が作品の中に多く登場しそうです!

静謐で端正な空気感の漂う民野さんの作品は、毎年新しいお客様が増え、ご本人の人柄と相俟って増々人気です。

また、果物や文具、飲物やふと目に留まる何気ない物を描いても、民野さんの作品は優し気にさり気なく人々の心に強く印象を残す様です。

http://old.spaceyui.com/schedule/tamino_hiroyuki_18.html

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2018.04.20:金曜日

 

 

 

 

杉田比呂美さんの展覧会を久しぶりに開催させて頂きました。

わたしは杉田さんが夕焼けの景色を描いた作品や、空や空気が不思議な色をした作品がとても印象的で大好きです。景色の色の不思議感覚と共に、何かSF的な時空のずれ感を楽しませて頂いております。

杉田さんの作品は、そこに描かれる人々も風景も、本当にさり気ない日常のひとこまなのですが、どこか微妙に心が揺すぶられます。

人々の普段の営みが、それぞれの作品画面から生き々と伝わって参りますが、希望や楽しさといった感覚といっしょに、微少な諦観や哀しみといった感情が多分それと意識されない程に絶妙な隠し味的な塩梅で配分されているのではないかと思うのです。

抑制の利いた詩情が作品を見る方々の共感を呼ぶのでは、と感じます。

杉田さんは絵本作家でもあり、文章もたいへん素晴らしくて、今回の作品に添えられた物語にも見入ってしまいました。

この感覚、誰かに似ている?と考えたら、水丸さんでした!

そんな杉田さんから、素敵な文章が寄せられましたので、ご紹介させて頂きます。

久しぶりに個展をさせていただきました。

今回は7年間続いた『小説すばる』の表紙の表紙の中から

選んだ53点の絵です。

どれも日々の暮らしの中で起こる、嬉しいこと、

はっとすること、など、『日常のキラリ』とした

瞬間を切り取った絵です。

連載時に書いた表紙の小さな物語も、

同時に展示しました。

見られる方の年齢を問わず、「懐かしい!」

という言葉をいただいて、

とても嬉しく思いました。

これからも、単調と思われる日々の暮らしの中、

はっとする瞬間を大切にしていきたいと思います。       (杉田比呂美)

http://old.spaceyui.com/schedule/sugita_hiromi_18.html

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2018.04.11:水曜日

 

 

 

星野哲朗さんの作品、今年も大人気でした。ヨーロッパ、特にフランスのプロヴァンス地方を折に触れ訪れていた星野さんは、ワインや作品のモチーフとなるフード類、また建築物や街並を好まれて描かれます。

重厚なペインティング作品ですが、どこかでシェープされた感覚、グラフィカルなテイストに還元された画面は親しみ深く、好感を持って見る方々に受け止めて頂いていると感じております。

星野さんにしか描けない作品の個性は、長年のペインティングのタッチから生まれたオリジナルな画風といえるでしょう。

フランスパンやオリーブの実、カクテルグラス等、人々が共感を持ちながらも、美しく遠くに在るといった風な感慨は、たいへん素晴らしい結実なのではないかと思います。

http://old.spaceyui.com/schedule/teturou_hoshino_18.html

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2018.04.11:水曜日

 

 

深谷良一さんの木の箱の作りの巧みさと美しさは、現在を生きるイラストレーターの技とは何方も想像ができないのではないでしょうか?

平面作品もとても素晴らしく、日本画と区別のつきがたい作風には定評があり、その技術は追随を許さぬものですが、最近では、3度目となる木の箱の展示が大好評です。

小さな木肌に描かれた日本画風のモチーフは、深谷さん独自のスタイルを持ち、思わず手にとってしまいます。まるで現代の巧みの技の様なしかもモダンな作品は、これからも愛されて行くことでしょう。

http://old.spaceyui.com/schedule/ryouichi_hukaya_18.html

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2018.04.04:水曜日

 

 

 

 

堂前守人さんの今年の個展、とても人気がありました。

堂前さんは、函館で、はこだて工芸舎という函館を代表するような歴史的な建物を所有されていて、ご自身を含む多くの工芸作家の作品展示や音楽や演劇のイベント等が開催される多目的スペースを運営されております。函館の良き時代を彷佛とさせる面影を残す建築物です。

作家として活動されながら、はこだて工芸舎のオーナーとしての運営をこなされるのは、本当にたいへんなことと想像致します。今回の展示に来られた、毎年はこだて工芸舎に遊びに行くという東京在住の堂前さんファンの女性から、このスペースがどんなに魅力的な場所かというお話を伺いました。わたしもいつか遊びに伺いたいものです!

また、転勤の多いお父様の仕事上、日本中を転々と引っ越され、九州から北海道までの幾つかの地方での生活を経験され、大人になってからはオーストラリア、ニュージーランドに長く滞在なさったりと、お話を伺っていると、堂前さんの作品の背景が透けて来るようです。

堂前さんの作陶のスタイルは、陶芸の構造体を作り、それに絵を描かれるというものです。器のかたちはシンプルで優しく、野の花や樹々も風にそよぐように自然体にさり気なく描かれています。使う度に愛着の湧く堂前さんの器たちは、展覧会の回を重ねる毎に人気が増して参ります。着彩の美しい存在感ある器と共に、優しい眼差しの堂前さんご本人の引力があるのだと思います。

堂前さんから、文章を寄せられましたのでご紹介させて頂きます。

東京に1週間滞在したあと、弘前に行きました。新幹線に乗って青森まで3時間半。昔のようには遠くに感じられない移動時間ですね。今回は仕事なので続けて1週間滞在しました。東京ではガラス張りの新しい大きなビルを見上げながら歩きましたが、弘前では古い2階建の店舗や木造の日本家屋の世界です。町の中心ににある弘前城の入り口には大きな門があり、その木も扉の鉄の金具も朽ちずに400年も立ち続けています。目の前に広がる雄大な岩木山を眺めながら、60歳になろうとする自分が残りの時間をどう過ごすかと、その門に触れて考えました。

                                                                  (堂前守人)

http://old.spaceyui.com/schedule/norito_doumae_18.html

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2018.03.21:水曜日

 

 

女性はみんな靴好き?男性もでしょうか。何故か靴の形態に魅かれ、取りあえず足をそっと入れたくなってしまう。

フェティシズムチックに靴は広く愛されている、と、独断的見解で思っているのですが、下川路さんの作品は、更にそんな心にぽっと灯りをともす女の人パワーが潜んでいます。

下川路さんは、おしゃれな女性の身の回りにある郷愁を呼ぶファッショナブルなモチーフを題材に銅版画作品で個展を開催して下さっておりましたが、今回初めて布の靴を作り、自作のエッチング作品等のコラージュを加え、素敵なプレゼンテーションが出来上がりました。

ロマンティックなオブジェ作品は、本当にカワイクて魅力的ですが、実は確実な技術や良き時代の思い出と一緒に新しい感覚も合わさった時間の積層といった、ファウンデーションがあってのものなのでした。

オリジナリティ溢れる作品なのに、郷愁を覚える素晴らしい作品展でした。

解き放たれたように自由に前に進んでいらっしゃる下川路さんから、当分目が離せません。

下川路さんの、作品制作に対しての思いを書いて頂きましたのでご紹介させて頂きます。

私には物作りに対する考えを教えて下さった3人の女性がいます。

1人目は専門学校デザイナー科の先生。

夏に行われていたファッションコンクールの一次審査に通り、実物制作に入りました。縫製は友人3人にお願いし、アクセサリー探しに原宿、青山あたりを歩き回りましたが見つからず、学校に戻って先生に相談しました。その時「なければ自分で作りなさい。」

この時の経験が自らの手で作り出すおもしろさを知った初めの1歩でした。

2人目は銅版画工房で指導して下さった先生。

製版を終え試刷りした作品に失敗した箇所があり、先生に見ていただいた時「おもしろく出来たじゃない。失敗と決めつけず、それをうまく生かしなさい。」と言って下さいました。この言葉で楽しみながら作る事を学んだような気がします。

3人目は私の母。

物作りのヒントになる色の綺麗な物、可愛い物が常に生活の中にありました。たとえばレースや刺しゅうのあるハンカチやゴブラン織りのバッグ。特にグレーのリバーシブルコートの内側が色彩豊かなバラ模様だった事は今も鮮明に覚えています。

今回初めて制作した布靴作品は、この3人の女性の教えに支えられて出来たものだと感謝しています。

残念ながら母は2016年の夏に他界しましたが「あら、私の好きなコートのボタンを作品の中に使ってくれたのね。」と喜んでいるでしょうか・・・・

                                                 3月18日     下川路博美

http://old.spaceyui.com/schedule/hiromi_shimokawaji_18.html

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2018.03.14:水曜日

 

 

 

谷口シロウさんの作品、一見さり気なく魅き付けられますが、実際には作品全体に渡り、繊細に構築された背景に湛えられた感覚を覚えます。

登場人物のポーズも、見る人に強くは感じさせないくらいの神話的イメージがまぶされていたり、清潔感ある印象の研究されたテクスチユアが透明感を醸し出しております。

シロウさんは、皆様がご存知の通りに作品の制作と同じくらいにレディシロウのパフォーマンスでも積極的な表現活動をされております。

そして、レディの時もメンズの時も、シロウさんの優しさのエネルギーがご本人全体から溢れステキに人々に注がれて行くのが感じられます。

作家本人と同じように優しく大らかでポピュラリティーのあるイラストレーションですが、シロウさん独自の美意識を見逃してはならない、と思っております。

谷口シロウさんから素敵なメッセージをいただきました。

この度、久しぶりに本格的な個展をさせて頂きました。

新しい、わがままなスタイルになってからの集大成の気持ちで臨みました。

ぶきっちょなので絵に向かう時はいつも初めて描く気分です。

ぎこちなく、それでも少し気持ちのいい線、色ができたら鼻歌気分。

そんな中からイケそうなのを集めてみました。

他人から見たらどれも同じようなのかもしれませんが

自分の中ではいろいろな実験をして、削ったり足したり…

そんな中から次のステップへの道も開けた気がします。

壊し、作り、捨て、塗り重ねるの繰り返し?

生きることは辛さと楽しさのサンドイッチ。

美味しいサンドイッチを頬張るために明日も

白いキャンバスにバターを塗り、

白いパンにペンを突き立てます?

ご覧いただいた皆さま ありがとうございました。

すべての人がハッピーになりますように!

(谷口シロウ)

http://old.spaceyui.com/schedule/shiro_taniguchi_18.html

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