山田博之さんの作品もお話も、気持ち良くはっきりしていて淀みがありません。ポジティブな陽性な山田さんの作品は、展覧会でも常に新しい展開で私たちを楽しませて下さいます。
今年のテーマは、クレヨンを用いたスクラッチ。思わずお部屋に飾りたくなる作品のセンスは、今回作品をご覧下さった方々にも伝わり、多くの方々の手へと渡って参りました。
山田さん、毎日フェイスブックに作品を更新されていて、その天衣無縫なアウトプット振りを楽しませて頂きながらも、時々創造の泉が枯れてしまわないかと心配いたしますが、こちらの杞憂のようでした!
山田さんは呼吸するように作品を紡ぎ、息を吸い込むように自然と日々のアイデアをインプット、そして作品が生まれて来るようです。
山田さんの脳内は巨大な想像力を湛える器とリンクしているのでしょうか?本来的に創造の泉は無限なのかも知れませんが、3次元へと組み込むパイプを掴んでいる山田さんはすごい!とおもいます。
高橋春夫さんの器を使っていますと、何故か自然に良い気分になります。白磁と粉引きの白い器を当画廊で取り扱うのは、昨年の高橋さんの展覧会が初めてでした。
白磁は、器の芯から白い色の磁器でできていて、硬質な美しさが魅力です。
専門家ではないので他の方々の作品を多くは知りませんが、高橋さんの白磁の器は粉引きと近い感覚なのではないかと想像いたします。
粉引きは、土を用いて成形した器に白磁を粉砕し水に溶いた液体をくぐらせて作るものですので、白磁に比べて柔らかな感覚で、その風合いに安らぎを覚えます。
一方、白磁は粉引きの様なニュアンスはなく、美しいその肌合いはとてもクールに見えますが、使った印象では全然冷たさは感じられず、綺麗なフォルムと表面素材から感じるのはコミュニケーションできる温かな楽しい使用感ばかりなのです。
最初は食器戸棚にしまっていた小さな白磁の皿を使い始めたら、不意を突かれた様な愛着が湧いて参りました。
繰り返し作られ、繰り返し人々に使われている食器として陶磁器を、これ迄のものよりも更に納得の行く魅力あるものへと作り続けて行くのは容易な事ではないと思います。
シンプルな白一色の器に込められた高橋さんの感性の確かさをとても大切なものと感じております。
https://www.instagram.com/p/BehCKYjBc_O/?taken-by=spaceyui_aoyama
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絵の動く画像はこちらからご覧下さい。
中谷日出さんには十数年も前に、今では3Dプリンターも珍しくありませんが当時は斬新すぎて人々に共感して頂くのも難しかった3Dコンピューターグラフィック作品の展示、そしてナノゲノムをテーマにした作品を顕微鏡で覗くという画期的なスタイルの展覧会も開催頂きました。
実験的な作品制作の姿勢は変わらず今回の展覧会へと続いている様に感じますが、2018年の中谷日出個展「映像・美術・記号」では、大分人々との距離が近づいているのではないかと思われます。
まさにアートアンドサイエンスというテーマでの重量感のある作品展示と、先端テクノロジーにより、更に人々を驚かせ共に楽しむという感覚の展覧会の姿勢は、ずっと一貫していると感じております。
そして今回の中谷日出さんの作品から、私たちが通常何気なく見ている物や空間などを、一旦無造作な意識から、意図して認識し直す事の大切さ、そしてそれをもう一度感性の領域へとフィードバックしてからイメージをさらに膨らませていく、というメッセージを受け取りました。
知的な分析とそれらに基づく視線は、科学や学問の分野のみならず、創作表現の場に於いても当然着目すべき視点なのかも知れません。また中谷さんの明晰な視点から生み出される作品に於いては、客観性の影響やマーケティング的なものを重視したものへと傾きすぎない様、もう片方の世界へと解放されていく揺れ幅も感じます。
どちらにしましても、感性の領域を表現していくということは、見えざる本質的なものを掴みとるという姿勢なしには、語れないものと思います。
中谷日出さんが、今回提示されたテクノロジーを駆使した作品からは、その画像から受ける先進的なイメージと共にたゆたう様な光や樹々のそよぎ、美しい水の流れや人間の所作などといった、人々との共有意識を追求した温かなものが感じられました。
http://old.spaceyui.com/schedule/hide_nakaya_18.html
AAAAA
松本圭以子さんの展覧会タイトルが面白く、改めて作品を拝見すると、成る程!と納得させられものがあります。
Visionary ー空想家ー、聞き慣れない言葉ですが興味を誘う響きのフレイズが異世界へと誘うかのようです。
松本さんの普段の作品でも感じる事ですが、想像力豊かなイメージが一枚一枚の作品画面に定着して既視の感覚を伴った完成度の高さを感じさせられます。
今回は、パステル画やご自分で撮影された写真を用いたコラージュ作品が展示されました。また、様々なモチーフで構成したBOX ART 作品もたいへん見応えのあるものでした。
松本さんのイメージする記憶を元に再構成された場面が、二次元だけでなく三次元作品としても制作されて、観る方々の想像力を刺激し、とても楽しませて下さいました。
北見隆
北見隆 谷口広樹 二人展「一陽来福」、楽しくも緊張感ある展示が終了致しました。
2018年の最初を彩る催しとして、何か皆様の気持がぱあっと明るく華やぐ展示を開催したいと考え、瞬時にお二人のお顔を思い浮かべました。お正月ですし、招福、縁起もの、インターナショナル、と、頭の中で連想(妄想?)のキーワードが続きました。
そのような勝手なイメージをご理解下さった北見隆さんは、西欧からの招福モチーフを、上手い具合に絵馬という日本古来のキャンバスに載せて描いて下さいました。
また谷口広樹さんの、クオリティー高い多岐に渡るご活躍は皆様がご存知の通りですが、今回は和の題材や感覚をオリジナリティー溢れる捉え方で描かれる谷口さんの画風に強く魅かれるものがあり、北見隆さんとの企画展へのご参加をお願い致しました。
北見さんの南蛮渡来といった趣のあるペインティングの絵馬に対し、谷口さんはモダンな日本の絵馬や氏のライフワーク的テーマである猿(テーマは間抜けな神様の使い)を軽やかに実にセンス良く表現して下さいました。
北見隆さんは、ギャラリー創業の頃からのお付き合いがあり、都度素敵に力を増す個展を何度も開催して頂いております。BOX OPERAというイレギュラーに開催する展覧会を中心になり企画して頂いたり、また聖書の絵本を編集させて頂き、それがブラスティラヴァ金の絵本賞を受賞される等、様々な場面でのいっしょのお仕事の経験があってそのお力と信頼のおける人間性に常に触れさせて頂いております。
現代のイラストレーション界を代表する力量あるお二人の才能の競合、そして融合を、ファンの方々を代表し、ずっと拝見させて頂きたいと感じております。
谷口広樹
http://old.spaceyui.com/schedule/takashi-kitami_hiroki-taniguchi_18.html
AAAAA
竹井千佳・矢吹申彦・田村セツコ
水沢そら個展、冬の三人展、と12月の企画展が続きました。個展とグループ展と、それぞれに表情が異なり、また水沢そらさんの今回のテーマは視点がかなり個性的でしたが、華やいだ作品とたくさんの人々の流れが賑やかにこの季節を彩って下さいました。
三人展の中の竹井千佳さんと、水沢そらさんは来年再来年と、個展開催と同時に作品集を出版する予定がありますので、ご期待下さい。
ベテランイラストレーターの優れた作品集を発刊する事で広く知られている出版社の方が、今回若手作家の作品集を出版したいとの事で、お二人に決定したという次第です。
竹井千佳さんは弾ける様に明るい、一方で醒めた眼差しを併せ持つ女の子たちを楽し気に描きますが、彼女のテクニックは見事にプロフェッショナル精神に満ちており、作品画面の美しい仕上がりには定評があります。
創作活動に於ける紙媒体、広告、またTVの世界へと多岐に渡る広がりに、竹井さんの更なる活躍が期待されます。
また水沢そらさんの個展は今回2度目ですが、いつでも大人気です!
最初の個展のタイトルである「VOID」には、意表を突かれましたが、今回の個展「ストレンジオブセッション」では、テーマのインパクトにまたも驚かされました。
VOID=虚空、空っぽ、無限、深淵、そしてそらさん云く悪魔学においては進化の終着点。
OBSESSION=強迫観念、妄想、執念。
虚空へと眼差しを向ける少女や登場者たちを丁寧に々、紙を切り抜き、後、着彩するという気の遠くなる様な作業を経て制作していきます。空っぽであり深淵なこの世界を、何ものかに駆られて通り抜けて行きながらもポジティブなエネルギーの予感(希望?)を孕んだ作品は、そらさん自身なのでしょうか?興味は尽きません。
お話が前後してしまいますが「冬の三人展」は、最早、画廊の冬の風物詩になりつつある様です。今回はベテランの矢吹申彦さんと田村セツコさんが若手の竹井千佳さんを全面へと押し出す様なかたちで進めて参りましたが、来年は矢吹さんが中心となるかも知れません。
元はと言えば、田村セツコさん、水森亜土さんが中心だったこの展覧会です。ささめやゆきさんがこのおふたりにはさまれた三人展を開催したという懐かしい思い出もございます。人見知りの筈の亜土さんがささめやさんを気に入ってしまって、ささめやさん、何度もなんどもお食事に誘われておりました。
雑誌「anan」の絵本大賞をとられ、今は岩手県に在住の高田せい子さんに登場頂いた年もありました。
最後に水沢そらさんのメッセージをご紹介させて頂きます。
↓
昨年に引き続き2度目のスペースユイでの個展。
今回は自分の描きたいものを自由に描く。
という実にシンプルな目的を心に留め、作品を制作しました。ひょっとすると原点回帰だったのかもしれません。
また描きすすめるうち、ひょんなことよりボーヒーくんという新しい友人とも出会い、
これからますます描くのが楽しくなっていく予感がしています。
自分にとって個展を開くという事は、作品の制作期間はもちろん、
煩雑な事務作業も含め、その全てが作家としての自分を見つめ直す、とても重要な行為だと思っています。
また機会ございましたら、ご高覧頂けますと幸いです。
ありがとうございました。
水沢そら
矢吹申彦
http://old.spaceyui.com/schedule/sora_mizusawa_17.html
http://old.spaceyui.com/schedule/tamura-setsuko%e3%83%bbyabuki-nobuhiko%e3%83%bbtakei-chika_17.html
AAAAA
既成のセオリーや理論的な概念などといったものから軽~く解放された、小渕ももさんの作品は、だからこその驚きもあって、自由な画面が心地よいのではと思います。
小渕ももさんの天衣無縫の大胆さが損なわれることのない様、ずっと独特に柔らかな色彩をキャンバスに描き続けられる事を思っております。
小池アミイゴさんが、小渕ももさんの展示にいらしてfbに素敵なメッセージを残して下さいました。
↓
そして青山のyuiへ、小渕ももさんの描いたゴルティエのトルソに会いに。
絵を描く楽しさだけで描いたっていうモードの世界は、マッツの世界と通底する孤独であることの喜びに彩られ、おおらかで、可愛らしくて、ああ、この感じ手放してはならないなと思ったよ。(小池アミイゴ)
http://old.spaceyui.com/schedule/momo_obuchi_17.html
AAAAA
その空間に立った時・・・・、
涼しげな香りや、静かな川の流れの音のような爽やかさに包まれます。
この世界はどうなってしまうのだろう、と情報の洪水に押しつぶされそうな時に、柔らかく心をリセットに導いてくれるかのようです。
立川一美さんの作品は刺繍によって表されますが、白く清潔な布などをキャンバスにして描かれた花々や鳥たちは、糸や布の狭間から優しげに、時には強く残る優しさで囁きかけます。
立川さんからの文章です。
↓
いつの間にか、6度目のユイでの個展になりました。
一針ひと針の作業なので、なかなか多くの作品を作る事はできませんが、様々な布や糸との出会いを大切に、それらの組み合わせのおもしろさを、これからも追求していきたいです。(立川一美)
http://old.spaceyui.com/schedule/kazumi_tachikawa_17.html
AAAAA
その作品と共に、周辺にハッピーなオーラを振りまく須川まきこさんがギャラリーを最初に訪れ、個展を開催してから早十年も経ってしまいました。
その頃と全く変わらず、奇跡の様に永遠の少女のままのまきこさんです!
作品に繰り返し描かれる美しい模様のレース、そしてそんなレースを身にまとう無邪気な女の子たちの肢体は、健康的かつドライなエロスといったら良いのでしょうか。その独特な魅力は、須川まきこさんだけの表現と思います。
また作品を描く時に、息を止めるような緊張を伴うのではと容易に想像できるロットリングで描く手法と、そんな画法と対極的に柔らかな女の子やレースの描写、という揺れ幅も、須川さんの実力と人を魅きつける力量を彷彿とさせます。
須川まきこさんは、たいへんな経験を乗り越えられた経緯を糧に、無意識のうちにご自身を大きく育まれ、大らかに柔らかに人々を包み込む力を得たのかも知れません。
まきこさん、そしてまきこさんと共に同時代を歩む、作品の内外に住む少女たちの未来に、ひかりある事を想像致します。
須川まきこさんの文章を以下にご紹介させていただきます。
↓
今回は華やかなデコスタイルに身を包んだ女性や、
パラレルワールドを愉しむ女性達も描きました。
個展タイトル「義体」をイメージしたオブジェも含め、
一体化した心地よい空間になり、
お客様にゆっくり見て頂けて嬉しかったです。
個展を開催する季節によって、
テラスにある樹木、ジューンベリーの表情が楽しめるのも
私にとって大きな楽しみの一つです。
紅葉した葉を眺めながら、植物柄のドレスをもっと描いてみたくなりました。
お越し頂き、本当にありがとうございました。(須川まきこ)
http://old.spaceyui.com/schedule/makiko_sugawa_17.html
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2017年11月、皆様と共に待望していた、ささめやゆきさんの展覧会を開催致しました。
以前から興味深い計画を立てておりましたが、ずい分時間を経過してしまい、急きょ新たな内容の展覧会を開催して頂くこととなりました。
「をどるリノカット」というタイトルが示すように、小さな作品画面の中に物語がぎゅっと贅沢に込められて、それこそ観る者の心踊るものでした。
これ迄の人生の中、ささめやさんの経験された事やイマジネーションから紡がれたひとつ々の場面を、大勢のファンの方々と共に、また作品に添えられた小さな珠玉のメッセージと共に、たっぷりと堪能させて頂く事ができました。
また、ささめやさんに今回の展覧会につきましてのコメントをお寄せ頂きましたので、ご紹介させて頂きます。
↓
今回スペースユイでひらいてもらった展覧会のタイトルは「をどるリノカット」としました。はたして躍動していたでしょうか。
リノカットとはいわゆる小学生時代に年賀状などに刷ったゴム版画のことです。近年あまり使われていない画材ですが、マチスやピカソがこの方法でのびやかな作品をつくっています。
同じ版画でも銅版画は薄暗い部屋の裸電球のもとで刷るのが似合ってますが、リノカットは朝の陽光あふれる中でつくるのがいいです。
たくさんの方に見て頂いて幸せでした。
(ささめやゆき)
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