佳作の揃った「少女小説」展、終了致しました。(SPACE YUI)
現代地球上で興ている不思議ワールドは、私たちが現実に生きる日常のスペースにも相似形で表れます。
自明の理で正しくない事が、白昼堂々と決定されて行き、TVや雑誌では、私たちがもっと美しくできる舞台装置をわざと醜い物で充たしている・・。
人々の承認もなく流れていく、私たちにとってそんな筈ではなかった不合理の数々を、未来を生きるこども達は、どんなこころで受け止めるのでしょうか?
シフトを変える事ができるのは、ジャーナリストでも政治家でもないのかも知れません。
文化はもっと成熟している予定だったし、すでに到達していた世界すら破壊されてしまったかもしれない。
そんな世界を少女達は知っていて、そのような少女達だけが解読可能な未知の暗号を解く鍵を持っているのではないか?という希望を込めた企画展でした。
YUI GARDENの美しい環境の中でご覧になっていただけたらとても嬉しいです。(7/13~)
http://old.spaceyui.com/schedule/shoujoshousetsu_15.html
AAAAA
北見隆 This is a book.
北見隆さんの個展「This is a book.」は、実に10年ぶりの開催でした。
どのギャラリーにも共通の事と思いますが、作家とギャラリーには時間と共に培われた独自な関係性がある様に思われます。
北見さんとは、共に様々な仕事での出来事をいっしょに経験させて頂き、喜んだり悲しんだりしながらこれ迄の時間を歩んで来た実感を感じております。
もう20年も前になりますが、ギャラリーの企画編集による神話絵本シリーズで北見さんに「聖書物語」をお願いし、素晴らしい作品を描いて頂きました。8冊の神話絵本を8人の作家さんに書いて頂き、出版と展示をいっしょに開催するという二年がかりの企画でした。旧約聖書からのアダムとイブや、ノアの物語を詩情豊かに格調高く表現された北見さんの絵本の素晴らしさは忘れがたいもので、大きな価値ある金のリンゴ賞(ヴラティスラバの絵本催事)も頂きました。
これ迄何年にもわたり、ギャラリーの年末グループ展企画であるBOX OPERA展を中心になって開催して頂きましたが、お忙しい北見さんの個展はなかなか開催して頂けませんでした。それだけに皆さんの期待も大きかったけれど、そんな期待を上回る見応えある楽しい展覧会となりました。
SPACE YUIでの展覧会だけではなく、 北見さんの作品展では、すでに完成された感のある力量を何度も見せて頂いております。
そして今回の展覧会では、ご自分のクリエイティビティーを継続するだけではなく、更に乗り越えて行かれる、ということの大切さと貴重さを教えて頂いた様に感じております。
http://old.spaceyui.com/schedule/kitami_15.html
高橋キンタロー of the shape looks 2015
高橋キンタローさんとは彼が20代の頃からの知リ合いで、長いお付き合いなのですが、知り合った最初の頃から同じ髪型で、体形もファッションも、全く変わらず時を止めてしまったキンタローさんにまず、改めて敬意を表します!
永井宏さんの志を引き継がれる様に、仲間の方々とタンバリンギャラリーを創造の若々しい現場へと創りあげて行かれたキンタローさんと永井さんが実は同世代、とは思ってもいず、先輩後輩の仲とばかり思い込んでおりました。
今回のシンプルな一筆描き感覚の勢いで仕上がった展示作品には、ご覧になられた皆さんが目を奪われるような鮮やかな印象がありました。
キンタローさんはさり気なく作品を発表される様にお見受けしますが、実際に作品制作に向かい、白いキャンバスの前に立つ時にはたいへんな精神統一と集中作業が為されていることを想像致します。
ご自分も若者の中に溶け込む様に、若い作家の方々を応援されておりますが、誰に対しても分け隔てなく接するキンタローさんの大容量エネルギーには感動を覚えてしまいます。人々への愛に満ちたキンタローさんには、ご自分の事は後回しの部分があり、それは人として類い稀な美質と思うのですが、ギャラリー側の人間としては歯がゆくもあるのです。
キンタローさんのご事情を省みずに感じる事は、もう少しエゴイストになって、ご自身の作品制作に向われても良いのでは・・・等というおもいです。
http://old.spaceyui.com/schedule/takahashikintaro_15.html
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宮本崇輝 「 life のびやかに歩む」
宮本崇輝
4月の個展の後にすぐにオーストラリアへと旅立った宮本崇輝さん。今頃はオーストラリア南端部の都市アデレードで、楽しい日々を送られていることと想像致します。
2000度の熱を持つ溶けたガラスを相手にするには、繊細な感性と強靭な身体能力を併せ持っていなければならない筈・・・。
高温と格闘しながら作品制作に励む中で、最近少しスリムになられた宮本さんですが腕の筋肉の力こぶも逞しい実はタフな青年です。
前回に続いて今年の展覧会でも、作品として自由に作られたオブジェと、実用のガラス器との二つのタイプの展示がされました。
透明感を際立たせるかに感じられる色付けされた作品からは、自由にのびのびと楽しみながら制作した、という感覚が伝わって参ります。ガラスという素材の性質を追求し、扱いに長け、力を出し切った、と言っても良いくらいに心に伝わるものがありました。
ガラス自体が持つものなのか、宮本さんの創造性なのか、素材と作家との分ちがたい感性と瑞々しい生命力が、作品に宿っていると感じます。
グラスや水差し等の実用の製品もガラスの厚みや口径サイズのバランス、形の取り方等に言葉では表現できない感覚的なセンスが光り、思わず所有されたくなる方々が多く、とてもよく売れました。
アデレードは、YUI DROPSでもおなじみの「JANESS」というアロマ製品の会社がある街です。優れた薬草学者でもあるジャニス・スミスが経営する「JANESS」は世界各地のアロマファン注目の地でもあり、とても興味深い場所です。
宮本さんはオーストラリアの次はカナダへと向われる予定です。大きく羽ばたいて、どんな素敵な実りを持ち帰って下さるのでしょう。
宮本崇輝
http://old.spaceyui.com/schedule/miyamoto_15.html
北沢夕芸 「 POP FETISH WONDERLAND」
北沢夕芸
北沢夕芸さんは現在最も充実して、エネルギーに溢れた作家さんのひとりと感じます。
当画廊では、2010年に開催して以来の久しぶりの個展開催となりました。
作品完成度の成果と充実の様子が、御来廊下さった方々の賑わいや反応からダイレクトに感じられる大盛況の展覧会でした。
ひとつひとつの作品に、作家の想像力がぎっしりと込められた物語が語られており、見応えある作品から刺激を受けると、いやがうえにもイマジネーションが膨らんで参ります。
物語溢れる画面は、絵本のページをめくる様に連続してストーリーが流れて行く訳ではないのですが、作品から少し離れて、もう一度見つめていると、ギャラリー空間全体から「北沢さんワールド」としか言いようのない世界観が立ち表れて来る様子が感じられるのです。
作品舞台の設定は、架空の時間と空間の様に感じとれますが、この時代へと通じる現実味を帯びて作品を観る人々を立ち止まらせてしまいます。
そんな北沢さんの「POP FETISH WONDERLAND」では、ペインティング、ドローイング等の平面作品の他に、柔らかな木の素材を削った表情豊かな少年や少女や動物等、独特な魅力ある立体作品も出品され、こちらもたいへん人気がありました。
キュートなモチーフの背後にかすかに感じられる呪いや、また、逆に祈りの感覚の表現も謎めいていて興味深いです。
北沢さんの持ち味豊かな作品の個性には、見る側の想像力の参加する余地があり、人々を魅きつけるのかも知れません。
北沢夕芸
http://old.spaceyui.com/schedule/kitazawa_15.html
越智香住 「うきくも」
越智香住
東京造形大学で彫刻を学び、スペインで陶芸の技術を習得した越智香住さんの二度目の個展が好評のうちに終了しました。
昨年の作品に引き続き、越智さんの作品は迫力があります。昨年より更に何か呪術的な原初的なパワーが加わって心に響きました。
前回の作品は、古い時代のヨーロッパの様式を強く感じましたが、今年は越智さんのテイストはそのままに、もっと自由に制作されていると感じました。
あどけなさと達観の表情を同時に持つ少年の像や横たわった天使達、そしてシャーマニズムを感じさせるマスクが鑑賞する人々の心を強く捉えました。
越智さんのどの作品からも感じられる事ですが、作品の表情の彼方から届けられる不思議さに多くの方々が関心を抱き、魅きよせられるのを感じます。
特に小さなマスクは、今年とても人気がありました。自然な土の色彩の濃淡によって着色されたオブジェは、可愛らしさをひそめ、呪力を持ち、インパクトがありました。
越智さんもギャラリーの人間も知らない何人ものお客様が、小さな越智さんのマスクを購入されて行かれた事が印象に残ります。
また、シンプルの極致を目指しているかに見える白と黒が基本の清潔な食器は、お料理が美しく映えそうです。
CASA BRUTUS等の雑誌やお料理の本、TV番組等に、キッチン周りの物を提供する仕事をしている画廊近くのお店の方が、 纏めてご購入下さいました。雑誌やTVで越智さんの陶器にお目にかかるのが楽しみです!
越智香住
http://old.spaceyui.com/schedule/ochi_15.html
AAAAA
今年もロサンゼルスから大きな荷物を持って伊藤雄三氏がやって来ました。巨大な黒い円筒を横にした形のナイロン製のバッグには、クマの縫いぐるみが30個入っていました。菴連也クンの展覧会のために伊藤氏がオリジナル制作した白いセーターを来た可愛らしいクマです!連也クンへの愛情がひしひしと伝わって参ります。
伊藤氏は、世界で活躍中のアーティスト、オードリーカワサキを初めて日本に紹介した人で、今は貿易会社のオーナーですが、ご自身も多摩美の油絵学科出身です。
ウン十年も昔、大学卒業後すぐに、ミラノの建築事務所で見習いの様な仕事についていた時に、自分と同年令の伊藤氏=ゆうちゃん、は、フィレンツェで美術全般の勉強にいそしんでおりました。その時からの友情が今日迄続いている、という訳です。20代の若者だった当時は、気がつきませんでしたが、あまねく全ての人々に愛の深いゆうちゃん、インターナショナルなトラさん、という感じでしょうか・・・?
そんなゆうちゃんが3年程前に、ロスの自宅のNETテレビに連也クンが出演しているのを見て、一挙に連也クンの作品と本人自身の魅力に引き込まれてしまいました。
今回は二度目の開催となりますが、 昨年の一月に初個展を開催した時に実際にお会いした連也クンは、ご自分の病気の事よりも周囲の人々の事を気遣う優しさに溢れた小さな人格者という風情がありました。
ユーモアの感覚と、物語テラーの才能が見え隠れする創造性に満ちた作品は、多くの人の心をとらえて、連也クンを応援する人々の輪が広がっております。
連也クンは素敵なご両親、可愛らしい妹の依愛ちゃんという、本当に素晴らしいご家族をお持ちです。
この展覧会を、病気と闘いながらも、 ご家族といっしょに、 すくすくと成長する連也クンとそして応援団長のゆうちゃんとの、コラボレーション展の様に感じております。
http://old.spaceyui.com/schedule/rennyaihori_15.html
スペースユイのスタッフになってからあっという間に時が経ちました!台湾出身のNomii Rabbitさんの作品はひじょうに完成度の高いグラフィカルな持ち味が魅力です。三コママンガ等の物語性も本国の言葉ではない所為もあるかも知れませんが、彼女自身のユニークな言語表現と相俟って、独特な滋味に満ちた人生観が、画面から生き生きと伝わって参ります。
Nomiiちゃんは可愛らしく見えますが、実はたいへん頭の良い人で、台湾では一番難しいとされている国立の大学と大学院の、難しそうな学部を卒業しています。美術学科ではありませんw。
そのような訳で、スペースユイの現在の事務&管理能力は、オーナーの実力を超えたパワーがあるようです!
いずれ台北で、Nomii’s SPACEを開業予定です。夢溢れるNomii Rabbit SPACE、どのように展開するのか、本当に楽しみです。
http://old.spaceyui.com/schedule/nomiirabbit_15.html
この季節になると懐かしさが込み上げます。伊藤雄三氏もそうなのですが、民野宏之さんも、もう親戚の人をお待ちする様な感覚になっています。画廊の奥には実は宿泊できる設備があり、遠くからの作家さんは時々画廊に宿泊するのです!
目の前には大きなコンビニがありますし、近所にはジャグジーの設備もある素敵な銭湯もあります!札幌から清涼な空気を運んで下さる民野さんは、もう20年くらい毎年個展を開催しておりますが、ここ数年はホテルユイにチェックインなのです。
民野さんの作品は、画面から優しい波の様なものが伝わって来るかに感じられます。シンプルに空だけを描いているのに、これ程に強い優しさを放つ力は、ただ者ではありません。ピュアなマインドで、空を、地平線を、樹々を自由に描きながら、もうひとつの眼差しはシリアスな真実を求めていると感じます。
それでもやはり、柔らかな、純粋な、笑顔の民野さんです。
http://old.spaceyui.com/schedule/tamino_15.html
ブログを更新しないままに、新しい年を迎え、更には季節が替わり三月になってしまいました。
言い訳はしまいと思っていたのですが、少ししてしまいたくなりました!! 画廊の仕事について・・・。
画廊以外の多くの仕事にいえる事かも知れませんが、毎日が、現在と過去と未来のMIX状態!もちろん未来へと続いている今現在のギャラリーの現場が一番大切なのですが、すぐ過去になってしまう時間とも格闘、未来のスケジュールや新しい作家にも気持を持って行かれ、そして未来も過去もすぐに入れ替わってしまうから、脳みその容量及びパワーがたりなくて、時々パニック状態に陥ります!自分ではもう少し受け入れる余裕があると思っているのに、じわじわと知らぬ間に限界に近づき超えて行く事が間々あります。やがてゆっくりと元の状態に戻りますので、全然本当は大丈夫なのですが・・・。
そんな何度目かのパニックからだいぶ回復し、ブログにも立ち向かえる様になりました!!
人々の善意と共に、確かに存在する悪意・・・。様々な想念が渦巻いている現実の社会の中で、表現の世界に関わっている方々は、無力さを感じられているかも知れませんね。構造的に理性とか理屈で出来上がっている社会に向けて、人々が感じている閉塞感を分解してそうではない意識として差し出すことのできるのは、今こそ、真摯に表現の世界と携わっておられる方々なのではないかと思います。
言葉では説明しずらい世界観を、言葉では表せないからこそ作品で表すという作業を今見つめ直しております。そして、あまりに現実的な人々にはどうしても感知できないたいせつなニュアンスを、共有できる感覚に翻訳し提示する、という至難の作業が今求められている様に思います。
中村幸子さんと高橋知江さんの二人展「花と人」を見て、そんな風に感じました。そんな境界域を超えて観る人の胸に迫る中村さんの作品と、呼応しながら涼し気な風を感じさせる高橋さんの展覧会は、企画者が自ら述べるのも僭越ですが、とても香り高い空気感を醸成していたと感じました。
中村幸子 高橋知江
当ギャラリーでは、1年、1年半に一度や2年おきに等と、繰り返し展覧会を開催下さる方が多く、作品についての感想を書かせて頂いておりますと、各作家の方々の作品の変化に驚かされる事があります。また同時に書かせて頂いている中で、作品のエッセンスはほとんど変わらないと感じる事も屢々です。ギャラリーと作家さんとは基本的な信頼関係がないといっしょにお仕事はできませんので、スペースユイで開催して下さる作家の方々には常に感謝の気持を抱いております。
このブログも2010年に出版した「ギャラリーノート」のスタイルを継続し、作家と展覧会作品につきまして毎回書かせて頂いておりましたが、これからは、もう少し自由な感覚で書いていきたいと思っております。
1月の最初の展示、安西水丸さんの展覧会を無事開催する事ができました。昨年3月の水丸さんの急逝から、もう一年が過ぎようとしております。時の経過がこんなに早く感じられる事に驚いております。今にして思いますと、一人の作家さんとこんなにも長い期間、コンスタントにお付き合いさせて頂くという事、特に水丸さんの様に展覧会が特にお好きではなかった方の作品展を3O年もの間ほとんど毎年開催させて頂いた、という事は本当に奇跡の様な事、と思っております。
まだギャラリーが出発したばかりの時期から水丸作品と共に時代の空気を吸収し、水丸先輩に支えられ、共にこの時代を歩んで来た様に思います。
今回の展覧会は、水丸さんが亡くなられてからの開催でしたので、当初予定していた内容は変更せざるを得ませんでしたが、平凡社さんのご協力で村上春樹さんとの共著「夜のくもざる」をテーマにした展覧会の第二弾を開催する事ができました。20年前の1995年にも同じテーマで開催致した事が懐かしく思い出されます。
また、ご家族が水丸氏の抽き出しからそっと持って来て下さった未発表の素晴らしく愛に満ちた小品や、伝説的な「青の時代」や「日出ずる国の工場」等の書籍から作成した版画等も「夜のくもざる」シリーズと共に展示させて頂きました。
長いおつき合いの中で感じる水丸さんは、いろいろな側面の魅力を持たれる不思議な方で、今でも印象がひとつに纏まりずらいのですが、心に大きく残る印象は、柔らかい温かな笑顔の感覚です。ちょっと意地悪な皮肉屋の部分もあった筈ですが、何故か優しい笑顔ばかりが強く心にしみ込んでいるのです。
水丸展の次に開催されたロイヤルコペンハーゲンで活躍されていた石井逸郎さんの展示も大好評でした。現在はフリーランスの石井さんですが、作品の魅力とともに石井さんご自身の行動力からヨーロッパと日本を繋ぐ心豊かなトータルな、意義ある表現活動をなさっておられると感じます。
18世紀の銅版画に現在の作家である石井逸郎さんが彩色された、時代を超えたコラボレーション作品からは、心を打たれるエネルギーが感じとられました。
普段は、現代の暮らしと共に在る商業美術作品になじまれている画廊のお客様方も、石井さんの作品はストレートに受け入れておられる様子が印象的でした。
また、今年二回目の展覧会だった山田博之さんの作品はフェイスブック等でも積極的に発表をされておりますが、装飾的にデザインされたアルファベットの作品やペインティングの表現力に感動して個展の開催をお願い致しました。作品カテゴリーの沢山の抽き出しがある方ですが、まだ見ていない筈の抽き出しの中身にも興味を魅かれます。
山田さんはたいへん率直な所が私等にはとても好もしくまた面白い方と思ってしまいます。イラストレーターとしてのストレートな合理精神と、言葉ではどんなに割り切り良く話してもちらっと溢れてしまう叙情性に山田さんの魅力を感じます。まだ山田さんご自身にも気がついていない何かが、目に見えない力を与えているかに感じられる作品もあります。磨かれた完璧な表現力の内部に存在する、神秘な部分に抵触するものを感じる時等に・・・。
当画廊では初めての個展となる野口純一さんの「よるとよる」が開催されました。アクリルガッシュで描いた様々な夜ばかりを描いた風景画は、多くの方々の視線を集めました。
静謐な夜の世界の中にある人々の暮らしから野口純一さんが抽出したピュアーな気配を、観る側の人々も確かな感覚で受け止めておられるようでした。
野口さんご自身も彼の作品そのもののように静かな純粋な空気感に包まれた方です。
その力量がギャラリーからはみ出しそうな深谷良一さんの作品が、今年もとても素晴らしくて、もうすでに来年のアイデアが湧きました。実現したらよいのですが、ご覧になられた方が皆がワクワクする様なとても楽しい企画です。皆様どうぞお楽しみに!
http://old.spaceyui.com/schedule/nakamura_takahashi_15.html
http://old.spaceyui.com/schedule/mizumaru_15.html
http://old.spaceyui.com/schedule/ishiitoshiro_15.html
http://old.spaceyui.com/schedule/yamada_15.html
http://old.spaceyui.com/schedule/noguchi_15.html
http://old.spaceyui.com/schedule/fukaya_15.html
2015年のスペースユイは、水丸さんの展覧会からスタートです。丁度20年ぶりに平凡社から村上春樹さんとの共著「夜のくもざる」が復刊される事となり、水丸さんと次回は俳画を掛け軸に誂えた作品展をと話していた適わなかった計画の替りに、素晴らしいテーマで展覧会を開催できる事となりました。
1995年にも平凡社よりの出版と同時に、当画廊で「夜のくもざる」展を開催、水丸さんの原画と村上春樹氏の原稿と共に数点の版画も発表しております。
村上春樹氏の洒脱なショートストーリーに描かれた水丸さんの36点の絵は、全作品を版画制作をしたいと思わせる、力のこもったものでした。
残念ながら全作品を版画にする事はできませんが、展覧会は「夜のくもざる」からの新たな版画作品をメインに展示させて頂きます。また、伝説的な「青の時代」、若い時代の水丸さんの未発表の小品や復刻版画作品等も展示致します。
展覧会を開催するにあたり、平凡社の方々からは常に適切なアドバイスとご助力を頂き、本当に感謝致しております。また、秋に展覧会が開催されたクリエイションギャラリーのキューレーターの方々にも膨大な水丸さんの原画の中から、こちらの要望する作品を快く探して頂きました。
版画作品と同時に水丸さんが愛着を持たれていた、スノードームやブルーウィロー、灯台等をモチーフにしたグッズも作成させて頂いております。
水丸さんは、日本でも海外でも観光地で販売されている感覚の、独特なカワイイおみやげ感覚のものをたいへん好んでおられました。 その事を特に意識して計画したわけではありませんが、今回、プラモデル製の東京タワーのトートバッグも作ってしまいました。
水丸さんの陶器を作るなら水丸さんの大好きなカレー皿等はどうですか?という陶器の会社のオーナーで、いつもたいへんお世話になっている横山氏のアイデアから、楕円の形をしたちょっと深さのある楽しいお皿も作ることが可能になりました。
そんなグッズ制作の準備に追われていた日々、ヴィクトリー陶器の横山氏と画廊で打ち合わせをしている時に、2月の第一週から始まる、水丸さんの次の週の展覧会開催者の石井逸郎さんがいらっしゃいました。
石井さんは、以前ロイヤルコペンハーゲンで10年間素晴らしい絵付けの仕事をなさっていて、今はフリーランスで日本とデンマークを一ヶ月毎に往復し、二つの国にアトリエとお教室を持つ方です。
この偶然の興味深い出会いに、早速お二人をご紹介をさせて頂きました。陶磁器を取り扱う仕事という共通項はありますが、その背景や製法は全く異なります。そんな横山氏と石井氏ですが、オープンマインドなお人柄のお二人、お話もとても弾みました。
石井逸郎
石井氏より昨年から、折にふれて簡単なレクチャーを受けているのですが、今迄スペースユイとは全く縁のない世界、と思っていたロイヤルコペンハーゲンという最高の磁器ブランドと、その歴史的な背景が石井さんを通してちょっと身近な興味ある対象と思える様になりました。
デンマークの「フローラ・ダニカ」という54巻にもなる植物図譜集は、緻密に描かれた原寸大の銅版画であり、デンマークの全ての植物を採集し描写するという作業と共に、それらを磁器に絵付けをする、という事は、国家の学術水準と国力を示すことを目的とした大きな文化事業でもあったそうです。
Toshiro Ishii with FLORA DANICA
また、隣国スウェーデンと常に緊張関係にあった18世紀のデンマークは、ロシアと不可侵条約を結び、国を挙げて創りあげた磁器をエカテリーナ女王に献上する、という意図もあった様です。
この18世紀に刊行された「フローラ・ダニカ」は、最上の磁器絵付けの元となったものですが、科学的にも芸術的観点からもひじょうに価値のあるこの銅版画はほとんど人に知られておりません。今回石井さんが企画されているのは、これらの銅版画を復刻し、石井さんがリタッチ、彩色をする、というものなのです。250年の時を超えたコラボレーションです。
先日、元ハンガリー大使公邸で現在は民間に渡り、展示会場やレストランとして機能する恵比寿にあるQEDクラブという風情ある建物の中で開催された石井逸郎さんの「フローラ・ダニカ」と磁器の作品展に伺って参りました。
王家の紋章が織り込まれた重厚なテーブルクロスの上にテーブルセッティングされた食器や銀のカトラリーや燭台等、ヨーロッパの深い歴史を感じさせるテーブル上の小宇宙は、ひとつの世界史の断片を見ている感覚が致しました。
水丸さんのグッズであるカレーのお皿の打ち合わせをしている時に、ロイヤルコペンハーゲンの絵付けをしておられた石井さんがいらした、という感覚が、スペースユイについての、ある感慨をもたらしました。
丁度その時に開催していた企画展が「BOX OPERA Ⅸ」という、この画廊の長年にわたり行われている9回目の展覧会でしたが、その後すぐに水森亜土さんの展覧会を開催する、という時期でした。クラシックな感性いっぱいの「BOX OPERA Ⅸ」と、ファンキーにはじける水森亜土さんの個展、そして田村セツコさんの「屋根裏部屋のプリンセス」と続きます。自分で計画をしておきながら、あまりに異なる個性にくらくらする様な感覚を覚えましたが、この感覚がこのギャラリーの個性なのだと思いました。
皆様の中には、スペースユイの不思議なこの混在的な感じに違和感を感じる方も当然いらっしゃることと思いますし、納得のできる事がらです。
また、一方で人の感性や個性は本当に多種多様でこれほどまでに違っているのは同じ人類なのにどういう事なのでしょう?という思いと同時に、作品をカテゴリーで分けるのではなく、テイストや温度で感じ分ける、という方法があってよい様にも思われます。
ひとりの人間の中には静かに沈静する部分、生き生きと高揚する感覚、様々な振り幅で見え隠れする感覚の世界があると感じます。美しいものも、可愛いもの、驚かされるもの、啓示するもの等、私たちの心がポジティブに刺激されるものは、時間や空間を超えて全てが繋がっている様に思えるのです。
水森亜土
http://old.spaceyui.com/schedule/box-opera-9.html
BOX OPERA Ⅸ IL DRAMMATICO
http://old.spaceyui.com/schedule/mizumoriado_14.html
水森亜土 個展
http://old.spaceyui.com/schedule/tamurasetsuko_14.html
田村セツコ「屋根裏部屋のプリンセス」
AAAAA
明るく大らかな蒲優祐さんに頼んだら、装丁デザインもイラストレーションも、何でもきっちりとやってくれそうで、知り合ったら思わず仕事をお願いしたくなりそうです。
本のタイトル設定も帯のコメントも、柔軟に作り込み、書籍の装丁というひとつの小さな宇宙を楽しげに表現されていて、完成度の高い展覧会空間が形成されました。紙の素材等、ディテイルにもこだわって、内容に沿った素材を選びました。
蒲さんのグフィックワークは、タッチもテイストも、 あらゆるニーズに応えてくれる感覚です。それも無理なく易々と・・・。
絵を表現するというサイドから見ますと、どの様なタイプの表現も自分の表現でありながら離れた感覚でいる、どのタイプにも固執せず、それぞれを深めトータルな感覚で極め続けておられる・・・、ということでしょうか。
無意識的表現に感じるドローイングやペインティングからグラフィック処理的なイラストレーションやコラージュまで、幅広くタッチの異なる作品が会場に並びますが、色相が統一されているためか、不思議と違和感なくバランスが良いのです。
まだまだ謎の多い若きクリエイターの蒲優祐さんですが、何かを創る事の前提に感じられる、人々との間へのナチュラルな温かさをとてもたいせつなものに思いました。
http://old.spaceyui.com/schedule/kaba_14.html
AAAAA
広瀬弦さんの15年ぶりの展覧会でした。歳月は、確実に広瀬さんの腕を鍛え上げて、完成度の高い充実の作品を見せて頂く事ができました。
今回、10年間に渡る理論社より発刊の「西遊記」に掲載された174点の作品を、ダイナミックなプレゼンテーションで展示致しました。壮大なテーマで描かれた作品は床から天井に届く大きな9枚のパネルにプリントされ、一挙に作品が見られるという手法でした。
01から174まで、ナンバーがつけられた悠久の物語の作品には、広瀬さんが創造した愛すべき孫悟空の物語と共に、広瀬弦さんご自身の10年間の時間もオーバーラップします。
絵本をつくりあげるという事は、求められれば平面世界の中に空間、時間、人間や動物の造形、その人物が纏う衣装のデザイン、更には建物の外観や内装、家並みや街並も、山々や海や川等、森羅万象のこの世界のものを描くこととなります。
ましてや「西遊記」ともなりますと、中国や西域の広大な地域の時代考証や、登場する誠に大勢の妖怪たちや神々のキャラクター造形も為されなければなりません。広瀬さんは知らん顔してやってのけておりますが、どれだけのエネルギーが費やされたかわからないと思います。
緊張感を伴うロットリングで表現された広瀬さんのペン画は、人の想像力を刺激し、眼は画面の奥に引き込まれて行きます。
丁寧に描かれた絵本や児童書が大好きな子供たちは、ハラハラドキドキさせられ、時には奇想天外な孫悟空の物語から、広瀬さんの費やした創造のエネルギーを心の中にしっかりと受け止めて行くのでしょう。
広瀬弦さんは、画廊で何度も展示をさせて頂いた敬愛する佐野洋子さんのご子息でもあります。佐野さんの流麗な感性溢れる天才的な個性と、対照的に構築的な裏付けなしには描けない広瀬弦さんの魅力溢れる作品を感慨深く感じております。
http://old.spaceyui.com/schedule/hirosegen_14.html
AAAAA
Yoshiko Abeさんの久しぶりの展覧会が開催されました。パステルや水彩絵の具の優しいタッチとくっきりとしたペンのラインで構成される作品は、おしゃれな街角や人々の暮らしが写しとられた雰囲気のあるものでした。
ふわっとした透明な絵の具の足跡・・・、優しい色彩の中に思いがけず強い意志をもつ色が現れ、コラージュされ、画面の調子を懐かしい記憶を呼び起こすような心象風景へと変調させて行きます。そして抽象と具象とのバランスの良い構成によって、魅力ある空間の奥行きが感じられます。
Yoshiko Abeさんはギャラリーの最初のスタッフでした。 初個展開催後、広告や雑誌の表紙等といったイラストレーションの依頼が急激に増えて行ったため、おっとりとした、優しく明るい性格のYoshikoさんとはずっと楽しくお仕事を一緒にさせて頂きたかったけれど、二年間弱で独立して行かれました。
結婚後、魔法の様な速度で(個人的な見解ですが・・・。)子供たちも大きく創造の魂を持って育ち、Yoshiko Abeさんは、再び絵の世界の新しい地平へと向っておられる様に思います。
http://old.spaceyui.com/schedule/abeyoshiko_14.html
AAAAA
沖縄諸島の最南部に位置する、すでに日本より台湾が近くに見える小浜島に住み、海と空、そして太陽や月の光のエネルギーを、太古の人々の様に浴びる環境に生きるはんまけいこさん。夜は月明かりで道を歩くのだそうです!
展覧会では毎年、作品と共にはんまけいこさんの、おおらかなエネルギーが都会に住む人々の胸に染み込む様です。
そんな健康的なはんまけいこさんが、心理学にたいへん興味を持たれていて、昨年に引き続いて人々の心の盲点「スコトーマ」をテーマとするのも、興味深いお話、と思います。
はんまさんの創りあげた物語の世界の中で、からっと陽気なキャラクター達の演ずるちょっとずれた?ユーモラスな行動がくすっと笑えます。
ナンセンスな様でいて意味有り気な、大人の成熟した感性からしか誕生し得ない彼らのユニークな個性は、入谷桂子さんの手によって、三次元の生命を吹き込まれる事となりました。
美しい仕事ぶりの入谷さんの指先から魔法の様にチクチクと縫われ、キャラクター達の服にボタンが付き帽子が被せられ、完成して行くと、平面と立体の世界が交感しながらスコトーマの国の住人たちのイメージが膨らんで行きます。
そして、はんまさんの平面作品の個性を見事に再現される入谷さんの描写力、デッサン力は相当確かな力量と思います。
沖縄と東京のお二人のKEIKOさんの作品展は、 温かさやゆったりとした感覚が伝わって来るエンターテイメント感いっぱいの展覧会でした。
http://old.spaceyui.com/schedule/kxkthewonderland_14.html
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