門川洋子さんの展覧会、初個展とは思えない力量のある人気の作品展でした。昨年のグループ展、「Point of View」では、高橋キンタローさんのキューレーションによる7名のパワーのある作家さんばかりの展示にご参加頂きました。その時に、門川さんが発表された時の作風とはまた違う感覚を見せて頂くことができました。
微細なデリケイトな線は0.25mmのボールペンなのだそうです!とてもボールペンとは思えない視覚的に心地よい質感には何方も驚かれました。
絵画的、グラフィックな感覚、装飾的なセンスを合わせ持ち、平面作品に於ける全方位的な才能を駆使して、イラストレーターとして大活躍中の門川洋子さんの今後に目が離せません。
以下は門川さんのコメントです。
「なぜ椅子とカトラリーなのですか?」と多くの方に聞かれました。
私の中ではこの2つの組み合わせはとても自然なものだったので、そう質問されることがとても意外だったのですが改めて「なぜだろう?」と自分に問いかけてみました。
食事をする時に人は椅子に座り、手にカトラリーを持つ。その関係はとても近いのです。
今回の展示では人を一切描きませんでしたが「人の痕跡を感じる」と言っていただけたのも、きっとこの両者の関係が近いからだと思いました。
初めての個展、思いもよらないほどの多くの方に足を運んでいただき楽しんでいただけたことが何よりも大きな力となり宝となりました。ありがとうございました。
門川洋子
AAAAA
松本圭以子 個展「Pastoral」
「Pastoral」は、牧歌的な~という意味だそうです。
そのタイトルが示すように、柔らかなシックな色調で表現された牧歌的な静かな情景ばかりを描いた作品の数々が展示されました。
巧みに構成された松本圭以子さんによるゆったりとした時間が流れるようなパステル画材での表現は、光と影のグラデーションの滲み具合や色相、彩度、明度のコンビネーションに作家の身についた表現力が感じ取れます。
http://old.spaceyui.com/schedule/matsumoto-keiko_16.html
Keiko Iritani 個展「でておいで」
精巧に作られたドールハウス的なミニチュアの装飾品や家具等、見ると心が踊るのは、何故なのでしょうか?
Keiko Iritani 個展「でておいで」では、丁寧にそして素敵なセンスで作られた人形とモデルの身の回りの装身具、また動物たちとその環境が、額縁の代りにBOXに収めて展示されました。
小さな人形たちは手足も自由に動かせる等、プロフェッショナルな技術に裏打ちされた完成度の高いプレゼンテーションでした。
白いハコの中に、主人公である人や鳥や動物たちの営む世界が鮮やかに切り取られていて、羽ばたくようにイマジネーションが広がる楽しい展覧会でした。以下は作家の文章です。
今回の個展「でておいで」は私の頭に最初に浮かび これからも続く言葉です
お昼寝の時小さな子供に読み聞かせた絵本
お昼寝の間にそっと絵本から枕元に出てきた子
目覚めて喜ぶ小さな子
その笑顔が今も忘れられません
大人になっても幼い頃の思い出の一冊がきっとあって そこから出てきたら どんな笑顔が見れるのかしらといつも思い浮かべながら作ってきたような気がします
笑顔はConversation と誰かが言っていました
笑顔で沢山の方々と繋がれること そして
これからも探究心を忘れることなく「でておいで」これを私のライフワークにしていこうと思います
今回の個展 悪天候にもかかわらず沢山の方々の笑顔が見れた事を幸せに思います
美しいユイガーデンでの後半 笑顔でお待ちしております ( Keiko Iritani )
AAAAA
展覧会では毎日多くのファンの方々にお出かけ頂き、水沢そらさんの人気と大きな上昇エネルギーを感じることができました。
今という時代の感性を描写された作品の気配に、ギャラリーを訪れる人々が大きく共感を覚えておられる様子がとても印象的でした。
そして、この様に若者たちに受け入れられる作品が示している力を、しっかり受け止めなくてはと感じさせられました。
以下に水沢そらさんの興味深い文章をご紹介させて頂きます。
「VOID」ってなんですか。どういう意味ですか。
今回の展示のタイトルについて、いろんな方に尋ねられました。
この英単語には「何もない、虚空、からっぽ」という意味と同時に「無限、深淵」という意味があります。
僕の描くひとたちは、どこか遠くを見ているな。と描きながらいつも思います。
決して目を合わせてくれないひとたち。生きているのかも死んでいるのかもわからないひとたち。
でも、もしかすると僕の描くあのひとたちが見つめている僕たちの世界こそからっぽで、なんにもない世界なのかもしれないな。
そう期間中にふと思いました。
もうひとつ。VOIDが持つもうひとつの意味である「深淵」という言葉。
悪魔学においては「進化の終着点」を指す言葉でもあるそうですよ。
(水沢そら)
http://old.spaceyui.com/schedule/mizusawa_16.html
AAAAA
スズキコージ ゼレファンタンケル ダンサーズ展・2016
銀座のビルの谷間にひっそりと佇むギャラリーでスズキコージさんの「ゼレファンタンケルダンサー」に出会いました。34年も前の事です!その後、何度もスズキコージさんの個展を開催させて頂く機会に恵まれましたが、その時以来ずっとコージさんの原点とも言える「ゼレファンタンケルダンサー」を忘れる事ができませんでした。そしてこの個展に出向かれた別役実さんもスズキコージさんの作品を気に入って下さり、作品集も出版されました。絵と文とのこれ程素敵なコラボレーションを知りません。この度、この幻の様な「ゼレファンタンケルダンサー」を皆様の視覚に留めておいて欲しくて、版画作品として制作発表させて頂く事となりました。コージ氏の新生ゼレファンタンケルダンサーズたちも登場、会場は音楽に溢れます!
以下に別役実さんの名文をご紹介させて頂きます。
ゼレファンタンケルダンスなんて簡単なもんさ。それでいてちょいと粋でもあるしね。用意するものといやあハンカチが三枚。ピンクやブルーでもいいけどやっぱり白のほうがいいなあ。何てったって爽快って感じがするからね。そいつをひらりって空のほうにほんなげて落ちてくる前に乗っちゃうのさ。乗っちゃったら落ちちゃうだろうって?馬鹿だなあ落ちそうになったらまたひらりって空にほんなげてまた乗るのさ。優雅なもんだよ。お前さんも一度試してみたらどうだい。ここいらじゃあゼレファンタンケルダンス以外のダンスなんて誰もやっちゃいないよ。何だいお前さんとこじゃあ地ビタに足つけて踊るのかい。(文・別役実 絵・スズキコージ)
皆さん、アジャッパーでコンニチハ!ゼレファンタンケルダンサーズは、久しぶりのスペースユイの舞台をタンノウして、楽しく踊る事ができました。ありがとうです!ここに喜びのメッセージを記します。次の会場・ユイガーデンもよろしくどーぞ,‘ ごきげんよう! (2016 神戸・スズキコージ拝)
http://old.spaceyui.com/schedule/suzukiko-ji_16.html
北見隆「本の国のアリス」
北見隆さんとも、スズキコージさんと同じくらい長いおつき合いになります。今回のテーマは「本の中のアリス」、新たな魅力的なアリスが大勢登場致しました。北見さんのたゆみない歩みの中から生まれる、様々な表情を持つ画面マチエールから構成された美しい様式を持った作品は、北見さんだけの作風を持ちます。また、ある時代、ある国々の様式を取り入れた研究者の様な姿勢すら感じられる知的な作業を礎にした作風である事を改めて感じさせられました。夜、研究室件アトリエで、白い石膏状の平面に古代文字の様なアルファベットを刻み込んだり、金属を熱で溶かして細工をしたり、と熱心に制作に励んでいる北見さんを想像致しますと、自然と笑みがこぼれてしまいます。
そんな北見さんは、芸術家、学者、または現代の錬金術師の様でもあって十九世紀に誕生したアリスを、不思議なマジックパウダーを振りかけ、たった今のアリスとして見せてくれたのでした。
ルイス・キャロルとテニエルの造形による「アリス」は、現在に於いて大人、そして子供にとってもひとつの完成された永遠の存在であり、不可侵な感覚すら覚えます。それくらい、「アリス」への挑戦はある意味勇気が要ると思います。
原型アリスより少し大人の清楚な意志を感じさせるアリスは、北見作品の中でも傑作といえるでしょう。
クラシックな様式美を備えながら、私たちに取って受け入れやすいポピュラリティーを携えた魅力的なアリス像を今回の展覧会で、心憎いばかりに堪能させて頂きました。
また、北見さん自らが撮影、監修の作品集「本の国のアリス」も素晴らしい出来映えの本です。
AAAAA
毎年展覧会を開催して頂いているシーノ・タカヒデさんが、今年は20回目の個展です、とおっしゃった時には不思議にぴんと来なくて、え~っと思いましたが、2回程少なかったのですね。18年目という事だそうです。
今年もシーノさん、女性にたいへん人気がありました。それもとびっきり素敵な大人の女性陣です!一番自慢できる出来事としては、何と言っても山口はるみさんにお越し頂き、「シーノさんは天才!」とおっしゃって頂いた事ですね。そして「人を天才なんてめったに言いません!」と、はるみさん。
その日のシーノさんの嬉しそうな顏が目に浮かびます。(hpの写真にもあります)
また、シーノさんの独特の語り口の文章も面白いです!!ぜひお読み下さいませ。
☆ 続ける事 ☆
1998年 『START UP』と言うタイトルで始めたEXHIBITIONも 色々な人のお力沿いや助言のおかげで何とか今年で18年目を迎える事が出来ました
ドジな僕は 今回のYUIさんでのEXHIBITIONが何故か?20年目と勘違いしていました
そんな恥ずかしい勘違いの中これまでのEXHIBITIONに関連する色々な出来事を思い返していました
これまでに年に1度 Spece yuiさんの空間を使って 思いつく限り 色々な事をさせて頂きました
当時 アフリカ 東京 高知と行き来していた頃 Kenyaで個展をしたりナイロビの日本人学校でライブペインティングをしたりナイロビ郊外のマサイの家や近くのお店の壁に『絵』を描くために 年に1度Kenyaに数ヶ月滞在していました
10年目には ツァーを計画してコンゴミュージシャンとも ライブペインティングをナイロビのお店で行う事ができました
東京でも 旅の延長で知り合ったミュージシャンにYUIでのオープニングで演奏してもらい 通報されたりと オーナーの木村さんには 随分 迷惑をかけてしまったりしました
同時に 恵比寿のライブハウスで知り合った仲間と手作りイベントを企画してミュージシャンの音に合わせてのライブペインティング CDを作ったり高知でのライブツアーを成功させたり
それを見て頂いた人からのアフリカイベント出演のオファーがあったりと遊びの中で少しづつ成長していった気がします
名もなくいい加減な イラストレーターの絵を観にわざわざ足を運んでくれた人達 絵を買ってくれた人達
こんな感じで毎年 EXHIBITIONが開けるのもYUIの木村さんや皆様の暖かい気持ちがあればと 改めて感謝の気持ちでいっぱいです
そして…これから本当の『20回目』…を無事迎える事ができるよう これまで通り楽しく『絵』を描く事を続けて行こうと思っています
よろしくお願いします
シーノ☆タカヒデ
http://old.spaceyui.com/schedule/shino-takahide_16.html
「MIZUMARU ANZAI ON THE TABLE 」 ー 新出版社 BACIより
ご自分が勤めておられる美術系出版社で、安西水丸さんの版画を収めた作品集を出版したいと、ひとりの若い編集者の方が来られました。
画廊で安西さんのシルクスクリーン版画を作り始めてから30年になり、作品の種類も200を超え、自分でも版画の作品集の出版をどこかで望んでおりました。
結局のところ、彼女の努力にも関わらずこの計画は会社側に受け入れてもらう事はできませんでしたが、安西氏の世界観に深い共感と理解を寄せる若き編集者内田有佳さんは、勤めていた会社を辞め、BACI (イタリア語でKISSの意)というキュートな名前の出版社を起ちあげてしまいました。
当初、図録のように作られるのかと密かに期待していましたが、都合の良過ぎる私の意に反し、美しいオブジェのような作品集が出来上がって参りました。ずっと小さなギャラリー、スペースユイで個展を開催して下さっていた水丸さんですが、そのエッセンスをこのような形で残して下さった内田さんには、意に反するどころか大きな感謝の意に堪えません。
編集者の真っすぐなエネルギーと、静かな気配の立ち上る「ON THE TABLE」というタイトルの、水丸氏が個展のために描かれた作品集を、ぜひ手にとってご覧頂きたく思います。
http://shop.spaceyui.com/?mode=cate&cbid=1272227&csid=7 ← SPACEYUI online shop goods&bookの欄
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春のちひろ美術館:庭の花壇
夏休みに入る前には行きたくても時間がとれなかった美術展にやっと行く事ができました。ちひろ美術館で開催されていた展覧会「村上春樹とイラストレーター」です。
佐々木マキさん、和田誠さん、大橋歩さん、安西水丸さん、と4人のイラストレーターの内、佐々木マキさん以外の三人の方々とはスペースユイとたいへんご縁が深く、この展覧会のキューレーターの原島さんとは二年以上以前からいっしょにこのお仕事に関わらせて頂いておりました。
展覧会会期に合わせて「村上春樹とイラストレーター」という書籍もナナロク社より発刊されました。 出版に際して多くの方々等との関わりの中、たいへんな事もありましたが、 ナナロク社の川口さん、ちひろ美術館の原島さんという、若い世代の優秀な方々と仕事をごいっしょできた事が貴重な思い出です。
最終日にやっと伺う事ができましたが、本当に素晴らしい展覧会でした。緑に囲まれた美術館にはお客様が溢れ、工夫に満ちた美術館の建物も魅力的でした。
安西水丸さんが亡くなられてから、京都の美術館やちひろ美術館で改めて水丸さんに(残されたお仕事の数々と・・)お会いすると何だか不思議な感覚です。大規模な展覧会を開催される主催側は、作家と作品の歩みをつぶさに年表制作なさる等、一ギャラリーの行う短期集中型の展覧会とはまた異なるかたちで多くの時間とエネルギーとを費やされます。それらの知的作業に対しまして、誠に敬意を表さずにはいられません。
堂前守人・堂前理子「陶の器と金属のアクセサリー展」
函館で活動を続けられる堂前守人さんの花の絵柄の陶器は、堂前さんの多くのファンの方々から会期をお待ち頂いています。一枚一枚丁寧に平面絵画を描く様にカップやお皿を描かれます。シックで味わいのある器たちは見応えあのある作品です。
今年はシルバーと真鍮の素材を用いて繊細なアクセサリーを創られる堂前さんの次女の理子さんにもご参加を頂き、好評を得る事ができました。
また、堂前守人さんから味わいある翻訳小説のような文章を次のようにお寄せいただきました。
今年の春、海の見える高台の家から
市電電停前の家に工房を移しました。
移ってみて仕事場作りをしながら気がついたのは
これは前に見たことがあるよねってこと。
30年前に1年過ごしたニュージーランドのオークランドの工房は
道路に面した店舗の裏に芝生の庭が広がり、
その奥に工房があってゆっくりと陶器を作っていました。
庭には牧羊犬が1匹。
今の工房からはまだ庭とは呼べないけれど
周りから閉ざされた空間があり、
その向こうにはお店の建物が見えます。
これってずっと探して来た場所だったんじゃないって思って
毎朝、眺めています。
堂前守人
http://old.spaceyui.com/schedule/domae_16.html
AAAAA
去る7月2日、シルクスクリーンの作家で、毎年個展を開催して下さっていた田村愛さんが永眠されました。この6月にお誕生日を迎えられたばかりでした。
いつも明るい笑顔で朗らかに語り、潔く大らかな性格だった愛(まな)ちゃんが突然姿を消してしまい私たち愛ちゃんと親しかった者は、しばらくの間、なすすべもありませんでした。愛(まな)という名前を付けられたご両親、毎年必ず来廊下さったお兄様等ご家族のお気持は想像に難くありません。
まだ20代の前半から本当に毎年、まなちゃんが教えている大学のお休みに合わせての9月の第一週目は、まなちゃんの個展の一週間でした。最初はまだ学生で、京都在住のまなちゃんは宝ケ池プリンスホテルで皿洗いのアルバイトをしながら個展を開催しておりましたが、優秀な作風が認められ、デザインの専門学校や大学の講師として招かれる様になりました。そればかりか、元々なかったシルスクリーン科を学校に作らせてしまう実力の持ち主でした。
まだ学生だったまなちゃんと、初めてお会いした時に見せて頂いた作品の完成度の高さに驚いた事が昨日の事の様に思い出されます。
通常、シルクスクリーンのテクスチュアはしっかりとした色味どうしの平面構成的なものが多いけれど、まなちゃんの作品画面は見た事のない感覚と透明感とが見る者に目を見開かせてしまうのでした。
特に、大きな画面に遠くまで広がる空、いろいろな表情を見せる雲や、山々、樹木等の自然を、柔らかく、時に激しく描いた作品には、大きく心打たれるものがありました。
昨年も一昨年も病に打ち勝って、元気に個展を開催しました。今年も画廊の5月のグループ展BOX OPERAでは、キュートな作品を出品されたばかりでした。
7月5日に京都で行われた告別式では、多くの方が詰めかけて会場に人々が入りきる事ができませんでした。若い方々が愛ちゃんとの別れを惜しみ哀しまれている様子に胸を打たれました。
画廊では、まなちゃんと京都でお会いする約束をしていた、というグラフィックデザイナーの方が呆然とし、また別のアートディレクターで公私ともに親しくされていた方は何日間かショックで寝込んでしまわれました。
今、スペースユイでひとつとても楽しみにしている素敵な仕事のお話があります。緑も水も豊かな雄大な自然環境の中で、多くの作品を発表する、というプロジェクトです。その企画の出品作品の中にまなちゃんの風景を描いた作品を、と申し上げた所、ありがたい事にプロデューサーの方もその様に考えておられたとの事でした。心から実現を望んでおります。その方とは以前にも或る新雑誌の表紙を決める時の候補にまなちゃんの作品を推薦して、実現一歩手前で他の方に決ってしまったという経緯があります。
たくさんの方々が、変わる事なくずっとまなちゃんを見守り続けておられることを感じております。
また、告別式の帰りの新幹線から見えた空の景色は雄大この上なく、語りかけて来る雲の有様は、壮大な神々の舞台の様でした。こちらでのまなちゃんは引き受けた!と天の神から告げられた様に感じました。
MIZUMARU ANZAI SUMMER EXHIBITION 2016
安西水丸さんの個展を無事終了する事ができました。今回は、画廊の抽き出しの中からひょっこり現れた「レモンとコカコーラ」の作品をテーマにした展覧会でした。爽やかな気持の良い作品を発表する事にしました。今までは、小品や色彩が鮮やかな作品展が続きましたが安西水丸氏の真骨頂と、私が勝手に思っている空間を感じさせる画面、緊張感と緩やかな感覚が一瞬交差するような画面を皆様に感じて頂けましたらと思いました。
水丸さんがいらっしゃらない今、本当に気を付けて作品を作らなければならないと思っております。画廊では、もう新作の発表というのは不可能かも知れませんので、今回は復刻も含め、名作と感じる作品ばかりを作らせて頂きました。
また、グッズの制作では今回「カバ」のTシャツを20年ぶりくらいに復刻致しましたが、思いのほか大人気です!スイカと女の子のシャツも版画から取りましたが、記憶に残るものとなりそうです。
折から様々な場所で催しの開催される期間でした。京都の伊勢丹の美術館「えき」でも、水丸さんの大規模な展覧会が開催、大好評でした。こちらの作品群の中では、30パーセントくらいでしょうか、スペースユイで作成した作品が展示されており、他の作品も存じ上げているものも多く、今回は自分のところの準備、開催とも重なるので、京都行きを最後まで迷っていましたが、田村愛さんの告別式に出席するため、水丸展も見る事になりました。
水丸さん、いつこんなにお仕事をされていたのですか?と思う程、たくさんの作品が展示されていました。知っている、と思っていたイラストレーション等、ほんの一部だったのですね。
また、今回の個展に間に合う様、初期の頃のシルクスクリーン作品を中心にした美しい作品集も出版されました。(写真)
http://old.spaceyui.com/schedule/anzaimizumaeu_16.html
AAAAA
毎年、この季節になると、天野智也さんの個展が待たれます。
早いもので、ずっと備前の陶器展を望んでいて、やっと巡り会えた備前の作家さん、天野さんの個展を楽しみながら開催していく内に今年で9回目、来年は10周年を迎えます。
岡山のギャラリーの方から優秀な若い作家さんをぜひ東京でもご紹介して下さい、とお話があって、開催を始めた頃にはまだ青年の面影の天野さんでしたが、とても立派な風格ある作家さんになられました。
独自の個性を保ちながら、毎年新しい作風のかたちを創りだされていく天野さんの作品を毎年心待ちになさっている方がたくさんいらっしゃいます。
使う方の立場を完璧に追求し技術を極めながらも、じわりと心に響く美しい器は、それらを使う人々の心を捕まえてしまうようです。シンプルで温かな味わいがあります。
その作品は天野さんのお人柄と同様に、自己主張を抑えた控えめな作風でありながら、知らずと人々を魅了してしまうパワーに溢れています。
下記に天野さんご自身に書いて頂いたコメントをご紹介させて頂きます。
自然土になにも加えることなく、ただただ焼締めるヤキモノ備前。
この単純でありながらも、炎で変化したモノの奥深さに魅了され作り始めた器たち。
土掘りから原土精製、制作工程を通じてその土の特性を分析研究し、
より美しい天然色の色合い、自然の大地を想わせる質感など、
瑞々しい表情が作品に映し表わせるよう制作しています。
器は脇役。そこに盛る料理や草花などがより生きるためのものでなくてはならない。
それらを包みこみ、器もより生き、作品となってゆく。
私の器を使う方が、ごはんを食べるとき、お茶を飲むとき、花を愛でるとき、静かな幸せを感じられる‥そんな作品を作りたいと願っております。
備前 天野智也
焼物を始めた若かりし頃より、備前に魅かれ岡山に移り住んでから
幾人もの方がご縁を繋いで下さり、スペース・ユイでの展覧会も回を重ねさせて頂いております。誠にありがとうございます。
私を推薦ご紹介頂きました、Galeria Puntoの籔さん 快くお引受け下さった、ユイの木村さん
本当に感謝しております。また作品でお応えするべく作り続けたいと思います。
http://old.spaceyui.com/schedule/amano_16.html
AAAAA
竹井千佳 きらきらブルー
元気に現代を生きる当代女子を描いたら、右に出る者はいないのでは、と思わせる竹井千佳さんの作品展でした。ご本人がすでに絵の中から出て来た様な佇まいです。
しかし描き出す世界は視野が360度。可愛らしい女の子の表情の中にも、苦かったり、醒めた眼差しがあり、イタズラッ子のキュートさが、あったりと・・・。
描かれる作品の個性が個々の人物の中に凝縮されていたり、ひとりの中に併存していたりと、鮮やかな色彩のポップなカワイイ作品の中に、何とも味わい深い包容力が感じられます。
今、伸び盛りのご自身の仕事では、その舞台は通常のイラストレーション媒体を超え、自由に軽やかに羽ばたきます。
最近のお仕事、NHKの番組「ガッテン」では、番組全般に散りばめられた千佳さんのイラストレーションと軽やかななヴィジュアルデザインが楽しめます。
その他の仕事でも哀愁漂うおじさん、そして少女達から、カワイクもしたたかな女の子の表し方まで、守備範囲の広さと感性の懐の広さには、本当に驚かされます。
また、作品画面からは、鮮やかな色彩を抑え気味に表現された日本画的な繊細な風情も感じられる等、多面的な魅力をたたえた竹井千佳さんの作品展でした。
以下は、竹井千佳さんの文章です。
今回の個展は時期が梅雨の時期で紫陽花も綺麗なのでブルーで会場を埋めたくなったのが始まりでした。
正直、制作時間があまり無かったので考える時間が無かったのですが、それがかえって今まで積み重ねてきたものを素直に表現できたと思います。
お越しいただいた方にも喜んでいただけて、改めて自分がこれから何を描いていくべきか気付かされました。
今後もワクワクする作品を作っていきたいと思います。
http://old.spaceyui.com/schedule/takei_16.html
あずみ虫 「恋愛小説」
今年のあずみ虫さんの個展「恋愛小説」では、軽妙な鮮やかな色彩は常ながら、あずみ虫さんの新しい側面を見せた作品がギャラリースペースを充たしました。
薄いアルミ板をカットし着彩する作風は、その技法の結果として抽象化や省略化されたシンプルな顏が表れるように感じます。その様な技法にエロスの世界を載せての表現は、存外に適っているかも知れません。作家のエッジの効いた挑戦が軽やかにポップに切り取られ差し出されます。
あずみ虫さんの師であった水丸氏がそうであった様に、一人の人の中に秘められた様々な側面である、エロティシズムも可愛らしさや爽やかさもそれぞれに表現、まるで何人かの人格が一人の中に矛盾せず存在するかに思える個性は、お二人に共通するかも知れません。
生前、エロスの作家と自らを称した金子國義氏を尊敬する、というあずみ虫さんは、今回の展示で大きくひとつの方向性を見せて下さいましたが、今後の展開が増々楽しみです。
金子さん、本気か冗談なのか、いつでも巻頭句の様にプレスリリースのお名前の前に「エロスの作家」と、書かされた事等思い出します。
http://old.spaceyui.com/schedule/azumimushi_16.html
AAAAA
永松あき子さんの、油絵とテンペラとの混合技法による絵画展を開催致しました。
「わたしが生まれる」、というタイトル。
海の底の情景の描写が多く、深く美しい蒼の色調が基本とされる画面からは、強い生理的とも言えるエネルギーが感じられます。
水の景色と共に、空の青も森の碧も全部繋がっていて、生命の起源や生成を幻想的に技巧的に表しているかの様 . . . .
神話の中の光と闇からなる内なる女神、魔女等は、永遠の命を生き、森羅のはざまを絶え間なく循環する。
ルネッサンスの時代なら、そのパワーを以てひとつの工房のマエストラ(イタリア語で巨匠の女性名詞)になっていたのではと想像する永松あき子さんの腕前です。
以下に永松あき子さんの文章をご紹介させて頂きます。
6月6日から開催された「わたしが生まれる」展に、多くの方々にお立ち寄りいただき、たいへんありがとうございました。
軽やかで明るく楽しい作品を専門に扱われるSPACE YUIさんで、私のような、闇をふくむ、重厚な色彩を目指す技法で描いた油彩画を展示する、というご決断をくださいました木村さまの、オープンで柔軟で勇気あるお心意気に、深く感謝しております。
私自身も、外光あふれる開放的な空間での展示は初めてのことで、新鮮な驚きに満ち、たいへん勉強になりました。
同じ作品でも、展示される空間が違うと別の様相を見せる、というのは考えれば当たり前のことですが、自分の作品でつくづく実感いたしました。
YUI さんの、とても明るい空間に置かれると、今まで発表していた窓のないどちらかというと照明も抑え気味な空間に置かれるより、かえって重々しい印象になりましたが、油絵の具の、透明で深い美しさは一層輝いていたように私には感じられ、嬉しくもありました。
20日から展示させていただくYUIGARDENは、明るいことは同じですが、また違った質の空間で、我が作品がどのような様相を見せるのか、たいへん楽しみでわくわくしております。
お時間がございましたら、ぜひご高覧いただきますよう、また率直なご感想などお聞かせくださいましたら幸いに存じます。
6月第3週、梅雨の間の晴れ間の日に。
永松あき子
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