くまざわのりこ
くまざわのりこさんの、天然素材の様に純粋な優しい感触は、この時代に皆さんにとても必要とされていることを感じました。今回は、くまざわさんが長く続けている一保堂の仕事を主に発表致しましたが、同時に、一保堂のお茶をお出しするカフェも試みました。独特なデザインのお茶の缶はたいへん知られており、中味の茶と共に人気がありますが、良質なお茶と、くまざわさんの強烈なまでのやわらかな優しさが、画廊空間いっぱいに充填されたかの様に、皆さんが癒されてお帰りになりました。
京都からのそよ風は、関東圏に住む人々を、眼と、香りと、味覚と、やわらかオーラとで、慰めてくれたかの様でした。
http://old.spaceyui.com/schedule/kumazawa_13.html
画廊は今、西の方角からの風に誘われて、色々なことを計画したり、考えたり、作業したり、を繰り返しています。
信頼している知人が、今年4月に韓国ソウルに「PLUG FACTORY」というアートスペースをオープンします。小さなレジデンスも付いた、大きさはYUIよりも少し広めの魅力的なスペースです。IT関連にひじょうに強い男子たちで、韓国発英語のアートブックの電子書籍の事業もいっしょに立ち上げ、起業しました。彼らはまた、名古屋にも「ENDUX」というアーティストグッズの店も3月にオープン致します。新しい船出にスペースユイも関わって、今は楽しい準備に追われています。
ソウルの「PLUG FACTORY」は、韓国大統領府の近く、ひじょうに立地の良い場所で、石畳の道沿いの素敵なスペースです。屋根や外観は韓国の伝統的なデザインで、内側は現代のモダンな空間インテリアです。まだ行っておらず、ビデオで見ただけですが、皆さんにご紹介できる日を楽しみにしています。
また、広島県福山市の重要文化財の古民家を建築家が大改装し、1階2階を合わせると160坪ある空間をアートインレジデンスやギャラリー、カフェ、ショップ等で構成する、というひとつのアート環境創りのプロジェクトにもお誘いを受けましたが、スペースが広すぎ、運営は自分のキャパを超えていると思われました。場所も直島にも近く、興味深いお話ですが、自分のできる範囲で関わる事ができたら・・・と思い、秋に完成する大角雄三氏設計のこの建造物をとても楽しみにしているところです。このプロジェクトは、画廊企画展、SCIENCE & PRAYINGでもディレクターとしてお世話になっている伊丹裕さんからのお話で、伊丹さんは東京の他、すでに岡山でも活動を開始されています。
そしてもうひとつの西からの風・・・。兵庫県に鶴林寺という丁度鶴が羽を広げた時の様な特徴ある屋根の国宝のお寺があります。こちらのお寺で、今年の10月から11月にかけての約一ヶ月間、木村かほる(筆者の妹なので敬称略)の個展が開催される事になりました。昨年も依頼がありましたが都合で開催できず、石川和男さんに替わって頂き、好評を博しました。 鶴林寺での絵画発表は、 兵庫県の信頼できるギャラリストの薮多門さんの加古川の美術プロジェクトの一環です。このお寺にも今年の秋にはぜひ行ってみたいと思っております。
2011 木村かほる
今、深谷さんの直面されていることは、私たち皆の問題と思います。深谷さん本人は、もうずっと東京にお住まいですが、緑豊かな福島県の広大な土地のご出身で、ご両親は東京に避難していらっしゃいます。ずっと住んでおられた土地を離れて狭い東京で過ごすご両親は、故郷に帰る日を夢見ていらしゃるようです。現在の日本で、様々なところで起きている、既に日常化している風景かも知れません。既に不可能に近い現実を年老われたご両親に告げるのは残酷な事で、それでは一体どんなことや情報が希望へと繋がるのかを思うととても複雑な気持になります。
こうした環境の中での制作は、相当にたいへんな作業であったようですが、無事に展覧会を開催できました。作品は少な目でしたが毎年の様に力がこもっておりました。
深谷良一
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松本圭以子 展「赤い実かがやく」(絵本原画展)は、松本さんの久しぶりの個展でしたが、とても幸福感溢れる楽しい展覧会でした。絵本の原作者の野中柊さん、そうえん社の福島聖氏さん、との奇跡的なコラボレーションともいえる作品展は、多くの方々の応援から開催の運びとなりましたが、こんなにも多くの方々に作品からの温かな感銘を感じとって頂けるという反応もめずらしいことでした。
絵本の原画展は、ともすると1枚1枚の作品として独立して成立するのがむずかしいのですが、今回は、見事に難題がクリアされた素晴らしい作品展となりました。
絵本も追加が追いつかず、すぐに売り切れてしまいました。松本さん、野中さんの次回の絵本が、早くも皆さんから期待されております。
AAAAA
安西水丸展、サイエンス&プレイイング展と企画展が続きました。伊丹裕氏は、現代美術家で、物理学の研究家です。その伊丹氏が率いるサイエンス&プレイイング展は昨年に引き続き好評のうちに幕を閉じました。今年は装身具がメインだったため、空間が昨年よりも少し賑やかな感じでしたが楽しさが加わわりました。自由なイラストレーターははみ出し気味の方々が多くて、伊丹さんのディレクションの中に収まりきりませんでしたが、伊丹さんはすぐに考えをシフトし直されたもようでした!
今回は装身具というテーマだけに、出品者の方々も若い元気一杯な女性アーティストが多く、パンクな感覚のタイツなども出品、伊丹さんの端正な空間把握のインスタレーションとの対比が面白かったです。
また、唯一装身具のプロフェッショナル、長井一馬さんの作品の存在も空間を活性させて下さいました!
出品者:エヴァーソン朋子・小渕もも・オカダミカ × t o k o n e・甲斐荘暁子・国井節・澤奈緒・沢野弓子・須川まきこ・東郷聖美・長井一馬・羽山恵・松川けんし(敬称略)
伊丹裕 作品
長井一馬 作品
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現在、安西水丸個展を開催中です。今年は1984年から個展を開催して頂いている水丸氏の記念の展覧会です。そんな水丸氏について2010年に発表した「ギャラリーノート」という本の一章をご紹介させていただきます。少し長いのですがお読み下さいましたら嬉しく思います。
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そんな日々を過ごしている或る日の事、安西水丸さんがぶらっと画廊に現れた。本当にぶらっと立ち寄られた、という感じだった。その日より以前にもお会いした事があったかどうか覚えていないのだが、ごく自然な感じで「木村さんは僕の後輩なんだってね。イラストレーションの世界にはあまり同じ学校の人がいないですね」と話され「僕に何か出来る事があったら、言って下さい」とおっしゃるのだ。
私は間髪入れずに湯村さんとの事をお話しし、「急なのですが、できたら個展を引き受けて頂けないないでしょうか?」と図々しくもお願いしてしまったのであった。
その日の事を今でも覚えている。まるで神様が舞台の陰から配役をしている様ではないか、と思った。それは安西さんも湯村さんも与り知らぬことであり、私サイドからの一方的な僭越至極な見解なのだが・・・
お二人共イラストレーション表現としては、シンプルな線と面の表現という形態である。そんな表現形態の中に共通するテイストと、全く異なる個性が存在する事を魅力的なその画面の中から発見し、楽しませて頂いたものである。新聞や雑誌や広告にと、様々なジャンルで大活躍のお二人のイラストレーションに出会わない日はなかった様な気がする。まだまだ雑誌も広告も元気な時代であった。
まだ画廊が若い時代に、両雄とも言うべきお二人と出会い、楽しく素晴らしい仕事をご一緒させて頂く事が出来た事をどれ程幸運であったか、今になってしきりに思う。
水丸さんとは 1987年からずっと いくつものシリーズのシルクスクリーン版画を制作して来た。版画作家ではないので、大体10部から20部限定の少ない枚数しか作らない。極めて原画感覚の貴重品だ。すっきりしているが味わい深い、希有な個性の水丸さんの作品はずっと永続的に人気があり、気がついたら20年間もの間売れ続けており、この画廊の宝物の様な存在である。
水丸さんは村上春樹さんと時々仕事を一緒になさるので、そんなご縁からギャラリーでも何度かお二人の展覧会を開催させて頂いた。「夜のくもざる」や「村上かるた」の書籍の原画と言葉の展覧会だ。
世界の村上氏であるが、いつもとても静かな存在感で立っていらして、オープニングパーティーの時来客から村上氏のすぐ横で「きょうは、村上さんはいらっしゃるのですか?」と聞かれた事もある。
水丸さんの著作に「普通の人」という、普通のサラリーマンや主婦の日常を、楽しげに見えるマンガで描いているのだが、ひじょうに何と言ったらよいのかわからないアイロニカルな不条理な空気感があり、水丸さんの知らない側面が浮かび上がって、マンガそのものの面白さと共にどうしても作者にも興味が湧いてしまう。でもその不条理な不思議感覚をどう表現したらよいかわからなかった。そうしたらこの本の解説文を村上春樹さんが書いていらして、この本「普通の人」こそが安西水丸の「極北」ではないか、と表現されていた。村上さんは水丸さんのこうした面をものすごく理解なさっていて、誠に的確な表現で解説して下さっていたに違いないが、私は「水丸氏の極北」というオリジナルな素晴らしい表現にすっかり心を奪われてしまった。見事なプロの表現に、目から鱗が落ちたと同時に未知の領域を発見した気もして、本当に楽しませていただいた記憶が残っている。マンガの具体的な記憶はなく、エッセンスとしての(極北の)記憶しかないのだが、このお二人を流石なものだ、と実に感心したことが昨日の様に思い出される。そんな事を考えながらオープニングの時等静かなさり気ない佇まいでいらっしゃるお二人の姿を思い出すと、思わずくすっと笑ってしまいそうになる。
水丸さんはイラストレーションだけでなく、小説やエッセイもお書きになる。小説、マンガ、イラストレーション、絵本と多くのジャンルの編集者や関係者が水丸さんの才能を見逃さない。
そして不思議なことに、それぞれの表現のジャンルで全く異なる個性を見せつけて下さるのだ。その内のひとつだけに触れたら水丸さんの事を誤解していまいそうな程強い個性的な力を放っている。
例えばエロティックな大人っぽい小説の世界観とマンガの極北の世界は重なってはいても異なっているし、イラストレーション、特に作品としてのイラストレーション等、官能的な隠し味はあるとしても、やはり際立つ個性は、すっきりとした美しい叙情性といったものではないだろうか。また、可愛らしいウサギやキャラクターの登場するシンプルな絵本と官能的な小説を作者を知らずに読んだとして、同じ作者が書いたと理解できる人がいるだろうか。
人間の中に多面的に個性が存在する事は当然の事であるが、今あらためて、こんな風にいくつもの個性をはっきりと分けて率直に表現をしている水丸さんて本当にすごい!と思う。そしてどの世界観をとっても強烈でパワフルなのである。
個人的希望を込めて言わせていただくと、水丸さんの本領はやはりイラストレーションなのだと思う。それも作品としてのイラストレーションだ。
エロティシズムや極北の人間観察、また相反する暖かな眼差し等といった多層構造的隠し味があるからこそ、あのシンプルなラインの美しい作品には現代の人々の心をとらえて離さない力があるのだと思う。
様々な状況の元に生きている人々の胸に共感を呼び起こすのだと思う。
http://old.spaceyui.com/schedule/schedule-pu/mizumaru2_13.html
AAAAA
年を越えて、2013年になってしまいましたが、昨年も沢山の方々にご来廊を頂きましてありがとうございました。いつも画廊へといらして下さる方々、そしてホームページを見て下さる皆様にはたいへん感謝申し上げております。
建石修志
北見隆
木村繁之
北見隆氏、建石修志氏、木村繁之氏の三人
毎年12月は、前半が水森亜土さんや田村セツコさんを中心とした展覧会、後半が北見隆さん、建石修志さん等によるBOX OPERA展と、全く180度異なるタイプの二展覧会ですが、毎年、天使が舞い降りて来る様な展覧会!と、自負致しております。
ずっと田村セツコさんや水森亜土さんの展覧会を続けさせて頂いているのは、作品はもちろんの事、お二人の人間性に強く魅かれているからです。同時代に生まれ、同じ時を駆け抜けてずっと永遠のように活躍を続けられているお二人・・・。周囲の人々を幸せにしたい、という志に胸を打たれます。キュートで可愛らしく幸福なイメージを人々に振りまくお二人ですが、そのプロフェッショナルな姿勢には、女の子の世界を紡ぐイラストレーターなのに、驚くことに男気という言葉が似合う格好よさがあり、感動的です。セツコさんと亜土さん、不世出のツインズ天使かも知れません。今年はお二人にはさまれ大人気サプライズゲストのささめやゆきさんの素晴らしい作品も展示させて頂くことができました。
北見隆さんと建石修志さんの作品の奏でるハーモニーはこの上なく美しい世界をつくりあげます。北見さん独自のモチーフを自由に組み立て表現する感覚と、建石さんの人を寄せ付けない程の精緻な美意識との素晴らしい響宴のよう。展示されている作品からは彼らの多大な分量の知識、磨いた感性の集積が感じられます。そして、作品からは決して想像もできないお二人のピュアーでシャイで人なつこく楽しい人柄も人気の秘密です。今年は個展開催のためお休みの東逸子さんに替わってお二人の強い推薦でご参加を頂いた木村繁之さんの完成度の高い作品には、妖しい魅力がひそんでおりました。
水森亜土
田村セツコ
ささめやゆき
亜土ちゃん、ささめやさん、セツコさんの三人
http://old.spaceyui.com/schedule/boxopera_12.html
http://old.spaceyui.com/exhibition
2012年は、2011年に引き続き、私たちにとって希望を抱くことのむずかしい年だったかも知れませんね。それでも常と変わらず、素敵な作品を創り続けて下さる方々、そして作品の良さを感じ取り理解して下さる方々の存在を、本当にありがたく思っております。
もうずっと以前のことですが、一人の友人から「美術の世界は戦争なんかが起ったらやって行けないね。」と言われて、一瞬返答に詰まりましたが「戦争を起こさない為に美術や表現の仕事がある」と、とっさに答えている自分がいました。
実際に考えるとこれ程困難な課題はありませんが、どんな職業の人でも誇りを持っている人であれば、基本の部分では同じなのではないかと思います。その友人その他の生命の緊張にさらされている様なシリアスな職業を持つ方々を勿論尊敬しておりますが、私は、言葉では説明しきれないものを表そうとする美術表現の世界の方々の意識の高さをいつも誇りに思っているのです。
長年培って来た人々の叡智から生まれた当たり前の様に私たちの社会に作用していたシンプルな決まり事さえも奪われようとしている現在、日本という国の存在自体に誇りが持てなくなってしまいましたが、フリージャーナリストによる一情報によりひとすじの希望をもたらされました。
冤罪の裁判が続き、すっかり信用を失った司法の世界ですが、最高裁が昨年の10月と3月に平成22年の参議院、平成21年の衆議院共に選挙の地方毎の”一票の格差”に関して違憲状態であると判決を言い渡していること、また、昨年12月17日(選挙の翌日)に全国の高裁・高裁支部27カ所に一斉に提出した弁護士グループによる引き続き違憲状態で行われた選挙への訴訟が受理され、裁判所サイドは異例のスピード感覚で対処しているという情報、選挙のやり直しという可能性が充分にあり得るというお話があります。
いっぺんに文面が硬くなってしまいましたが、こういったことを最早私たちには関係ない、とは言えない世の中になってしまったと感じております。裁判所や国や報道機関等、本来自分たちを守ってくれる為の存在であった筈の機関やシステムが信頼を失っていること自体がとても不思議な感覚ですが、思えば正義感の強い人々が本来なら中心となっている場所でした。ネガティブな感情にとらわれがちな今、ずっと立ち向かって下さっていた弁護士グループの方々の存在が本当に心を明るくしてくれます。
何を信じたらよいかわからない、という言葉が多く聞かれます。少なからず自分の中にも存在する意識ですが、どんなジャンルの中にも信頼に足る職責を果たそうと出来る限りの仕事をしている方がいるという現実に出会い、そしてすっかり希望を見失っている中に、もう一度そのひかりを見い出すことができるなら、こんなに嬉しいことはないと思います。
AAAAA
著しく、しかもじわじわと、意識しなければ気がつかないうちに、蝕まれて行く私たちの中の美意識については、きっと皆さんが感じている事と思います。
目にしっかりと見える、計測できるようなものと異なり、何か確かなものを感じ取る感受性や感性といったものは、わかる人にしかわからない、といったまどろっこしさがあり、ある種のやり切れなさがつきまといます。ひじょうに言葉にするのがむずかしい問題なのですが、だからこそ今、私の様な仕事の立場の人間が語らなければならない、と感じました。
例えば、絵画やイラストレーション作品を見て、力を発しているものと、残念ながらそれほどでもないものとがあります。残酷なことですが、それは事実として存在してしまうのです。私自身、絵画畑からの出身ではなく、絵の持つエネルギーについては、本当に傑出した誰にも理解できる名作でない限り感じる事が出来ませんでしたが、年の功というのでしょうか?こんな仕事をしているのに明かしてしまうのが恥ずかしいくらいの見識眼だった自分が、何かを感じることができるようになりました。近くで見てもわからない時には、少し離れてみると作品の放っているエネルギーのようなものを感じるのです。作者が描く時に注いだ感情の分量や思いの感覚が理解できるようになりました。
何を言いたいのかといいますと、感覚的な物事は、単に感覚的と言って終る様なものではない、という事です。人が自分を清潔に保ち好みの衣服を選んで好きな音楽や色彩に囲まれて生活をする、という当たり前の事さえも、皆さんが思っているよりも大きな事がらなのではないか、という問いかけなのです。
この仕事をしながら、3.11以降の自身の感覚の変化を振り返ってみて、自分の核の様な部分は変わっていませんが、生活の情況は一変してしまった事を気付かずにはいられません。
素敵な作品を紹介し、作家と観客の皆様とを繋げて行くという仕事の大筋が変わった訳ではありません。美しさや新しい驚きを紡ぐ作家とクリエイティブな作品をご紹介する喜びは格別なものがありますが、同時に、真実とか、社会の整合性を保つ為のシステムとかといった、今迄気付かずにいた、わたしたちの周辺を取り巻く著しく阻害され、ないがしろにされている状況そのものといったものに対する強い関心と、それら諸々が人々の一つ一つの仕事とリンクせずに存在する事は最早できないのではないか、という感慨が生まれました。
今迄、私たちを取り囲むこの世界は、少なくとも余計な詮索をする必要のない極々普通に暮らせて行ける社会であると思っていましたし、まだまだそう思っている人、またそう思いたい人もおられることでしょう。
優しく温かな普通の人々が、今迄と同じ意識で生きていくことが困難な世の中になってしまっている、という過酷な現実は、表現の仕事に関わっている人々の意識を今、どんなにか混乱に陥らせていることでしょう。
今私たちを取り囲む世界は、作り物のSFの様に迫り来る異様な気配を感じます。オーウェルの1984の世界が以前どんな感想をもたらしたかがまるで冗談の様です。1984の国家は、作られた架空のものでありましたが、30年ほど遅れて日本にやって来たかのようです。
世界の中で、ひとつの国同士の交換が基本的なモデュールであった筈の関係が、乱暴な言い方をすればグローバリゼーションに名前を借りた、利益第一追求企業型のカテゴリーの集団と利益追求が一番ではない価値体系のカテゴリーの人々との関係に、自動的に或いは意図を持ちながら導かれてしまっている様な状況といえる気がします。
私たちの社会を代表する人々が堂々と不正をするばかりでなく、それを裁く立場の機関でさえも疑惑にまみえている事実。そしてそれを報じる機関はそれらと結びつき、正しさも交えながらわかりずらく誤った報道をするという事実。言論の自由を奪うまかり通る姑息な手段を平然とやりのける法人。
わたしたちは、そのような環境の中で今生きていて、会社に行き、学校に通い、何かを表現したり、美しさを提示し、子供たちを育て、何事も無かったかのように今を生きて行かなければなりません。
ずっと以前から不思議に思っていたことがあります。こんなにあらゆるテクノロジーが進歩し、人々の感覚が洗練されても、社会に浸透しきれない還元されない、という思いです。
これは自分の事も含め、自戒をこめて申し上げるのですが、判断を新聞や雑誌、TV等に委ねてしまい、その通りに鵜呑みにしてしまった為に損失した多くの事柄に今ぶつかっているのではないかと思います。
そして自分を省みて反省することも大切ですが、それよりも、この社会のシステムの崩壊といったものに、眼を向けなければならないとも思うのです。
先ほど述べた計測できないものだけれども確かに存在する美しさや存在の力、また前方へと向かうエネルギーに満ちたものや利他的な倫理を感じさせる人や作品等々、人を感動させ生きる糧となる様なものを私たちは作り上げ、分かち合って来ているのだと思います。そしてそれらのことは、目にみえにくく、わからない人には全くわからない場合もある感覚的なものかも知れませんが、人間として最もたいせつなものであり、誰にも譲り渡してはいけないものと思うのです。
ささやかでも、日々の中で何気なく無意識にたいせつにしていたそのような事がらさえも、利益追求型の企業やそれに連なる人々は壊す事を厭わないように感じられます。美術や音楽、演劇、様々な領域から若い才能が羽ばたこうとしていて、それらの芽を健やかに見守り伸ばして行こうとする事が、周辺の人々の自然の感情であると思うのですが、それと逆行している事がらに唖然とさせられます。大人の社会の在り方で、偉大な才能が世に出されず、つぶされて行くことを嘆きます。
自明の公平さを疑いもしなかったこの国の選挙さえも、具体的な不正の証拠が次々と明示されておりますね。この国がまさか言論弾圧等・・、と笑われる方がほとんどと思いますが、大阪で実際にガレキを燃やす事に反対した人の拘束は、まだ今月末迄続く模様なのです。オーウェルの1984を遠い話と感じていた様に、北朝鮮や中国を不自由な国、と気の毒に思う自分がおりましたが、それらの国々の人々は自分達が抑圧されている事を知っていて、日本の場合は全く気付いていない人の方が多いかもしれない、という悲しい事実があります。
こんな状況の中でなすべきことがわからず、立ち止まり嘆くしかない様な気持にさせられてしまいます。そうしてたいへんな時代を私たちは今、生きておりますが、たいせつなものを決して譲り渡す事のないように生きて行く事を考えなければならないのだと思います。当たり前のことの様で、とてもむずかしいことかも知れませんが、そうやって、ひとつひとつ乗り越えて行けたら良いな、と思うのです。
今回、草間彌生さんの作品をご紹介申し上げます。水玉のモチーフや合わせ鏡を用いてオブジェを無限に見せる作品制作やインスタレーション等の活動を続けられ、インターナショナルな名声を得た今も、なお、最前線を走り続け、若者層にもすっかり人気者の草間彌生さん。今回ご縁があり、素晴らしい作品をご紹介できることとなりました。オンラインショップでもぜひご覧下さい。
MIRROR BOX 2001 140×140×140mm
花 PX 1993 840×708mm
レモンスカッシュ (S) 1999 700×588
朝の太陽 1999 830×630
こちらのサイトからご購入頂けます。
http://shop.spaceyui.com/?mode=cate&cbid=1175381&csid=17
AAAAA
ライフワークのテーマである「ハート」をモチーフにずっと作品制作を続ける政岡勢津子さんの作品は、優しさに溢れています。
今回の展覧会「LOVE SINCERELYー心から愛をー」というタイトルにも込められた温かなメッセージが、 画面の鮮やかな色彩、素材感と共に 作品を展示した空間全体から伝わって参りました。
今回のハートは、テーブルウェア、バッグ、ポストカード、Tシャツ等にも展開され、政岡さんの作品を愛好する多くの人々の元へ届けられました。
抽象的な作品と、少女達を熱狂させるキャラクター作家としての側面を持つ政岡さんの次回の展開が早くも期待されます!
http://old.spaceyui.com/schedule/masaoka_12.html
AAAAA
昨年の個展がきっかけとなり、小渕ももさんの白と紺のシンプルな陶器のシリーズができました。和食にも洋食にもティータイムにもお使いになれます!
一点ものではないので、お値段もお手頃でお求めやすくなっております!
ヴィクトリー陶器のCoVブランドで作成され、来年CoVのオンラインショップで発売されますが一足お先に画廊で販売させて頂きます。遠くの方には配送も出来ますので、どうぞメールかお電話でお尋ね下さい。
パンフレットの上から
四角皿 S12cm¥1,200 M15cm¥2,000 L18cm¥2,500
切立ボールセット ¥3,250 (S7.5×6.6, M7.9×7.0, L8.8×7.7)
箸置き ¥620
受皿 ¥1,000 (14.3cm)
フルーツ皿 ¥1,200 (○13.8cm×h 3.8cm)
浅口ボール ¥1,450 (○12.5cm×h 6.0cm)
コーヒー碗 ¥1,250 (○9.5cm×h 6.6cm)
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作家としても作品にしても、ひとつ突き抜けた様に自由な小渕ももさんです。今年のMOMOさんはまた一段とキュートな作品を制作され、みんなを喜ばせてくれました!
スペースユイでは、一番最初の展覧会開催者のMOMOさんですので、僭越ながらずーっと年表を見る様に、MOMOさんの作品の流れを眺めさせて頂いております。
そして、いつも殻を脱ぐ様に新しい色彩に彩られた何か言い表わしずらい強い吸引力を持つ作品を提示される度に驚きも新たなのです!
MOMOさんは、どこまで行くのだろうか、MOMOさんはどれだけ自由になって行くのだろうか、と考えるだけで楽しくなります。
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