2019.08.05:月曜日

 


 
 
宮本崇輝さんが、扱いの難しいガラスという素材と向き合いその特徴を生かした美しさを追求して行く姿勢は、あまりに自然なので画廊を訪れる人は無論、道を歩きながら作品を目の端に捉えた人々にも伝わって行くのを感じます。

どのような所でどのような直観を得て制作に至るのか、作品ができあがるまで自分が経て来た道のりがどのようなものだったかを何方にも平等にお話しされる宮本さんの純粋な姿が多くの方々の心を打つように思えます。

昨年に続き、作品の中に込められた自然界の情景を映した、透明なガラスと海辺の砂浜や岩肌を感じさせる素材感の対比のあざやかさに、静かに圧倒されて行きます。

今回の展示作品では、あらためて宮本さんの作品の持つ力、そしてその力がすーっと人々に伝わって行く光景を見せて頂きました。

小さなオブジェを手の平に乗せた時の優しい感触と、キラッと輝きのある透明感が一体となった感覚に、親近感を感じて下さる方々が多かったのではないでしょうか?

27〜8才の頃から展示をして頂き、30代も半ばに差し掛かった今、まだまだ大きな可能性を秘められた宮本さんです。作品制作に一途な、そして謙虚な宮本さんのありのままの感じを、そのまま皆様が感じ取って下さる事を、たいへん嬉しく思います。

今回、宮本さんが作成されたとても自然体な、皆様へのご挨拶の文章を掲載させて頂きました。


 

吹きガラスで作品を作る。

窯の中で溶けたガラス。

ドロドロととても柔らかい。

時にまるで生き物の様だ。

ガラスにボクは近づく。

作品になれるよう手助けをする。

手を出し過ぎてはいけない。

手を出さな過ぎてはいけない。

良い塩梅。

ガラスとの距離感。

ガラスとの対話。

偶然と必然。

ボクとガラスの共同作業。

単なる素材だったガラスは作品へと成長する。

するとガラスは記憶と繋がり、無限に広がる。

なだらかな丘。

水平線。

海の中。

雪景色。

紅葉の山。

はっきり何かとは分からない。

だからガラスは無限に広がる。

ガラスとの距離感。

ガラスとの対話。

ボクとガラスの共同作業。

 

宮本 崇輝

 
 

 
http://old.spaceyui.com/schedule/miyamoto_takaki2019.html

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2019.07.31:水曜日

 


 実に31年ぶりとなる、1988年に発表された安西水丸カレンダーシリーズのシルクスクリーン作品展でした。1月から12月迄のテーマ別で、それぞれの月の季節感が楽しく表現された個展だったと思います。中には、何故3月のテーマが「犬?」とか9月は「UFO」なのかしら?などという部分もありましたが、七夕やスイカの女の子、スキーやクリスマスツリー等も登場、12ヶ月の風物詩的な興趣をたっぷりとご堪能頂けたのでは、と思っております。

 そして何より31年経過した現在に於いても、全く古さを感じられないどころか、更にフレッシュな印象でギャラリーにいらした方々に受け止められた事に対しましても、大きな驚きと喜びを感じました。

 1987年か88年の或る日に、安西氏がいつもの様にぶらっとギャラリーにいらっしゃり、三ヶ月置きに四度の個展を開催なさりたいとお申し出下さいました。

 現在の画廊の1/4の広さしかなかった当時の画廊空間を想定なさった上で水丸さんの、楽しく自由に感性を遊ばせる展示の企画構想だったと思います。

 そしてこのシリーズ第一回目の展示は、今回一番人気のあった「8月」のスイカの女の子の原型とも成る子供をモチーフにしたテキスタイルや水丸さんのお習字を額装したりと、リラックスした中にも完成度のある展示、そしてシリーズ第二回目はグッズの為のオリジナルなモチーフを普段仕様の陶器やTシャツに用いたギャラリーとしても初の試みだった展覧会を開催しましたが、それら二回の展示の直後に画廊は急に現在の場所に移転する事になりました。

 既に、作品も人々も当時の小さな空間ではみ出してしまっていたのを見かね、大家さんの早川さん、不動産屋さん、このギャラリーの以前の画廊オーナーの方の三名が一緒に現在の場所への移転へと導いて下さいました。

 自分自身、突然広がってしまう空間のキャパシティーに対応するのがすごく難しかった事を、今でも思い出されます。

 そのような状況の中での、水丸さんのこのシリーズ3度目の個展が「MIZUMARU CALENDAR」でした。

 通常の作品としておなじみの、細い線で描かれる卓上のモチーフや水平ライン等とで構成される美しく格好良いスタイルの作品とは意を異にする、太いラインによるキュートなキャラクターたちの登場に、ご覧になる方々も新鮮な印象をお持ち下さいました。

 水丸さんも画廊空間が広がった事で、大きな画面に大らかなキャラクターたちを生み出して下さったのかも知れません。

 あらためて過去を振り返りますと、SPACE YUIは、本当にたくさんの水丸さんとの展覧会の思い出に溢れている事に気付かされます。

 毎年続けて来たシルクスクリーン作品の制作も、敢て意識的に続けて来た訳ではございませんが、30年以上続けて参りますと自然に種類は数多くなります。

 作品の種類は多いのですが、水丸氏が版画家ではない事からエディションはどの作品もたいへん数少なく、本当に貴重なものと感じております。それでも、生前の水丸さんは、常に若い方々へ向けて、できる限り低めの価格での提供を求めておられました。画廊でも勿論異存なく、常に水丸氏と同じ感覚で歩んで参りました。

 水丸さんとの歩みはまだまだ続いていて、新しく水丸さんの作品に触れられた若い方々、そして従来のファンの方々へと、お届けしきれていない才気に溢れた力をご紹介する機会が待たれます。

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/mizumaru_anzai2019.html

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2019.07.23:火曜日

 



 
木村晴美さんの作品展、とても人気で、驚くほどたくさんの方々にご来廊いただきました。

 木村晴美さんの作品画面の、澄みわたる深い色合いの色調は、既視感のない素晴らしくオリジナリティのある「色彩の世界」でした。

 以前から感じていた事に、落ち着いた深く心に響く色彩は、どうしても明度や彩度が低くなりがちという自分の中のぼんやりとした見解の様なものがありましたが、木村さんの作品によって、見事に覆されました。

 作品の色彩の澄明さと共に届けられるモチーフの潔い形象も、たいへん視覚に心地よく感じられ、作品に囲まれてギャラリーに佇みますと、伝わって来る静かだけれど力強いパワーに魅きつけられます。

 深くて透明感のある色彩を一体どうして表現しているのかと、伺ってみました。すぐに教えて頂けましたが、そこに至るにはずいぶんと研究をされた事と想像いたします。

 素敵な感性と、研究されその感性をあまねく生かす技術を会得された作品のエネルギーは、作品を観る方々の心にストレートに届けられたと感じます。

 ご本人はとても穏やかな方ですが、そのパワーには秘められた力を感じます。今後の木村晴美さんの作品もたいへん楽しみです。

 フランスで出版された絵本には、ご自分で文章も書かれている木村晴美さんに今回の作品展についてのコメントをお願い致しました。画廊についてお寄せ頂いた文章の部分は恐縮なのですが、以下にご紹介させて頂きます。

 


 

スペースユイさんで個展をさせていただきたい!ドキドキしながら作品ファイルを持ち、ギャラリーを訪問したのが2016年。しかし人気のユイさんは、その時すでにスケジュールがいっぱいで念願叶わず。2018年、再チャレンジで今回の展覧会が実現しました!

これまで個展では、テーマや色合いを始めから決め、不思議な生き物たちが登場するものばかり描いていましたが、今回はそれらの作品とはちょっと違う雰囲気のものを描きたいと思い、日々思うこと、そこから膨らむイメージを、その日その時感じる色で描きました。いつもと違ったリズムで描いてみると、新鮮な気持ちで画面に向かうことができ、絵を描くことの楽しさが増え、自分にとって新しい一歩となった気がします。

ご来場くださいました方、興味を持ってくださいました方、そしてスペースユイさん、心より厚く感謝申し上げます。

この展覧会で皆さまからいただいたエネルギーを糧に、これからも制作に励んでまいりたいと思います。(木村晴美)

 

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/harumi_kimura2019.html

 

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2019.07.12:金曜日

 

 

 

山崎若菜さんの個展「ZONE」、好奇心をかきたてられるイマジネーションの世界に圧倒されました!

画面に描かれる明るくポップな力に満ちた色彩は、画廊を訪れ作品を観る人々に元気エネルギーを注入していました!

若菜さんの作品は、一見、無意識の泉から無限に湧き上がって来るように見受けられます。まるで作家の手や腕から自然に生まれて来るイラストレーションのように感じられるのですが、大方の意に反して一枚一枚の作品はたいへん構築的なコンストラクションを持って表現されている様です。パワー全開の画面の奥に潜む設計図が何だかよけい楽しさのバイブレーションを大きくしているのでしょう。

男の子やロボット、キャラクター世界の生き物や動物たちが織り成す作品世界は、小さな虫や植物たちも参加して、大らかなひとつの宇宙を完成させている、と感じます。

一見ドライな表情の男の子たち、登場する者たちが、互いがクールに独立しながらも友愛の感覚を醸し出し、ポジティブオーラを振りまきながら若菜さんワールドを形成しているのだと思います。

山崎若菜さんの会期には、男性のお客様、そして海外からのファンの方がたいへん多くて驚かされました。売れっ子の若菜さん、会期中にもお仕事のオファーがずいぶんありましたが、若菜さんのイラストレーション作品がもっともっと街に溢れて、この国の人々、世界の人々を元気にしてほしいです!
 


 
 

http://old.spaceyui.com/schedule/wakana_yamazaki2019.html

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2019.07.01:月曜日

 

 
 

天野智也さんの作陶展、今年で12年連続での12回目の開催でしたが、本当に大好評の展覧会でした。

岡山県備前市からいらして下さる天野さんですので、最初のうちは、アウェイ開催という事もあり画廊サイドも心配しておりましたが、回を重ねる毎にお客様が増えて行き、驚くほどの人気会期となって参りました。

最近は、天野さんの季節が近づきますとスタッフも体力づくりにいそしみます!登り窯を炊く日にちの都合、自然と毎年の会期が決って来るのです。

天野さんの作品は、グラフィックデザインされ、またプロダクトデザインのシャープさもあり、それでいて柔らかな人の体温を感じさせる、色々な方向性を兼ね揃えた作品です。毎年楽しみにして下さるファンの方々に加え、道行く人たちの眼も引いて、新たなお客様が絶えません。

毎年、開催される作品展での展示作品の中には定番としてのオーソドックスな陶器があり、また時代の風を感じさせる新しい顏の作品もあり、楽しさが満載です。

見る側にとりましては嬉しい限りですが、制作される天野さんは涼しい顔をされていますが、その努力を想像致しますと頭が下がる思いです。

画廊では、備前焼の天野知也さんの展覧会の開始とほぼ同時期に、天野さんよりも一回り年上の上田光春さんという方の信楽陶芸展を何度か続けて開催しました。

お二人は、当時岡山で活躍されていたギャラリストの薮多門さんにご紹介頂きました。焼き物が大好きで展覧会を開きたくても作家を誰も知らない私にとって、素晴らしい出来事でした。

天野さんはその後毎年開催される様になりましたが、一方の上田さんは伝統的な信楽の世界での6代目直方を襲名される事となり、異なる方向へと歩まれて行きました。

日々使う陶器や自由な作品作りといった、多様な世界へと広がりを見せる天野さんの作品の方がスペースユイの方向性とどうしてもリンク致しますが、伝統の世界の頂点でご活躍される上田さんの様な方がいらっしゃり、バランスがとれて行くのだと思います。

そんな上田さんから天野さんに(お二人はお会いした事がないのですが)fbで温かなエールを送って頂いた事が私にとっても天野さんにとりましても(多分!)、大きな励みになりました。

それから、備前の山里に住いとアトリエを構える天野さんが毎年持って来られる可憐な表情の野の花々や枝ぶりのステキな緑輝く葉っぱが土の作品をより美しく際立たせる興趣も皆が楽しみにしております。自然流の生け花、とても様になっています!

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/tomoya_amano2019.html

 

 

 

 

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2019.06.25:火曜日

 

 

 

 

あずみ虫さんの今回の展示、とても充実していた、と評判でした。

昨年アラスカに数ヶ月間滞在され、しっかりと自然界のエネルギーをご自身にチャージされたご様子のあずみ虫さんです。

ずっと以前から動物がお好きなあずみ虫さんの作品モチーフとして、よくシロクマや鳥、毛皮のフード付きのコートを着た女の子、楽しくも厳しさを感じさせる風景が多出していた様に思います。今回は、アラスカでの生活から日本に戻られてからの作品でしたが、以前の展示の続編の様にすんなりと、でもたいへんフレッシュな感覚で拝見することができたと感じております。

作品に描かれ表現された澄んだ空気や水や山々の感じが、みずみずしく見る側に語りかけます。同じ時代を生きていても、スマホや電化製品に囲まれていても尚、物事、物語の始まり、神話的な領域を残すアラスカの大地から掬いとったものを、見事に表現された見応えのある作品ばかりが紹介されました。

空のこぼれる様な星々と共にある山や川、様々な動物達、呪術性さえ残すトーテンポールなどをあずみ虫さんの感性で切り取ったグラフィカルなキュートなオリジナリティ溢れる素敵な展覧会でした。

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/azumimushi2019.html

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2019.06.18:火曜日

 

 

今年の北沢有芸さんの作品展、いつもの年に比べると色彩も優しく柔らかな印象が強かったと思います。

そして、毎年の展示で感じることなのですが、北沢さんの作品の一枚一枚には物語があり、そして次の一枚にも繋がっている・・・。しかしその物語はどこに向って行き、どういう風に収束して行くのか謎めいて見えないのです。

常に、一週間の会期中にストーリーの先がもう少しで見えそうですが、やはり見えないのです。自然と、もやもや感がつきまといます。

でも、そんな感じこそが、北沢さんの目ざす所なのかも知れません!

以前の個展でも常にテーマを決めて、主人公が時空間を彷徨うかの様に不思議な世界を見せて下さっていました。

現代の感覚にネイティブな感性が融合し、エネルギーが強まる感覚をとても面白いと思います。

イマジネーション豊かに物語を紡ぎ、同時代的に、時にはSF的にヴィジュアル表現を試みられる北沢夕芸さんの作品は、オリジナルな感性に溢れていると感じます。

北沢さんの、今回の展示作品の制作中のメモから拾ったキーワードをご紹介させて頂きます。

麦わら帽子、強風、風になびく髪、フランス人、女性、マルセイユ、港、港町、カモメ、猫、ジャン=ポール・ベルモンド、山、断崖、切り立った崖、ヌーヴェル・ヴァーグ、スクーター、ヨット、タンカー、椰子の木、ベンチ、木の椅子、ベランダ、テラス、人魚、雲、水面に映る雨、マリー、砂丘、ライオン、海を見ていたマリー、穏やかな色と形。

(北沢夕芸)

 

 

 
 
 
http://old.spaceyui.com/schedule/yuki_kitazawa2019.html

 

 

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2019.06.10:月曜日

 

 

 

個展に展示された星野さんの作品はたいへんな力量の作品ばかりで、そのエネルギーの総量は大きく、相当に見応えあるものでした。

漆黒のようで実は沢山の色彩が合わさりでき上がったバックの魅力的なテクスチュアに浮かび上がるワイングラスやシャンパングラスの、エッジの効いた透明感は、強く印象に残ります。

重みのある色彩と質感による作品は、簡単にお部屋にかざる事が躊躇される程の完成度ですが、思わず作品の中の物語に引き込まれずにいられません。或いは作品と観る者の間で知らずに交流が生まれるのかも知れません。

最近、星野さんに画廊ディレクションの仕事でF40(1mx80.3cm)の比較的大きな作品を発注しました。星野さんの敬愛するアールデコ時代の美術家でデザインと絵画の世界を往復したカッサンドルが鋼鉄の船を大胆な構図の美しいポスターに仕上げた様に、 機械や風景が一緒に描かれるという難しいモチーフを見事にこなされ素晴らしい作品を描き上げて頂きました。星野さんのその作品もいつか皆さまにお見せできる予定です。

来年も春に個展の予定がございますので、まだご覧になられておらずご興味のある方にはぜひともお出かけ頂きたいと存じております。

ヨーロッパのテイストがずっとテーマで描き続けている星野さんの作品は、レストランや西欧テイストの空間に、新しい感性でフィットすると感じています。

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/teturou_hoshino2019.html

 

 

 

 

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2019.05.31:金曜日

 

 


今年の松本圭以子さんの展示のテーマは「猫」でした!

ペインティングされたブルーの猫の案内状は、青い色の猫という表現もめずらしく、更に大きな眼の表情が松本さんに自画像の様に似ていて話題になりました。

松本さんは、イラストレーションの世界でも実力の持ち主として知られていて、長いキャリアの作家さんですが、常に新しいテーマや表現を求め達成されておられます。

作家の野中柊さんとのお仕事では、絵本や児童書など、素晴らしい作品を創り続けていらして、今回の展覧会では「本屋さんのルビねこ」は、本当に可愛らしい野中柊さんの家の猫さんがモデルでした!

また、NYの帰国子女でもある松本さんの作風は自然にバタクサイ感覚があって、翻訳小説の装幀やイラストレーションの仕事も絶えません。

自らが撮られた写真も参加してのコラージュ作品、縫いぐるみやアクセサリー等、守備範囲の広さも作家としての能力の高さと思います。

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/keiko_matumoto2019.html

 

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2019.05.27:月曜日

 

 

 

 

今回当ギャラリーに於いて初めて展示頂いた長谷川洋子さんの作品展では、確かな描写力を礎にこの上なく誠実な制作姿勢に裏打ちされた優美な作品の数々を見せて頂く事ができました。

オリジナリティー溢れ、キラキラと美しさがこぼれるかに感じられる素晴らしい作品が発表され、大勢の方を楽しませて下さいました。

長谷川さんは絹などの布やレース、様々な形のヴィンテージのビーズなど、光る素材を含む多様な画材を絵の具の様に用いて作品を創られます。

細いピンセットの先で、デリケイトな質感の布と小さな宝石たちを貼り付け埋め込んで、大きさも画題も様々に創り上げて行く長谷川洋子さんの作品は、たいへんな集中力と技術を必要とするのではないかと思います。

長谷川さんの作品制作過程に於いて、時間は絵の具でストレートに描く様には流れず、かなりご苦労されている事もあるのではないかと想像されます。細かな作業の積み重ねからでき上がるロマンティックな雄大な風景画を拝見すると、長谷川さんのイマジネーションの豊かさに感嘆致します。

工芸とも言えない、イラストレーションとも言い切れない、カテゴリーを突き抜けた表現形態、独自の様式を創り上げた長谷川さんの自由な感性を多くの方々が愛情を持って待ちうけておられます。

麗しく小さな宝石が散りばめられたかのマチエールの作品を創られる長谷川洋子さんのこれからのご活躍が楽しみですし、この様な女性らしい優し気な作品の内側には、きちんと企画され、みなさまの手に渡って行く迄へと続く細やかな配慮が含まれ、男性的とも言える構築力が伴っているように思います。

その様な個性がトータルに長谷川作品の魅力へと醸成されて行くのでしょう。 作家さんご自身の楚々とした美しい風情も画風とリンクして作品の瑞々しさを際立たせておりました。

今回は、長谷川さんにも文章をお寄せ頂きました。まだ学生の頃のお話等、憧れのギャラリー等と、恐縮ですが、長谷川さんのすっきりとした清明なコメントをぜひご覧下さい。

 

18歳の頃の話です。

イラストレーターになりたかった私は表参道の何軒かのギャラリーを美術大学の教授より教えていただき、初めてスペースユイを訪れました。

その時若さ故のパワーで「私イラストレーターになりたいので絵を見てください」とオーナーの木村さんに声をお掛けしました。

本当に酷い絵だったと思うのですが、「イラストレーターになりたいのね。大丈夫なれるわよ」とにっこりと微笑んでくださった事を今でも鮮明に覚えております。

以後ずっと憧れのギャラリーだったのですが、20年経ち(数えてみてびっくりでした。)今回縁があり個展を開催させて頂くこととなりました。

2014年に半年ほど休業をしてリフレッシュの為渡仏をしたのですが、結局帰国後も仕事に追われ出産、育児とバタバタとしてしまいこの時の美しい風景を描けていない事がとても心にひっかかっており、今回は風景画にチャレンジしようと決意しました。

5月ですし爽やかな色を、水色がいい」スイスのレマン湖のベンチに腰掛けながらぼーっと遊覧船を眺めていた静寂なひと時をまず描きたいと頭に浮かびました。

こちらは今回のDMにも使いとても好評でした。

そして、顧客さまからオーダーを頂いていたフランス・ジヴェルニーのモネの庭園、コペンハーゲンの薔薇のアーチのある小径、イメージは次から次へと湧いてきて結局描ききれませんでした。

近年の仕事の作品では「2017Afternoon Tea Mother’s Day」「ならファミリー2周年記念ビジュアル」「スター☆トュインクルプリキュア/BANDAI」などを展示しました。

プリキュアの虹の天の川を描いた作品は小さなお子様たち(そしてママたちが)が目をキラキラとさせながらご覧頂き思い思いに感想を述べ、新鮮な気持ちを頂きました。

「遠い水平線」今回の展示を行うにあたりこちらのタイトルがすっと思い浮かびました。

日本は島国ですので地平線ではなく水の向こうに思いを馳せるようなロマンを、ショートトリップ感をご来場者様に体験して頂きたいと願いましたが、いかがでしたでしょうか。

少しでも安らぎのひと時をお過ごしいただけたなら幸いです。

最後に常に頭にある個展におけるコンセプトなのですが、非日常的であったり明快に綺麗である事、アートに興味がない方でもお花をご覧いただくように暮らしを彩る作品をこれからも制作して行きたいと考えております。

また次回のスペースユイでの個展を夢見て

2019525日 長谷川洋子

 

 

 

 

http://old.spaceyui.com/schedule/yoko_hasegawa2019.html

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