今回の水丸さんの個展は、13年程前に開催した「東京クリスマス2002」の時に制作したシルクスクリーン作品と新作とを同時に展示した展覧会でした。
来年の5月後半からの村上春樹さんを主体とした、村上さんの作品にイラストレーションを描かれている数名のイラストレーターの方々のちひろ美術館での催しをはじめとして、美術館での安西水丸展の数々の催しが予定されております。催しにちなんで水丸さんの作品集の刊行も予定されておりますので、スペースユイではその時期に合わせ2016年夏の展覧会を計画しておりました。
その様な事もあり今回の催しが実現できるとは、会期直前迄予想しておりませんでしたので、この展覧会を開催できた事をとても幸運な事に思っております。
「東京クリスマス2015」では、2002年に制作したシルクスクリーン作品の自由闊達なシンプルな作風と、完成度高く水丸さんのエッセンスが凝縮された2015年に作成したシルクスクリーン作品との対照的な対比を、皆さんに楽しんで頂けたと感じております。
そして、のびのび描かれた天使やトナカイ達の原画も軽やかに皆さんの手に渡って行きました。
2016年7月には、最初の計画通り水丸さんの個展を開催致します。
http://old.spaceyui.com/schedule/anzai_15.html
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The Works of Taku Tashiro「田代卓の仕事」出版記念展
1983年に最初の個展を開催して以来、30年以上に渡り活躍を続けている田代卓さんの、二つの会場(大きな作品はGallery5610で発表しました)での記念碑的な展覧会を終了し、改めて田代さんの実力を感じている所です。
これまでの田代さんの仕事を纏めた素晴らしい作りの作品集の出版を記念しての展覧会でした。
今回のSPACE YUIでの展覧会では、田代さんのタイポグラフィーの仕事を大きくプリントした作品が、壁一面に隙間なくダイナミックに展示されました。
この展示を見られた多くの方々は、田代さんがこんなに文字の仕事をしておられた事に感心し、驚いておられました。田代卓独特のイラストレーションやキャラクターデザインは皆の目にもおなじみですが、文字のデザインは作者名を発表されて初めて、田代さんのものとわかります。しかし、どれも皆テイストはオリジナリティのある田代さんのものであり、ひじょうにプロフェッショナルな素晴らしい出来映えの作品でした。
通常、シンプルなグラフィックデザインは、クールなシャープな印象を与えるものと思いますが、田代さんの作品は、プラス温かさ、可愛らしさが加わって独自のスタイルを築いている様に思います。
人々をすっきり感と同時に温かな楽しい気分にさせてしまう能力なんて、そうざらにあるものではありません!
田代さんの展覧会を久しぶりに開催する事ができ、彼の作品の持つ大きなエネルギーを再認識させられました。
桑沢デザイン研究所の学生時代から画廊に出入りしており、20代に画廊からデビューし、来年春からは九州産業大学で教鞭を取ることになった田代卓さんですが、自分にとっては彼のイラストレーションの真ん丸な男の子そのままなのです。
http://old.spaceyui.com/schedule/tashiro_15.html
立川一美 作品展
立川一美さんの今回の個展は、静かで、より自由になって、秘められた強さが感じられ、たいへん魅力のある展覧会だったと思います。
誠実な手仕事に裏打ちされ表現された作品の醸し出す清潔なエネルギーが、鑑賞する人々に手渡され理解され、会場に来られたほとんどの方々が心地よい感覚を持たれた様に感じました。
手差しの刺繍が丁寧に施された一瞬座る事のためらわれる椅子は、懐かしさを誘う新しいオブジェの趣きが感じられます。
また平面作品に一針々繊細なステッチで刺繍された花々は、静かにそっと優しい感情をささやきかけるようでした。
多くの表現や主張の溢れる世界の中、立川さんが良く用いられる真っ白な麻生地の様な清涼感がいつまでも心に残ります。
誰にも真似する事のできない立川一美さんの個性的な希有な作品世界は、とてもたいせつなものに感じられます。
http://old.spaceyui.com/schedule/tachikawa_15.html
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Yoshiko Abe Line + Colors
Yoshiko Abeさんの展覧会が、人々に余韻を残して終了致しました。
細い線や色鉛筆のタッチで描く静物や風景、思い切りの良い面を切り取って構成したグラフィカルな抽象的画風の作品や、太めの筆のタッチでのシルクスクリーン作品等、ヴァラエティーに富んだ作品の数々が展示されました。色々に試みられた作風の数々でしたが、それぞれの画風に統一感があって、どれも心地よいYoshiko Abeさんの作品でした。
今回はペインティングの画法も加わって、更に多彩な世界が繰り広げられました。
これ迄の作品がさり気ないセンシティブなものとしたら、新しいカテゴリーのペインティング作品は、人々の少し沈痛な思いを宿しているよう・・、でも画面の奥には光が感じられる、という風な感想を持ちました。
軽やかな、人々を明るい気持に呼び起こす力のある方ですが、作者の新しい視線と方向性の発見も興味深かったです。
この自由な感性のいくつかの画風の作品が更に膨らんで、人々と親和性を広げて行ったら、優しい感情を呼び起こす強い力をもたらす様に感じます!
http://old.spaceyui.com/schedule/yoshiko-abe.html
小渕もも 個展 2015
いつものMOMOさんの思い切りの良い作品展でした。今回は大きな画面の花と果物の静物画と、それよりも少し小さめな画面に女性を描いた作品を展示致しました。
MOMOさんは、しゃっしゃっと、作品を無造作にテープで貼り付けていきます。独特の展示方法ですが、展示されると和紙のような風合いの作品がおしゃれに生き生きと輝き出すのがとても不思議です。
MOMOさんのイタリア磁器に絵付けした独特な風合いの作品も毎回素晴らしく、人気です。白地に藍色で花々を描いた大皿は、揺るぎのない線が特に魅力的でした。
また、今回フェイスブックに載せたセクシーな女性のイラストレーションが思わぬ人気がありましたが、MOMOさんの描くきりっとしていてセクシーな大人の女性は誰が見ても美しくて思わずボタンを押してしまうのでしょうか。
http://old.spaceyui.com/schedule/obuchi_15.html
蒲優祐「装丁の想定」
今年で2回目の蒲優祐さんの展覧会「装丁の想定」でした。
展覧会では、書籍の装丁を想定したプレゼンテーションと使用されたイラストレーション作品の展示とでビビッドな作品が色彩鮮やかに印象的でした。
展示の方法は、昨年と全く変わりなく、計算されたグラフィックデザインは見応えのあるものでしたが、以前にも増して意欲的に活動の幅を広げて活躍する蒲優祐さんです。展覧会会期内にもSNS等の数々の連絡網での多忙な仕事ぶり、実際にお見えになる方々の多彩さに驚かされました。
今回、この仕事関係では最前線の方々に作品をご覧になって頂きましたが、「装丁」の中だけで収まる様にも思えない蒲さんのヴァイタリティーは、デザインという大きなフィールドの中でどの様なスタンスで次の活躍へと繋がって行くのでしょうか。
これからも若い蒲さんはご自身のやり方でチャレンジを続けられると思いますが、手を広げすぎるとクリエイティビティは弱まってしまうというのではないか?という常識的な心配を打ち破って行って頂きたいものです。
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今回の卯月光俊さんの作品は、何かが大きく変わった感がありました。様々な技法を自分のものになさって、卯月さん独自の作風をつくりあげ構成した作品には風格が滲み、空間の奥行きと見られるものが加わって、作品の力をとても強く見せているように感じます。
作品の裏側からも絵筆で描き込むことにより、輪郭線の味わい深さをはじめとする表面からの作品の見え方を、鏡を使ってお見せするプレゼンテーションが、とても素敵でした。
卯月さんの作品のコンストラクションといったものを、作品表現そのものとして見ることができ、もうひとつ楽しみ方を発見したのでした。
また、そのような事がらとは別に、空間に展示された作品全体から発せられる場の力を感じたのですが、今迄より更に技術力を深めた卯月さんが、自身の作品の中に自由な技法空間を発見なさったのかも知れません。
伝統的な表現手法と現代的なグラフィックな感性が結びつき、富士山や太陽や月や星がとてもシンンプルに和のテイストで描かれる作品は、とても洗練された大人の世界観と感じておりましたが、これらの卯月さんの作品が幼児向けの絵本になることが決まりました。出版社の方の慧眼に、敬服いたします!まだ無意識に生きているかの年令の幼児に卯月さんの作品を見せるという感覚をとても面白く感じ、新たな目を開かせて頂いた様に新鮮な思いです。
魅力的な作品、そして本を来年の秋にも見られる予定ですが、大きな潮流になって行くのでは?と今から期待が膨らみます。
http://old.spaceyui.com/schedule/utsuki_15.html
画廊では、特に親しくさせて頂いている絵本の会社や広告等に関する会社のセクションがいくつかありますが、福音館書店等はその筆頭かも知れません。
子供の年令や各セクション毎に分かれているいろいろな部署の編集の方々にDMをお出ししておりますが、福音館だけで○十人に上ります。皆さんそれぞれに良いお仕事をなされる方々なのでとても光栄に思っております。
今の時期、「画集」そのものの発行が稀なものになってしまいましたから、絵本がそれに変わる価値を持っている様にも思います。画廊では、本当に数えきれないくらいの方々の作品を本という形に残して頂き、感謝いたしております。
特に長い期間に渡りお世話になり、親しくさせて頂いている方の自由なお仕事ぶりには頭の下がる思いです。抽象画や素人目には大人の感性にしか見えない作品も、こだわりなく子供の世界に加えて下さるのです。このような方々の尽力がなかったら、絵本の世界はもっと面白みの乏しい淋しい世界になっていたのではと思います。
子供の脳内の事は自分の認識内に於いては遥か遠いのですが、宇宙のどこかから生まれて来る命に老若の差の巾は、人間が考えている程にはないのかも知れません。
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沢野弓子 – wonderland –
作品だけではなく、ご本人の存在自体が晴れやかな青空の様に、多く人を励ます沢野弓子さんの個展には、大勢の方々がお出かけ下さいました。
偉大な抽象画家、楠田喜代子さんのお弟子さんの沢野さんが画廊に初めていらっしゃった時の全身のコーディネイトが本当に素敵でした。おしゃれってとても難しく、あまりオリジナルだと特異な感じばかりが目立ちますが、沢野さんの格好良さはオリジナリティも先端のモード感も( 自分には欠けているので分かっているかどうかは別として)含みながら、 楠田喜代子さんが「沢野さんは生きるアートです。」とおっしゃっていたように、突き抜けた純粋なステキさの印象が残りました。20数年以前の事です。2013年に100才を目前に亡くなられた楠田さんは、数回当画廊でも個展を開催させて頂きました。どこにも所属しなかったけれど小さな個展でも必ず海外からのオファー等があり、不思議な流れの中で人々に支持され続けました。中でも忘れられない作品があります。幼児がよく描くチューリップのお花の部分が丸く正円になり、長く延びた茎と二対の葉っぱがある、墨の濃淡から成る「華のサムライ」という作品です。楠田さんは陽性な性格の方で、「長く生きているものですね!男性が威張っている社会で生きて来たけれど、今は女の人がえばっていて、面白いね~」といつも楽し気におっしゃっていました。そして「華のサムライ」は、自分自身であり、沢野弓子さんでもあるのだ・・・と。楠田さんに関しての引用が多くなってしまいました。
沢野弓子さんの最初の個展は、抽象画の平面作品でした。様々な素材を用いたコラージュ作品でしたが、その後の個展では平面作品と同じ素材、手法でつくりあげたバッグや小さなアクセサリー等の展示へと繋がって継続して参りましたが、驚く程の勢いで売却され続けているのです。
隔年毎に開催される展覧会では、毎回ほぼ完売という状況であって、楠田喜代子さんがおっしゃっていたように、沢野さんが実際に身に纏う、感性を紡ぐようにしてつくり上げるバッグや小さな物等の「生きるアート」は、求める側もまたストレートに受け止めて、創る側と隔たりのない感覚をとても得難いものに思います。
http://old.spaceyui.com/schedule/sawanoyumiko_15.html
下川路博美 銅版画展「手のひらの記憶」
下川路博美さんの二年ぶりの銅版画展は、チャレンジングな素晴らしい新たな表情を見せて下さいました。
今回初めてのモノクロームの作品は、特に印象的に感じました。黒色の強い色調が紙の質感に柔らかく受け止められて、銅版画の持つ微妙に水分を感じさせる輪郭がとても魅力的でした。
お母様の若い時代のエレガントなバッグやハイヒール、手袋等の小物も端正に美しく表現されていて、私たちの心の中のノスタルジーな気分を刺激されました。そんな数々の作品から、日々の暮らしの中の優雅なエレメントの印象と共に郷愁に満ちた文学的な感情が伝わって参ります。
版画作品の中に刺繍糸を登場させたり、グラフィックデザイン的な構成の作品等の新しい手法も加わって、下川路さんの作品世界の様々な可能性の広がりが期待されます。
また、ダイレクトに描く表現形態とは違い、銅版画の、技術的な緊張感を要する制作過程のたいへんな様子を微塵も感じさせない下川路さんの佇まいに、ステキなダンディズムを感じてしまいます。
http://old.spaceyui.com/schedule/shimokawajji_15.html
中島洋子 個展「模様と装飾」
中島さんから、「模様」の全般に興味があると伺い、「模様」の数々をテーマとした作品を見せて頂いた時に、とてもフレッシュな印象を受けました。
私たち人類にとって、普遍的古典的な側面を持ちつつ、身近な存在でもある魅力的な「模様」はいつも私たちの身近で、共に息づいている様に感じます。
今回の展覧会では、装飾的なエキゾチックな模様を、中島さんの内部を通過し、翻訳され、シンプルに軽やかに新たな表現で示されているように感じました。
中島さんは、水丸さんの生徒さんでもあるのです。
今回の個展では、陶器やガラス瓶、木の箱や平面作品と、沢山の様々な物にと模様を描きました。
トラディショナルな「模様」をオリジナリティのある形に創るべく試みられている中島さんの作品様式が完成されたら、見た事のない面白い世界観が私たちを楽しませてくれるのでは、と、楽しい期待が膨らみます。
http://old.spaceyui.com/schedule/nakajhima_15.html
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本当に久しぶりに森英二郎さんの作品を展示させて頂く事ができました。
森さんが大阪から東京に居を移され初めて個展をされたのが当画廊と記憶しております。
当時から、森さんの素朴で温かなお人柄とノスタルジックな作品は、触れ合った人々の心の中に大きな印象を残されましたが、最近は森さんのキャラクターの際立つ楽しいブログが画廊の周辺の人々にも大人気です。
森さんの木版画は、その時々のテーマに沿いながら彫って行くというスタンスであって、版画家というよりはイラストレーションの表現形態としての木版画を制作するという風に伺いました。商業美術、デザインの流れの中での表現という事になりますが、森さんの木版画の風合いは、作品自体の存在感と共に人々に共通する懐かしさを呼び起こす力に充ちているように思います。
少年たちの秘密の箱の中には、きれいな石やビー玉や時にはナイフ等、宝物が隠されていて、そしてそれはいつの間にか消えてしまうけれど、森さんの心の中にはまだそんな箱が・・・。ハンコの作品等を拝見しますと森さんのそんな一面を想像せずにいられません。
http://arco.blog.so-net.ne.jp/ 森英二郎ブログ
森英二郎さんの作品と同時に堂前守人さんの陶器の展示もさせて頂きました。堂前さんの作品は、陶芸作家さんというより、絵を描かれる方が絵と一体化した陶器を作成している、という感じが致します。
独特の花柄や水玉の模様は、周囲の景色に溶け込む様に自然体です。いろいろなタッチで表現されるお皿や壺やカップ等、作品の周囲を柔らかなテクスチュアの染料が彩ります。
森さんの作品と、堂前さんの陶器の表層部分にどこか共通点があると感じ、今回の二人展を企画させて頂きました。
ゆらゆらと風と光りの中でたゆたっているひまわりや椿の花々が描かれた陶器は、柔らかな感情を心の中に注ぎ込むかにおもわれます。
http://old.spaceyui.com/schedule/doumae-morii_15.html
国井節
大地に根付いた土着的な、無国籍の神話や民話へと繋がって行く大らかなエネルギーの感覚は、国井さんの全部の作品に共通したものに感じられます。
今回の展覧会は、命が生み出し、命に呼び起こされる、様々な「音」がテーマでした。
人々や、どこの土地ともわからない、南の国の風景や動植物達が、賑やかに色々な音を奏でます。まさに音楽が聴こえてくるような、力強い作品が並びます。
工夫を凝らしたヴォリューム感のある画材が、二次元を超え、存在感を強調して、国井さん独自の個性を浮び上がらせるかの様でした。
「音」がテーマだけに、沢山のウクレレにもイラストレーションを描きました。力強く躍動感溢れる展覧会でした。
http://old.spaceyui.com/schedule/kuniii_15.html
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島袋千栄
I want to be a PRINCESS プリンセスになりたくて…
島袋千栄さんの今回の作品展を、全てを抽象画にしようかと悩んでいる、との相談を受けました。島袋さんの最初の展覧会から素晴らしいペインティング作品をずっと拝見し続けておりましたので、驚いてしまいました。油彩画感覚のテイストも感じられる軽やかな表現の作品は心魅かれるものがありましたので・・・。
動物を擬人化した完成度の高い作品等、たいへん人気があり、ファンの方々の気持も掴んでいたので、何てもったいない、島袋さんの中に一体何が起ったのだろうかと思ったのでした。
二人でお話をして、今迄の画風の作品も抽象画の作品といっしょに展示する、という事に決まりほっと胸をなでおろしました。
会場ではまるで二人展の様にふたつのカテゴリーの作品が展示され、来廊下さる方々を驚かせましたが、何故悩んだのだろう?と思うくらいに普段からの具象の作品は、考え抜かれた完成度の高いもので訪れた人を楽しませて下さいました。
写真の女の子はコピーライターですが、医師や書店店員、数学教師、看護師等、様々な職業の女性たちの肖像画と共に彼女達の心の声であるエスプリの利いた文章が展示され、そちらにも才能を感じさせられました。
SPACE YUIのスタッフの頃の島袋さんも、常に前向きに生き生きとしていて、自分が作家であるにも関わらず、溢れる様なアイデアで画廊の企画をたくさん考え、(彼女のイラストレーション入りの楽しい企画書は永久保存です!)いつか実現したい!と思わされるものが満載でした。
抽象作品に関しましては、正直なところ、まだ良くわからないのですが、写真の魅力的な花の絵の様に具象との中間地点にあるものから全くの抽象的形態へと連なるものへと、だんだんに変化して行く様が、次回はどのようになるのだろうと、興味深く、期待を持たされずにはおりません。
http://old.spaceyui.com/schedule/shimabukuro_15.html
田村愛
散歩。
田村愛さんの作品を初めて見てたいへんな才能を感じたのは、まだ愛さんが学生時代のことでした。もち論、愛さんの今のスタイルはまだ出来上がっておりませんでしたが、単色の印象的なパターンの組み合わせの点々や線やいろいろな形の面の部分の構成から成る作品は、見た事のない新しい感性の息吹を感じさせるものでした。
学生の頃から完成度の高い個性的な作品を制作していた田村愛さんは、自分のつくりあげた作品のスタイルをその様式の中で何度も乗りこえて行く、というたいへんな課題を背負っている様に思えましたが、大らかに楽し気な制作活動で、毎年の展覧会を開催して下さっております。
田村さんは、シルクスクリーン版画の作家であり、ダイナミックな大作から小さな布のグッズ迄、全てを自分の手で自由にのびのびと制作をされています。
京都育ちの田村愛さんが京都のホテルで皿洗いのアルバイトをしながら個展を開催しておられた頃の事が既に夢の中の事の様に感じられます。
まだ幼さの残る学生の様だった彼女が、シルクスクリーン作品を教える専門学校や大学の教師になり、美しい自然環境の中、ナチュラルマインドな姿勢で制作活動を続け、個展も開催し続けます。
自宅から仕事場へと運転する車で向う道々の、樹々の姿や山々や大きく広がる空のすがた等の自然、普段の生活環境のそのものが、彼女の魅力的な作品にそのまま組み込まれ描かれているのです!
田村さんの立ち位置はイラストレーターではありませんが、キラリと光るものを内包した田村さんの作品をもっと々、装丁などの仕事にして頂きたいと願っております。
最近は京都にお友だちとnipoという小さなお店も実験的に出し大活躍です。京都にお出かけの時には、ぜひお訪ね下さいませ!
http://old.spaceyui.com/schedule/tamura_15.html
https://www.facebook.com/niporoom37/info?tab=page_info (nipo)
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2011年3月の震災直後の小池アミイゴさんの活動を見ていて、ぜひ彼の作品と活動をギャラリーを通して皆様にご紹介させて頂きたい、今の私たちにはアミイゴさんのエネルギーが必要なのだから、と直感的に感じました。
ペインティングやドローイング等の作品、文章、何かに突き動かされるかに思える行動・・・と、名前の付けられないトータルなアミイゴさんの活動には、理屈を超えて胸打たれるものがあります。
アミイゴさんは、震災後に宮古、塩釜、気仙沼、いわき等と、被災した地を回を重ね訪れて、日々を営む人々の日常や海辺の風景を、素早いタッチのスケッチやペインティング作品として制作致しました。
記者や学者等の職業の名前が付いた人としてや、任務としてでもなく、誰に言われるでもなく、ただのひとりの人として東日本という未曾有の災害に遭った場所を訪れました。また、気仙沼の大漁旗のイベント等でイラストレーターとして訪れた事もありました。
その土地に住む災害を被った人々と等身大の気持、というには語弊があるかも知れませんが、時には積み立て預金を崩しながら、真摯な姿勢で臨まれるアミイゴさんの、力を出し切ったフィールドワークは、決していい加減な気持で出来るものではありません。
当画廊では、2012年、2014年、2015年、と三回にわたり東日本をテーマにした展覧会を開催させて頂きましたが、二度の展覧会の案内状は福島県いわき市の豊間ビーチのものです。定点観測の様に毎年訪れ、少しずつ気配の変わる風景を描き、2014年は宮崎県塩釜のカモメを描きました。光りに包まれた海と空・・・。いずれも静かさが胸に響く作品です。
僭越な言い方ですがアミイゴさんの作品は、個展を重ねる毎に心打つ力を持たれていった様に感じております。
アミイゴさんが励んで来られた道のりの一瞬一瞬のプロセスが結実し、 作品の中に、名状しがたい何かが芽生えて来ていると感じます。活動の中で進化をしながら培われて来た技術と感性に、テーマを超えて普遍の色彩が舞い降りたかの様に・・・。
住まわれている方々への共感の思い、亡くなられた方々への追悼の意を、描く側と共に見る側の人間も、同じ国土に住む者として湧き上がる自然な感情をアミイゴさんが表現して下さっている様に思えるのです。
http://old.spaceyui.com/schedule/koike-amiigo.html
エンブレム問題から浮かび上がって感じた事について:
仕事柄、アートディレクターやグラフィックデザイナーの方々を多く存じ上げておりますが、今、オリンピックのエンブレムのデザインで問題になっている佐野研二郎さんは知り合いではなく、その事に少し胸をなでおろしている自分がおります。
この問題につきましては、実に様々な意見を実際に耳にしておりますが、やはりあれだけの実例が明らかになってしまっては、庇いようがなく感じられ、これからの人生がたいへんだろうな・・・等と思ってしまいます。
でもこれは、彼一人の問題ではなく、デザインや広告の世界のシステムの問題も含めて皆が何となく感じていたけれども、激しく疑問を認識する事となってしまったのではないでしょうか。
多くの優れたイラストレーターと接している自分としては、何故ADがイラストレーションをイラストレーターに発注しないのだろう?という素朴な疑問をまず感じます。企業から依頼された多くの仕事をフリーランスに発注する事なく、全て自分のところで処理してしまう、というのは随分無理があるのではないでしょうか?
何人かのスターデザイナーが企業から集中的に仕事の依頼を受け、大勢のスタッフと共に流れ作業的にこなしていたら、クリエイティブな気風からはどんどん遠ざかって行く場合が多いのではないかと案じられます。イラストレーターに仕事がなくなるだけではなく、フリーランスの個人の優れたデザイナーにも仕事が来なくなります。一般の世界で起きている悪い意味でのグローバル化が、こちらの業界でも起きていて、それが構造的な問題である事にあらためて感じ入っております。
この画廊を始める時に、個人が個人の作品を見たり購入したり、というだけではなく、メディアを通して大勢の方に見て欲しいと思いました。それには、イラストレーションという作品表現のシステムがとても魅力的に思えたのです。批評家や一部の専門家の意見や賞等で作品の価値が決って行くのはおかしい、もっと開かれた場所=メディアで見てほしい、そしてフェアな人々の目線で作品の価値を感知し理解してもらう事のできる環境を望んでおりました。それには、デザイナーや編集者、代理店、etc、作品に関わる方々の目線が本当に大切なのです。
その流れが何か滞っている、と感じたのはいつの頃からでしょうか?元来優れた感性は理解されずらい側面もありますが、だからこそ自分等の仕事もやりがいがありました。
感性を磨く、ということは、単に流行感覚のアンテナを張り巡らせるのみでなく、もう少し違った角度からのアプローチや地道な姿勢を併せ持って得られるものと思います。私たちを取り巻く環境全体が崩壊に向かっているようにさえ見える今、客観性を保ち続けるのはたいへんな事と思いますが、作家の方々、彼等の作品を扱われる方々にもセンシブルなフェアな目線を持ち続けて頂けたら・・・、と思います。
佐野さんの今回の事件では、エンブレムやその他の彼の仕事の模倣の問題についてよりも、浮かび上がったデザイン業界の仕組や利益の偏在性について考えさせられる事が多かったです。
イラストレーターは勿論ですが、フリーランスでオリジナリティーを大切に誠実に仕事をしているデザイナーの方々に注目して行きたい、と思っています。
「7 Artists Walking Point of View」
今年の夏の暑さには、振り返れば多少の懐かしさも感じますが、それはたいへんな季節でしたね。時々熱気に目眩がして、意識が正常に動かなくなりました。
高橋キンタローさんが企画して下さった「point of view」もそんな中開催されましたが、酷暑にも負けず多くの方々にご覧頂く事ができました。
以前からお付き合いのある高橋キンタローさん、谷口広樹さんをはじめ、水沢そらさん、河井いづみさん、足立もえかさん、門川洋子さん、ミヤギユカリさんという7名のイラストレーターによるたいへん見応えのある作品ばかりが展示されて好評を博しました。作風も年令もばらばらのメンバーでしたが、皆さんの作品から外の気温とは対照的に心地よいクールな風が感じられました。
またいつか、変化や深化を遂げながら、この企画展を開催できる事を期待してしまいます。
写真は、前列左より高橋キンタローさん、ミヤギユカリさん、谷口広樹さん、後列は左より河井いづみさん、足立もえかさん、水沢そらさん、門川洋子さん、お友だちの方?の8名です。
http://old.spaceyui.com/schedule/7-artists-walking-point-of-view_15.html
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シーノ・タカヒデさんの個展前に、大きな仕事が舞い込んで来ました。シーノさんは丁度個展の絵の仕上げの時期でしたので、少したいへんな様でしたがそんな事を言っていられない魅力的な仕事でした。画廊でもめずらしいファッションブランドからのお話です。
いつもアフリカをテーマにした作品を、こぼれるように豊かなイマジネーションで描き続ける作品は、シーノさんにしか描けないオリジナリティ溢れるものです。
個性的なモチーフと自由な感覚で、誰に媚びる事なく制作を続けるシーノさんは、商業美術としての作品を上手く描き続けるという事は、少し苦手かもしれませんが、時々ぼーんと、大きなプロジェクトが動きます。
話は飛びますが、15才頃から画廊に来ていた或るユニークな少年が、いつか国会議員になる、と言い続けていて実際に衆議院議員になってしまった人がいます。そして夏休みの季節に、「ボクが売ってあげる!」と、半ズボンに画廊のプリント作品を入れたアタッシェケースという出で立ちのくりくり頭の少年、T君が画廊を飛び出して行き、「絵を売るのはむずかしいね」と、がっくりとどこかから戻って来た事や、やがて本当に議員になってしまった後もアートと自分の仕事と結びつけようとたいへん努力をして下さっていた時分のことを、懐かしく思い出されます。
何年か前のシーノさんの個展の時に、初当選をしたT君が、コンゴ共和国と近隣のサントメ・プリンシペという両国の大使を務める人を引き連れてやって参りました。コンゴ共和国の西側、海に浮かぶ小さな島国であるサントメ・プリンシペは、たいへんアートに親和性が高いと言われ、T君に見せて頂いたアフリカの未知の国の、洗練と野生の混合がフレッシュな海辺のギャラリーや街の風景の写真は、忘れ難いものでした。国と国とを繋ぐツールとしてのヴィジュアル作品は様々な角度から必要とされ、また、生み出す事も可能に思えました。私もシーノさんも詳しい事は忘れてしまったのですが、ギャラリーや、また場所を移して、何度も打ち合わせがなされました。
展覧会会期中の或る日、シーノさんがめずらしくちょっとだけフォーマルな感じの装いで現れました。議員や大使との打ち合わせを兼ねての会食があるとの事でしたが、シーノさんはものすごい拒絶反応を示しました。シーノさんは、私に一緒に行って下さい!等と子供の様に駄々を捏ねます。私は、こういう機会を仕事に生かさなくてはだめでしょ、と言い、画廊から送り出しましたが、翌日尋ねますと、シーノさんは途中で帰って来てしまったそうなのです。 ぐるっと企業家や政治家に(自民党)に囲まれてしまった様です。 とにかく政治の匂いが嫌いらしいです。
純真な少年だったT君も、自民党の政治家だったら清濁合わせ飲む事のできる複雑な回路をつくりあげてなかったら、やっていられませんから、ピュアなアーティストとは相容れないのだと思います。
でも、画廊主としては、アーティストではないのだから、この様な人々とも上手く付き合わなければいけないのかも知れませんが・・・。
そして今年の個展の直前に、シーノさんの作品をパリコレ用の服のテキスタイルに使いたい、というお話をコムデギャルソンから頂いた時には、画廊のスタッフも皆でいっしょに喜んだものです。もう時間がないので既にある作品の中から決定したいとの事、仕事は、既に迷う事はなくシーノさんに決っている、という事でしたので、担当の方にシーノさんの過去数年分の作品データをお渡ししました。不正アクセスの問題等で少し神経質になっているこちら側としては抵抗がありましたが、既に仕事として決定してるという事実の元に了承しました。
その後、シーノさんから、最初の約束とは違い、新たに絵を描かなくてはならなくなった事、そしてその後仕事が流れてしまったという事を聞きました。
画廊としましては、電話で、知らない内にシーノさんの作品が使用される事のない様、作家のオリジナリティ、著作権、名誉といったものをもっと大切に扱って下さい!と、こちらの気持を伝え、理解して頂く事ができました。この話の行き違いについては、この仕事の窓口になった方々の勘違いで、という帰結でしたが、画廊の義務としての作品のセキュリティーについても、考えさせられる事がらでありました。
シーノさんが、自分にとってはどんな仕事もいっしょなので、と、案外にこの事を気にしないで下さった事が、救われる思いでした。
そして、忘れた頃にひょこっと画廊に現れる、現在も何度目かの当選をしているT君の事も時々思い出されます。
http://old.spaceyui.com/schedule/shino_15.html
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松川けんしさんの作品からは、一種の苦みを含んだ哄笑が聞こえて来そうです。悪意さえも剽きんにかわしたり、ない交ぜにしたりして上手に料理し、もうひとつ味わいのあるものに昇華してしまいながら・・・。
今回の展覧会のタイトルも最初に見た時には、一体何の事だろう、と思いましたが作品を前に、松川さんが何を表現したかったのか朧げに理解する事ができました。
「脳天は壊了か」という一瞬目が覚めそうなタイトルです。壊了という言葉も初めて知りました。表現豊かと言ったら良いのか、意地悪なのか、何とも松川さんらしいタイトルと思います。あらゆる事象への諦念からのエネルギッシュな出発なのでしょうか。壊了よりも建設の力をむしろ感じます。
往年の芥川賞作家、吉田知子さんの作品タイトルから引用されたそうですが、今回の展示のコンセプチュアルなタイトルとして、たいへん秀逸なものに感じました。そして松川さんご自身の脳天はまだまだ壊了していない様子、安心致しました。
松川さんは酒飲み仲間が大勢いらして、皆さんとの愉快な会話が飛び交いますが、偽悪的で実はシャイな松川さんを皆が愛情を込めて見守っておられる感じが伝わって参ります。
http://old.spaceyui.com/schedule/matsukawa_15.html
松川けんしhp
甲斐荘暁子さんの作品には、いろいろな多くの思いが込められていると感じられます。
ご自身は、作品についてを語らない作家さんですが、光や水の色を取り込んだ色彩の作品は、マチエール豊かに生命のリズムを唄い上げているかの様、とても饒舌に魅力的です。作品から人々の声や歌声、鳥のさえずりや樹々のざわめきが聴こえて来そうです。レイヤーのかかった様に感じる重層的な作品の構成からも、様々な楽器の奏でる音楽を感じてしまいます。
視覚表現の中に、音楽的なものや画材から覚える触覚的なテクスチュア感覚、言葉には表せない感性をこれほど豊かに情感を込められる力量に感嘆しております。
甲斐荘さんの全ての作品が、ポップで、明るく楽しさに満ちておりますが、この世界を飛び越えて、次元の狭間を見つめ表現をされている様に感じます。
平面作品の他に鉄素材を用いて制作したオブジェも多数展示致しました。重量のある、労を要する熱い鉄と取り組みながら、軽やかな見応えのある作品を創りました。
甲斐荘暁子さんは、感性の織りなす言葉には表す事のできない詩情あふれる世界観を見事にビジュアライズされていると思います。
http://old.spaceyui.com/schedule/kainosyo-15.html
甲斐荘暁子 hp
AAAAA
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